管理図 (カンリズ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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管理図 (カンリズ) の読み方

日本語表記

管理図 (カンリズ)

英語表記

Control Chart (コントロールチャート)

管理図 (カンリズ) の意味や用語解説

管理図とは、製造工程やサービス提供などのプロセスが、統計的に安定した状態(管理状態)にあるかどうかを判断するために用いられるグラフの一種である。品質管理の分野で広く利用される統計的工程管理(SPC: Statistical Process Control)の主要なツールであり、データのばらつきを視覚化し、異常を早期に発見することを目的としている。工程から得られる品質特性値や不良率などのデータを時系列にプロットすることで、偶発的なばらつきと、何らかの原因によって発生した異常なばらつきを区別し、問題の原因究明や改善活動へとつなげる。 詳細を説明する。システムやサービスを開発・運用する工程では、常に様々な要因によってばらつきが生じる。例えば、プログラムの応答時間、システムの稼働率、バグの発生件数など、どのようなデータも一定ではなく、変動する。このばらつきには、普段から発生する避けられない変動(偶発的ばらつき)と、普段とは異なる特別な原因によって発生する変動(異常ばらつき)の二種類がある。偶発的ばらつきは、現在の工程能力の範囲内であり、許容されるものとして管理される。一方、異常ばらつきは、工程に何らかの異常が発生したことを示唆し、その原因を特定して除去する必要がある。管理図は、この二つのばらつきを客観的に区別し、異常な状態を早期に検知するための有効な手段となる。 管理図は基本的に、以下の三つの線とプロットされたデータ点で構成される。まず、中心線(CL: Central Line)は、工程の平均的な状態を示す線であり、通常は過去のデータから算出された平均値が用いられる。次に、上方管理限界線(UCL: Upper Control Limit)と下方管理限界線(LCL: Lower Control Limit)がある。これらは、工程が統計的に管理状態にあると判断できる変動範囲の上限と下限を示す線である。これらの管理限界線は、中心線から統計的な計算(一般的には平均値から±3σ、つまり標準偏差の3倍の範囲)に基づいて設定される。管理限界線の内側にデータ点が収まっていれば、工程は管理状態にあると判断され、外側にデータ点が逸脱した場合は、異常なばらつきが発生していると判断される。プロットされるデータ点とは、実際に工程からサンプリングされた測定値や計算値のことである。 管理図には、測定可能な品質特性値(例:長さ、時間、温度)を扱う「計量値管理図」と、数えられる品質特性値(例:不良品の個数、欠点の数)を扱う「計数値管理図」がある。計量値管理図の代表的なものには、平均値とその範囲を管理するX-R管理図や、平均値とその標準偏差を管理するX-s管理図がある。計数値管理図の代表的なものには、不良率を管理するp管理図や、欠点数を管理するc管理図などがある。 管理図の読み方と判断基準について解説する。データ点が管理限界線の内側に収まっている場合、工程は安定しており、偶発的ばらつきの範囲内で推移していると判断できる。しかし、データ点が管理限界線を逸脱した場合、それは工程が管理状態から外れ、異常な原因によって変動していることを示す。この場合、直ちに原因を調査し、対策を講じる必要がある。管理限界線の内側であっても、以下のような特定のパターンが見られる場合は、異常兆候と判断されることがある。例えば、データ点が中心線に対して一方の側に連続して出現する「連」、データ点が連続して上昇または下降する「傾向(トレンド)」、データ点が周期的に変動する「周期」、特定の範囲にデータが集中する「層別」、といったパターンである。これらのパターンも、偶発的ばらつきだけでは説明できない、何らかの特別な原因が存在することを示唆しているため、注意深い監視と必要に応じた調査が求められる。 IT分野において、管理図は多岐にわたる応用が可能である。例えば、システムの性能監視において、CPU使用率、メモリ使用量、ネットワークトラフィック、データベースの応答時間といったメトリクスを管理図で監視することで、通常の変動範囲を逸脱する異常を早期に検知し、システム障害を未然に防いだり、性能劣化の兆候を捉えたりできる。また、ソフトウェア開発プロセスにおいても、リリースごとのバグ密度、テストケースの実行時間、障害の発生頻度などを管理図で追跡することで、開発工程の安定性を評価し、品質の維持・向上に役立てることができる。DevOps環境では、継続的インテグレーション/デリバリーパイプラインの安定性や、デプロイ後のシステムの挙動を監視するために活用される。これにより、工程の異常を統計的に判断し、根拠に基づいた改善活動を促進する。 管理図を導入する主なメリットは、問題の早期発見と対策が可能になる点である。異常を即座に検知することで、それが大規模な問題に発展する前に食い止められる。また、客観的なデータに基づいて工程の状況を判断できるため、主観や経験に頼りがちな判断から脱却し、より科学的・統計的なアプローチで品質管理を進められる。結果として、工程の安定化が図られ、製品やサービスの品質向上、コスト削減、顧客満足度の向上へとつながる。システムエンジニアを目指す者にとって、統計的思考に基づき工程を管理する管理図の概念は、システム開発や運用における品質保証と効率化の基盤として非常に重要である。

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