継続的インテグレーション (コンティニュアスイインテグレーション) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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継続的インテグレーション (コンティニュアスイインテグレーション) の読み方

日本語表記

継続的インテグレーション (コンティニュアスインテグレーション)

英語表記

Continuous Integration (コンティニュアスインテグレーション)

継続的インテグレーション (コンティニュアスイインテグレーション) の意味や用語解説

継続的インテグレーション(Continuous Integration、略称CI)とは、ソフトウェア開発において、開発者がコードの変更を共有リポジトリに頻繁にコミットし、そのたびに自動的にビルドとテストを実行するプラクティスのことである。これは、開発サイクル全体を通じて、ソフトウェアの品質を継続的に維持・向上させることを目的としている。 ソフトウェア開発では、複数の開発者がそれぞれ異なる機能や修正を並行して実装する。それぞれの開発者が個別に作業を進め、ある程度のまとまりができた段階で初めて全員のコードを統合しようとすると、しばしば予期せぬ問題が発生する。例えば、異なる開発者が同じ箇所のコードを変更したために衝突が起きたり、ある機能の追加が別の既存機能に悪影響を与えたりすることがある。このような統合時の問題を「インテグレーション地獄」と呼ぶことがあるが、この問題は統合の頻度が低いほど深刻になり、原因特定や修正に多大な時間と労力がかかる傾向にある。 継続的インテグレーションは、このような問題を回避するために考案された。その本質は「早期かつ頻繁な統合」にある。開発者は自分のコード変更をできるだけ小さな単位に区切り、1日に数回、少なくとも1日に1回は共有リポジトリにコミットすることが推奨される。このコミットをトリガーとして、CIサーバーと呼ばれるシステムが自動的に動き出す。CIサーバーは、共有リポジトリから最新のコードを取得し、それをコンパイルして実行可能な状態にする「ビルド」処理を行う。次に、開発者が事前に作成しておいた「ユニットテスト」や「統合テスト」などの自動テストを実行する。これらのテストは、コードが意図した通りに動作するか、既存の機能が壊れていないかを確認するために非常に重要である。 CIのサイクルは、開発者がコードを変更し、共有リポジトリにコミットするところから始まる。まず、各開発者は自分のローカル環境でコードを修正・追加する。この際、変更が完了したら、ローカルでの基本的なテストを経て、その変更をバージョン管理システム(Gitなどが一般的)を通じて共有のコードリポジトリにプッシュする。このプッシュがCIサーバーによって検知されると、自動的な処理が開始される。CIサーバーは、最新のソースコード一式をリポジトリからチェックアウトし、設定されたビルドスクリプトに従ってコードをコンパイルする。コンパイルに成功すると、次に自動テストが実行される。これらのテストは、コードの品質と機能的な健全性を検証するために不可欠である。テストがすべて成功すれば、そのコードベースは一時的に「健全な状態」にあると見なされ、開発者にはその結果が通知される。もしビルドが失敗したり、テストが一つでも失敗したりした場合は、CIサーバーは直ちにその失敗を開発チームに通知する。この通知を受けた開発者は、速やかに問題の原因を特定し、修正して再度コミットする。この一連のプロセスを繰り返すことで、常に最新のコードが動作可能で、かつテストに合格している状態を保つことを目指す。 この実践の最大の利点は、バグや統合時の問題が早期に発見できることにある。問題が発見された時点での変更量が少ないため、原因の特定が容易であり、修正にかかる時間も短縮される。これは、問題が大規模になってから発見される場合に比べて、修正コストを劇的に削減する効果がある。また、常に動作する状態のコードベースが維持されるため、ソフトウェアの品質が向上する。開発チームは自信を持って新しい機能を追加したり、既存の機能をリファクタリングしたりできるようになる。 さらに、CIは開発チーム全体の生産性を向上させる。手動でのビルドやテストの負担が自動化によって軽減されるため、開発者は本来の業務であるコードの記述に集中できる。ビルドやテストの結果が即座にフィードバックされることで、開発者は自分の変更がシステム全体にどのような影響を与えるかをすぐに把握でき、迅速な意思決定が可能になる。また、頻繁なコードの共有とテストは、開発者間のコミュニケーションを促進し、チーム全体の連携を強化する効果もある。 継続的インテグレーションを効果的に導入するためには、いくつかの重要な要素がある。第一に、堅牢なバージョン管理システムが必要不可欠である。全てのコード変更はバージョン管理システムを通じて管理され、CIサーバーが常に最新のコードを取得できるようにする必要がある。第二に、CIサーバーとなるツール(Jenkins、GitLab CI、GitHub Actionsなど)の選定と適切な設定が求められる。これらのツールは、自動ビルド、自動テスト、結果の通知などを担当する。第三に、自動化されたテストの準備が重要である。ユニットテスト、統合テスト、さらには受け入れテストの一部など、開発されたコードの品質を検証するためのテストコードが豊富に用意されていることが、CIの効果を最大化する鍵となる。十分なテストカバレッジがなければ、CIプロセスを通過しても潜在的なバグが発見されず、その価値が半減してしまう可能性がある。 継続的インテグレーションは単なる技術的なツールやプロセスにとどまらず、開発チームの文化の一部となる。開発者が自身の変更が他の開発者の作業に影響を与える可能性があることを常に意識し、早期のコミットとテストの重要性を理解することが成功の鍵となる。継続的インテグレーションは、その次のステップである継続的デリバリー(Continuous Delivery)や継続的デプロイメント(Continuous Deployment)の基盤ともなり、アジャイル開発プラクティスの中心的な要素の一つとして、現代のソフトウェア開発において不可欠な実践となっている。

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