前進復帰 (ゼンシンフッキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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前進復帰 (ゼンシンフッキ) の読み方

日本語表記

前方復旧 (ゼンポウフッキュウ)

英語表記

Forward recovery (フォワードリカバリー)

前進復帰 (ゼンシンフッキ) の意味や用語解説

前進復帰とは、データベースシステムにおいて、ハードディスクの故障といった深刻な障害によりデータが失われた際に、システムを障害発生直前の状態に復旧させるための手法である。この復旧プロセスは、事前に取得しておいたデータベースのバックアップデータと、そのバックアップ取得後から障害発生までの間に行われた全てのデータ更新履歴を記録したログファイルを用いて行われる。具体的には、まずバックアップデータを新しい記憶媒体に復元し、その上にログファイルに記録された更新処理を順次適用していくことで、失われたデータを再現する。これにより、データの損失を最小限に抑え、システムの継続性を確保することが可能となる。前進復帰は、ロールフォワードとも呼ばれ、データベースの信頼性を支える根幹的な技術の一つとして位置づけられている。 前進復帰が実行される典型的なシナリオは、データベースが格納されているハードディスクが物理的に破損するメディア障害である。このような障害が発生すると、データベースファイルそのものが読み書き不能となり、システムは停止し、データへのアクセスが完全に失われる。この状態から復旧するためには、正常なハードウェアを用意した上で、前進復帰のプロセスを開始する必要がある。復旧の具体的な手順は、まず、障害発生前に取得しておいた最新の完全なバックアップデータを、新しく用意したディスクに復元することから始まる。この操作をリストアと呼ぶ。バックアップは、ある特定の時点におけるデータベースのスナップショットであるため、リストアが完了した段階では、データベースはバックアップを取得した時点の状態に戻っているに過ぎない。つまり、バックアップ取得後から障害発生までに行われた全ての更新、例えば、新規データの登録、既存データの変更や削除などは、この時点ではまだ反映されていない。 次に、このリストアされたデータベースに対して、バックアップ取得後から障害発生直前までの全ての更新処理を記録した「更新後ログ」を適用していく。この更新後ログは、ジャーナルやトランザクションログとも呼ばれ、データベースに加えられた変更内容が時系列で逐一記録されているファイルである。このログを最初から順番にデータベースに再実行していくことで、バックアップ取得以降のデータの変更を再現する。この一連の処理が「ロールフォワード」と呼ばれるものである。例えば、ログに「テーブルAのレコードXを値YからZに変更した」という記録があれば、その通りの変更をデータベースに適用する。この操作を、保存されているログの最後まで繰り返す。全てのログの適用が完了すると、データベースは障害が発生する直前の、最も新しい一貫性のある状態へと復旧する。これにより、ユーザーやアプリケーションが行った変更が失われることなく、システムを再稼働させることが可能となる。 この前進復帰を成功させるためには、二つの極めて重要な前提条件が存在する。第一に、定期的かつ確実にデータベースのバックアップを取得していることである。バックアップは復旧の出発点となるため、これがなければ復旧プロセスを開始することすらできない。第二に、バックアップ取得時点から障害発生時点までの更新後ログが、一切の欠損なく完全に保存されていることである。ログが途中で失われていれば、その失われた部分以降の更新は再現できず、不完全な復旧となってしまう。そのため、更新後ログはデータベース本体とは物理的に異なるディスクに保存し、堅牢に管理することが強く推奨される。 なお、前進復帰としばしば比較される概念に「後退復帰(ロールバック)」がある。後退復帰は、メディア障害のようなシステム全体の障害ではなく、アプリケーションの不具合やデッドロックなどにより、一つの処理(トランザクション)が正常に完了しなかった場合に用いられる。これは、その異常終了したトランザクションによる中途半端な変更を、変更前の状態を記録した「更新前ログ」を用いて取り消し、処理開始前の状態に戻す操作である。つまり、前進復帰がバックアップを起点に「未来」へ向かって状態を進めるのに対し、後退復帰はトランザクション開始前という「過去」へ向かって状態を戻すという点で、その目的と方向性が根本的に異なる。以上のように、前進復帰はデータベースの可用性とデータの保全性を確保するための不可欠な復旧技術であり、システムエンジニアは、その仕組みを正しく理解し、日々のバックアップとログ管理を適切に設計・運用する責任を負うのである。

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