増分バックアップ (ゾウブンバックアップ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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増分バックアップ (ゾウブンバックアップ) の読み方

日本語表記

増分バックアップ (ゾウブンバックアップ)

英語表記

Incremental Backup (インクリメンタルバックアップ)

増分バックアップ (ゾウブンバックアップ) の意味や用語解説

増分バックアップは、データバックアップ手法の一つであり、バックアップ対象のデータのうち、以前に取得したバックアップ以降に新規作成または変更されたデータのみを保存する方式である。この手法の主な目的は、バックアップにかかる時間と必要なストレージ容量を最小限に抑えることにある。システム全体のデータ量が膨大で、毎日フルバックアップを実行することが現実的ではないような環境において、非常に有効な選択肢となる。 詳細には、増分バックアップを運用するにあたっては、まず基準となる「フルバックアップ」を一度取得する必要がある。フルバックアップは、指定されたすべてのデータを完全にコピーするもので、その後の増分バックアップの起点となる。フルバックアップが完了した後、次に実行される増分バックアップは、前回のバックアップ(これがフルバックアップであるか、あるいは別の増分バックアップであるかに関わらず)が取得された時点以降に、内容が更新されたり、新しく作成されたりしたファイルやデータブロックのみを識別し、バックアップ媒体にコピーする。多くのバックアップソフトウェアは、ファイルの更新日時スタンプや、ファイルの変更を示す「アーカイブビット」といった属性を利用して、変更を効率的に検出する機能を備えている。 この方式の最大の利点は、バックアップ処理の高速性にある。対象となるデータ量が非常に少ないため、バックアップにかかる時間を大幅に短縮でき、運用中のシステムへの負荷も軽減できる。これにより、バックアップウィンドウを短く保つことが可能になる。また、ストレージ効率の高さも重要な利点である。変更された差分データのみを保存するため、フルバックアップを繰り返し取得する場合と比較して、使用するストレージ容量を大幅に削減できる。これは、大容量のデータを扱うシステムにおいて、バックアップコストの削減に直結する。 しかし、増分バックアップには、いくつかの考慮すべき課題も存在する。最も顕著なのは、データ復元(リストア)の複雑性と時間の増大である。データを完全に元の状態に復元するためには、最初に取得したフルバックアップに加えて、その後に取得されたすべての増分バックアップデータを、時系列順に一つずつ適用していく必要がある。例えば、週に一度フルバックアップを行い、平日に毎日増分バックアップを取得している環境で、週末にデータを復元する必要が生じた場合、基準となるフルバックアップと、その週の月曜日から金曜日までのすべての増分バックアップファイルが必要となる。この手順は煩雑であり、もし途中の増分バックアップデータの一つでも破損している場合、それ以降のデータの復元が不可能になるというリスクを伴う。 増分バックアップとよく比較される手法に「差分バックアップ」がある。差分バックアップは、前回のフルバックアップ以降に変更されたすべてのデータをバックアップする方式である。これに対し、増分バックアップは前回の「任意の種類のバックアップ」(フルバックアップまたは増分バックアップ)以降に変更されたデータのみをバックアップする点が根本的に異なる。この違いは、リストア時の要件に大きく影響する。差分バックアップの場合、復元に必要なのはフルバックアップと最新の差分バックアップの二つだけで済むため、リストアの複雑性は増分バックアップよりも低い。ただし、差分バックアップはフルバックアップからの変更を累積して保存するため、バックアップデータ量は増分バックアップよりも大きくなる傾向がある。 増分バックアップは、特に日々のバックアップにかかるリソースを最小限に抑えたい環境、例えば、企業の大規模なファイルサーバーやデータベースシステムなどに適している。典型的な運用シナリオとしては、週末などのシステム負荷の低い時間帯にフルバックアップを実施し、平日は日中の運用に影響を与えないように増分バックアップを毎日行うというパターンが多い。システム管理者は、自らの環境におけるデータの重要度、許容できるバックアップ時間、および目標復旧時間(RTO)などを総合的に評価し、最適なバックアップ戦略として増分バックアップを導入するかどうかを判断する必要がある。

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