ITSS(アイティーエスエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ITSS(アイティーエスエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
情報技術スキル標準 (ジョウホウギジュツスキルヒョウジュン)
英語表記
ITSS (アイティーエスエス)
用語解説
ITSSとは、IT Skill Standardの略称であり、経済産業省が策定し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が普及を推進しているIT人材向けのスキル体系である。個人のITスキルを客観的に評価し、育成やキャリア形成に役立てることを目的として作られた、いわばITエンジニアのための「共通の物差し」である。システムエンジニアを目指す者にとって、ITSSを理解することは、自身の現在地を把握し、将来どのようなスキルを身につけてキャリアアップしていくべきかを考える上で非常に有効な指針となる。この指標は、企業が人材育成計画を立てたり、適切な人材配置を行ったりする際の基準としても広く活用されている。
ITSSの構造は、主に「キャリアフレームワーク」と「スキルレベル」という二つの軸で構成されている。キャリアフレームワークは、IT業界における様々な仕事を「職種」と「専門分野」に分類したものである。職種は全部で11種類定義されており、例えば、顧客の経営課題をITで解決する「コンサルタント」、システム全体の設計を行う「ITアーキテクト」、プロジェクトの進行を管理する「プロジェクトマネジメント」、特定の技術領域に特化した「ITスペシャリスト」、業務アプリケーション開発を専門とする「アプリケーションスペシャリスト」、ソフトウェア製品の開発を担う「ソフトウェアデベロップメント」などがある。システムエンジニアは、業務内容に応じてこれらの複数の職種に関連することが多い。さらに、各職種はより詳細な「専門分野」に細分化される。例えば、「ITスペシャリスト」という職種の中には、「プラットフォーム」「ネットワーク」「データベース」「セキュリティ」といった専門分野が存在する。これにより、自分がどの領域の専門家を目指すのかを具体的に定義することが可能になる。
もう一つの重要な軸が「スキルレベル」である。これは、それぞれの職種と専門分野において、求められる能力の高さを7段階のレベルで定義したものである。レベル1は、IT業界における新人やエントリーレベルに相当し、上位者の指導のもとで業務の遂行が期待される段階である。レベル2は、基本的な知識とスキルを持ち、上位者の指導があれば独力で作業ができる若手レベルを示す。レベル3は、一人前のプロフェッショナルとして、要求された作業を独力で遂行できるスキルを持つことを意味する。多くのエンジニアがまず目指すべき目標となるのがこのレベルである。レベル4は、チームリーダーとして後輩を指導し、より高度な業務を遂行できるプロフェッショナルレベルである。ここからは、単なる技術力だけでなく、マネジメント能力や指導力も求められる。レベル5から7は、さらに高度な専門性を持つトップレベルの技術者を示しており、レベル5は社内の第一人者、レベル6は国内の第一人者、そしてレベル7は世界で通用するトッププロフェッショナルと位置づけられている。
ITSSは、個人と企業の両方にとって多くの活用方法がある。個人にとっては、自身のスキルをITSSの指標に照らし合わせることで、客観的な現在地を把握することができる。そして、将来目指したい職種やレベルを明確に設定し、そこに至るまでのキャリアパスを描くための道しるべとなる。目標とのギャップを認識することで、具体的にどのような知識や技術を学習すべきかという計画も立てやすくなる。また、情報処理技術者試験をはじめとするIT関連資格は、ITSSの各レベルに対応付けられているため、資格取得が自身のスキルレベルを証明する一つの手段となり、学習のモチベーションにもつながる。
一方、企業にとっては、社員のスキルを統一された基準で評価し、管理することが可能になる。これにより、個々の社員の能力に応じた育成計画を策定したり、プロジェクトの要求スキルに合致した最適な人材を配置したりすることができる。人事評価や採用活動においても、求めるスキルセットを明確に定義するための基準として活用される。
ITSSは2002年に策定されたものであり、その後の技術の進化やビジネス環境の変化に対応するため、後継となる新たなスキル標準も登場している。例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に求められる能力を定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」や、より広範なタスクとスキルを網羅した「iコンピテンシ ディクショナリ(iCD)」などがその代表例である。しかし、これらの新しい枠組みも、ITSSが築いたスキルを体系化するという基本的な考え方を継承している。そのため、IT業界のキャリアを考える上で、その基礎となるITSSを理解しておくことは、今なお非常に重要であると言える。システムエンジニアを目指す初心者は、このITSSという地図を手にすることで、広大なITの世界で迷うことなく、着実にキャリアを築いていくことができるだろう。