エントリー(エントリー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エントリー(エントリー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エントリ (エントリ)

英語表記

entry (エントリー)

用語解説

IT分野における「エントリー」とは、特定の文脈で「一つの項目」「一つの記録」「一つの単位」といった意味で使われる多義的な用語である。単独で決まった意味を持つのではなく、データベース、ディレクトリサービス、プログラミング、ログファイルなど、それが使用される技術領域や状況によって指し示す対象が変化する。この言葉に遭遇した際は、まずどの文脈で語られているのかを把握することが極めて重要となる。共通する概念としては、何らかの集合体を構成する個々の要素や、登録されたデータの一つのまとまりを指す場合が多い。例えば、住所録全体がデータの集合体だとすれば、その中の一人分の氏名や住所、電話番号などがまとまった情報が「エントリー」に相当する。システムエンジニアは、様々なシステムやデータを取り扱う中で、この「エントリー」という言葉に頻繁に接することになるため、その文脈に応じた意味を正確に理解しておく必要がある。

まず、データベースの文脈におけるエントリーについて解説する。リレーショナルデータベースにおいて、エントリーは「レコード」や「行」とほぼ同義で用いられる。データベースは、データを整理・格納するためにテーブル(表)という形式を使用する。テーブルは複数のカラム(列)とロウ(行)で構成されており、カラムはデータの属性(例えば「社員ID」「氏名」「部署名」など)を定義し、ロウには個々の具体的なデータが格納される。この一つの行、つまり一人の社員に関する情報のまとまり全体が、一つのエントリーと呼ばれる。したがって、「テーブルに新しいエントリーを追加する」という表現は、「テーブルに新しいレコード(行)を一件追加する」という意味になる。各エントリーは、そのテーブルの主キーによって一意に識別されるのが一般的である。データの登録、更新、削除といった操作は、このエントリー単位で行われるのが基本となる。

次に、ディレクトリサービスの分野、特にLDAP(Lightweight Directory Access Protocol)のようなシステムでは、エントリーはディレクトリ情報ツリーを構成する基本的なオブジェクト単位を指す。ディレクトリサービスは、ネットワーク上のリソースやユーザー情報を階層的な構造で管理する仕組みである。このツリー構造の中にある、例えば一人のユーザー、一つのコンピュータ、一つのグループといった個々の情報オブジェクトがエントリーである。各エントリーは、DN(Distinguished Name, 識別名)と呼ばれる、ツリーのルートからそのエントリーに至るまでのパスを示す一意な名前によって識別される。また、一つのエントリーは複数の「属性(Attribute)」と「値(Value)」のペアから構成される。例えば、ユーザーのエントリーは、「cn(Common Name, 一般名): 田中太郎」や「mail(電子メールアドレス): taro.tanaka@example.com」といった属性と値の集合体として表現される。システム管理者は、このエントリーを操作することでユーザーの追加や権限の変更などを行う。

プログラミングの文脈、特にデータ構造を扱う際にもエントリーという言葉が使われる。これは主に、キー(Key)と値(Value)を一対として扱うコレクション、すなわちマップやハッシュテーブル、連想配列などにおける、その「キーと値のペア」自体を指す。例えば、プログラミング言語JavaにおけるMapインターフェースでは、キーと値のペアをMap.Entryというオブジェクトとして扱う。このデータ構造では、一意のキーを指定することで、それに対応する値(データ)を効率的に取り出すことができる。マップから全てのデータを取り出して繰り返し処理を行うような場面では、このエントリーの集合を取得し、各エントリーからキーと値を取り出して利用する、という操作が頻繁に行われる。ここでも、マップというデータ集合を構成する基本的な一単位がエントリーであるという概念は共通している。

その他にも、ログファイルにおけるエントリーは、システムやアプリケーションの動作記録が出力されたファイルの中の、一行分の記録を指す。各ログエントリーには、通常、イベントが発生した日時(タイムスタンプ)、ログの重要度を示すレベル(INFO, WARN, ERRORなど)、そして具体的なメッセージが含まれる。システムの障害解析や動作監視において、エンジニアは膨大なログの中から特定のエントリーを探し出し、原因を追究する。また、関連する用語として「エントリーポイント」がある。これはプログラムの実行が開始される特定の位置、つまりプログラムの「入り口」を指す。C言語やJavaにおけるmain関数がその代表例である。これはデータの一単位を指すエントリーとは意味が異なるが、プログラムの開始点を示す重要な概念であり、関連知識として重要である。以上のように、「エントリー」は多様な場面で使われるが、その核となるイメージは「ある大きな枠組みの中の、意味のある最小の構成単位」であると理解しておけば、様々な文脈に柔軟に対応することができるだろう。