キッティング (キッティング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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キッティング (キッティング) の読み方

日本語表記

キッティング (キッティング)

英語表記

Kitting (キッティング)

キッティング (キッティング) の意味や用語解説

キッティングとは、情報システムを構成するPCやサーバー、ネットワーク機器などのハードウェアを、実際に利用できる状態にまで準備する一連の作業を指す。これは単に機器を箱から出して設置するだけでなく、組織の業務要件やセキュリティポリシーに合わせて、必要なソフトウェアをインストールし、各種設定を行うことを含む。この作業の目的は、導入されたIT機器が安定して機能し、ユーザーがスムーズに業務を開始できる環境を効率的かつ安全に構築することにある。例えば、企業内で新しい従業員にPCを貸与する際や、データセンターに新たなサーバーを導入する際などに行われる、いわば「IT機器の初期セットアップ」全般がキッティングに該当する。 キッティング作業は多岐にわたり、その内容は導入する機器の種類、台数、企業の規模やポリシーによって大きく異なる。まず、物理的な作業として、機器の開梱、ラックへの設置や机上への配置、電源ケーブルやネットワークケーブル、ディスプレイケーブルなどの接続といった配線作業がある。この際、ケーブルの取り回しや冷却、物理的なセキュリティにも配慮が必要となる場合がある。 次に、ソフトウェアに関する作業が中心となる。最も基本的なのはオペレーティングシステム(OS)のインストールである。Windows、macOS、Linux、あるいはサーバー向けのOSなど、機器の用途に応じたOSが選択される。OSがインストールされたら、そのハードウェアが持つ性能を最大限に引き出すために、グラフィックドライバ、サウンドドライバ、チップセットドライバといった各種デバイスドライバのインストールが続く。これらのドライバは、ハードウェアとOSが適切に連携するために不可欠である。 さらに、業務で利用するためのアプリケーションのインストールも重要な作業である。一般的なオフィススイート、Webブラウザ、特定の業務システムで使う独自アプリケーション、開発ツールなどが含まれる。これらのアプリケーションは、バージョン管理やライセンス管理を考慮しながら慎重に導入される。 ネットワークへの接続設定もキッティングの中核をなす。IPアドレスの割り当て、サブネットマスク、ゲートウェイ、DNSサーバーの設定などを行い、機器が社内ネットワークやインターネットに正しく接続できるよう設定する。企業によっては、VPN(Virtual Private Network)接続の設定や、無線LAN接続に必要な認証情報の登録も含まれる。 セキュリティ設定は、情報漏洩や不正アクセスからシステムを守るために不可欠な作業である。ウイルス対策ソフトウェアやファイアウォールなどのセキュリティ対策製品を導入し、セキュリティポリシーに沿った詳細な設定を適用する。OSやアプリケーションのセキュリティパッチ適用、複雑なパスワードポリシーの強制、アカウントロックアウトの設定などもこの段階で行われることが多い。 ユーザーアカウントの作成と権限設定も、キッティングにおいて重要なステップである。従業員が利用するアカウントを作成し、その業務内容に応じて必要なアクセス権限を付与する。例えば、共有フォルダへのアクセス権や特定の基幹システムへのログイン権限などがこれに該当する。 機器の導入後も適切に管理できるよう、IT資産管理情報の登録作業も行われる。具体的には、シリアル番号、MACアドレス、購入日、利用者、設置場所などの情報を台帳やIT資産管理システムに登録し、機器のライフサイクル管理の基礎とする。 これらの設定が完了したら、機器が意図した通りに動作するかどうか、厳密な動作確認とテストを実施する。ネットワーク接続、アプリケーションの起動、周辺機器の動作、セキュリティ設定が正しく機能しているかなどを確認し、問題があれば修正を行う。最終的に、機器に資産管理タグや利用者情報を記載したラベルを貼付し、必要に応じて利用者に引き渡せるように再梱包されることもある。 キッティングは、一台のPCから数百、数千台のPCやサーバー群まで、その規模は様々である。小規模な導入では手動で一つ一つ設定を行うが、大規模な展開では、工数削減と品質均一化のために自動化技術が導入されることが一般的である。例えば、OSやアプリケーション、各種設定が完了した状態のマスターイメージを複数台の機器に一括して展開するイメージング技術は、手間を大幅に削減できる強力な手法である。また、PXEブート(Preboot eXecution Environment)を利用してネットワーク経由でOSイメージを展開したり、スクリプトや構成管理ツール(例えばMicrosoft System Center Configuration Manager: SCCMなど)を用いて自動でソフトウェアインストールや設定変更を行ったりすることも広く行われている。近年では、MDM(Mobile Device Management)やクラウドベースのプロビジョニングツールが、PCやモバイルデバイスのキッティングに活用されるケースも増えている。 キッティングを適切に行うことは、単に機器を導入するだけでなく、導入後の運用管理コストの削減、情報セキュリティレベルの維持、そして従業員の迅速な業務開始と生産性向上に直結する。標準化されたキッティングプロセスを確立することで、ヒューマンエラーを減らし、機器の品質を均一に保ち、IT部門の負担を軽減できる。情報システムを支える重要な初期工程として、キッティングはシステムの安定稼働とビジネスの成功に不可欠な役割を担っている。

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