相互TLS認証 (ソウゴティーエルエスニンショウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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相互TLS認証 (ソウゴティーエルエスニンショウ) の読み方

日本語表記

相互TLS認証 (ソウゴティーエルエスニンショウ)

英語表記

Mutual TLS authentication (ミューチュアルティーエルエスオーセンティケーション)

相互TLS認証 (ソウゴティーエルエスニンショウ) の意味や用語解説

相互TLS認証は、ネットワーク通信において、通信を行う両者が互いの身元を確認し合う仕組みである。通常のTLS認証が主にサーバーの身元をクライアントが確認する「片方向認証」であるのに対し、相互TLS認証はクライアントも自身の身元をサーバーに証明する「双方向認証」を提供する。これにより、通信のセキュリティレベルを飛躍的に向上させ、信頼性の高い通信経路を確立することを目的とする。企業間のシステム連携やマイクロサービス間の通信、あるいはIoTデバイスとクラウド間の連携など、厳格なアクセス制御と確実な身元確認が求められる場面で広く利用される。 詳細について説明する。まず、相互TLS認証を理解するためには、基盤となるTLS(Transport Layer Security)プロトコルと、通常のTLS認証(サーバー認証)の仕組みを把握する必要がある。TLSは、インターネットなどのネットワーク上でデータを安全に送受信するための暗号化通信プロトコルであり、主にデータの盗聴、改ざん、なりすましを防ぐ役割を果たす。TLS通信が確立される際には、通信を開始するクライアントとサーバーの間で「TLSハンドシェイク」と呼ばれる一連のやり取りが行われる。このハンドシェイクの中で、通信パラメータのネゴシエーション、暗号鍵の交換、そして認証プロセスが実行される。 通常のTLS認証、つまりサーバー認証では、クライアントが接続しようとしているサーバーが正規のものであることを確認する。このプロセスでは、サーバーは自身の身元を証明するために「サーバー証明書」をクライアントに提示する。サーバー証明書には、サーバーの公開鍵、ドメイン名、証明書の発行元である認証局(CA: Certificate Authority)の情報などが含まれる。クライアントは、受け取ったサーバー証明書が信頼できる認証局によって発行され、有効期限内で、失効していないかなどを検証する。この検証が成功すれば、クライアントはサーバーが本物であると判断し、安全な暗号化通信を開始する。しかし、この段階ではサーバーはクライアントが誰であるかを知る術がなく、せいぜい接続元のIPアドレス程度しか把握できない。つまり、サーバーは「本物のサーバーであること」は証明するが、「誰が接続しているか」は証明されない。 ここで相互TLS認証が導入される。相互TLS認証では、通常のサーバー認証に加えて、サーバーがクライアントの身元も確認するプロセスが追加される。TLSハンドシェイクの途中で、サーバーはクライアントに対して「クライアント証明書」の提示を要求する。クライアントは、自身が保持しているクライアント証明書をサーバーに送信する。クライアント証明書もサーバー証明書と同様に、クライアントの公開鍵、識別情報、発行元である認証局の情報などを含むデジタル署名された電子文書である。 サーバーは、受け取ったクライアント証明書を検証する。検証内容は、その証明書が信頼できる認証局によって発行されたものであるか、有効期限内であるか、失効していないかなど多岐にわたる。サーバーはあらかじめ、どの認証局からのクライアント証明書を信頼するかを設定しておく。もしクライアント証明書が有効で、サーバーが信頼する認証局によって発行されたものであれば、サーバーはクライアントが正当なものであると判断し、通信の継続を許可する。このプロセスを経て、クライアントとサーバーの両方が互いの身元を確認し合い、両者ともに相手を信頼できる状態となる。 相互TLS認証を導入する最大の理由は、セキュリティの強化にある。通常のTLS認証だけでは、サーバーは本物であっても、悪意のあるクライアントが接続を試みる可能性がある。例えば、API連携において、APIを提供するサーバーは正規のAPIクライアントアプリケーションからのアクセスのみを許可したいと考えるだろう。相互TLS認証を用いれば、サーバーは「このAPIリクエストは、我々が信頼するクライアント証明書を持つ、承認されたクライアントからのみ来ている」と確信できる。これにより、不正なクライアントからのアクセスを未然に防ぎ、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを大幅に低減できる。 具体的な適用例としては、企業間におけるシステム連携が挙げられる。複数の企業が情報システムを連携させる場合、お互いのシステムが相手方を信頼できることが不可欠である。相互TLS認証を導入することで、許可されたシステム間のみが通信可能となり、厳格なアクセス制御を実現できる。また、マイクロサービスアーキテクチャでは、多数のサービスが相互に通信を行うため、サービス間の信頼関係を確立することが重要となる。各サービスがクライアント証明書とサーバー証明書を持ち、相互認証を行うことで、サービス間通信のセキュリティを担保できる。さらに、IoTデバイスがクラウドサービスにデータを送信する際にも、デバイス側の身元を証明するためにクライアント証明書を用いた相互TLS認証が利用され、不正なデバイスからのデータ送信を防ぐ。 相互TLS認証の導入には、証明書の発行、管理、更新、失効といったライフサイクル管理が伴うため、運用面での考慮が必要となる。クライアント証明書は、通常のユーザー認証で使われるID/パスワードとは異なり、盗難や紛失のリスクに対してより厳重な管理が求められる。しかし、これらの運用上の複雑さを上回る形で、通信の信頼性とセキュリティレベルを向上させる強力な手段として、今日の多様なシステム環境で不可欠な技術となっている。

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