ストアアンドフォワード (ストアアンドフォワード) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ストアアンドフォワード (ストアアンドフォワード) の読み方

日本語表記

ストア・アンド・フォワード (ストア アンド フォワード)

英語表記

store-and-forward (ストアアンドフォワード)

ストアアンドフォワード (ストアアンドフォワード) の意味や用語解説

ストアアンドフォワードは、コンピュータネットワークにおけるデータ転送方式の一つである。ストア(Store)は「保存」、フォワード(Forward)は「転送」を意味し、その名の通り、受信したデータを中継地点で一時的に完全に保存してから、宛先へ転送する仕組みを指す。この方式は、通信の信頼性や柔軟性を高めるために、電子メールシステムからネットワーク機器の基本的な動作原理に至るまで、ITインフラの様々な場面で利用されている基本的な技術である。システムエンジニアを目指す上で、その仕組みと特性を理解することは非常に重要となる。 この方式の具体的な動作は、中継ノード、例えばネットワークスイッチやルーター、あるいはメールサーバーなどがデータを受け取ることから始まる。中継ノードは受信したデータ(パケット、フレーム、メッセージなど)を、その全体が到着するまで内部の記憶領域であるバッファメモリやストレージに一時的に格納する。データの受信が完了した時点で、中継ノードはデータが転送中に破損していないかを確認するためのエラーチェックを行う。例えば、イーサネット通信で用いられるフレームの場合、FCS(Frame Check Sequence)と呼ばれる誤り検出符号を検証し、データの完全性を検査する。この検査の結果、データに異常がないことが確認された場合にのみ、宛先情報を解析し、適切なポートや次の中継ノードに向けてデータの転送処理を開始する。もしエラーが検出された場合、そのデータは破棄され、ネットワーク内に破損したデータが拡散することを防ぐ。 ストアアンドフォワード方式には、いくつかの重要な利点が存在する。第一の利点は、前述の通り通信における信頼性の向上である。データを転送する前にエラーチェックを行うため、伝送路上のノイズなどが原因で破損したデータが、その先のネットワークセグメントに影響を及ぼすことを未然に防ぐことができる。第二に、非同期通信の実現が可能となる点だ。送信側と受信側が、必ずしも同時にオンラインで通信可能な状態でなくても、中継システムがデータを預かることで通信を成立させられる。例えば、電子メールは、受信者のコンピュータがオフラインであっても送信することが可能であり、これはメールサーバーがストアアンドフォワード方式でメールを一時的に保管し、受信者のサーバーが受信可能になったタイミングで転送するためである。第三に、ネットワークの輻輳制御に貢献する。輻輳とは、通信トラフィックが集中し、ネットワークが混雑している状態を指す。ストアアンドフォワード方式では、ネットワークが混雑している場合にデータをすぐに送り出さず、バッファに溜めておくことで、輻輳の悪化を防ぎ、ネットワーク全体の安定稼働に貢献する。第四に、通信速度やプロトコルが異なるネットワーク間を接続する際の緩衝材としての役割も果たす。高速なLANから低速なWANへデータを送る際など、速度差を中継ノードのバッファで吸収し、スムーズなデータ転送を実現する。 この方式が実際に利用されている代表的な例として、最も身近なものは電子メールシステムである。送信者がメールを送信すると、まず送信側のメールサーバーにメールが保存される。その後、メールサーバーが宛先のメールサーバーへメールを転送する。この仕組みにより、送信時と受信時に両者がオンラインである必要はない。また、企業の情報システムにおいては、システム間のデータ連携に用いられるメッセージキューイングという技術で、この考え方が応用されている。送信側システムはメッセージキューにデータを書き込むだけで処理を完了でき、受信側システムは自身の都合の良いタイミングでキューからデータを取り出して処理を行うことで、システム同士が直接依存しない、柔軟で堅牢な疎結合な構成を実現できる。 一方で、ストアアンドフォワード方式には考慮すべきデメリットもある。最大の課題は、転送遅延(レイテンシ)の発生である。データを一旦すべて受信し、保存してから転送するというプロセスを経るため、データを即座に転送する方式に比べて遅延が大きくなる。そのため、VoIP(IP電話)やオンラインゲーム、ライブストリーミングといった、ごくわずかな遅延も品質に大きく影響するようなリアルタイム性が求められる通信には、この方式がボトルネックとなる可能性がある。また、データを一時的に保持するためのバッファメモリやストレージが必要であり、通信量が多い環境では相応の記憶領域リソースが要求される点も考慮が必要である。この方式の対義語としては、パケットの宛先アドレスを読み取った時点で転送を開始するカットスルー方式があり、これは低遅延を特徴とするがエラーチェックを行わないという欠点を持つ。 このように、ストアアンドフォワードは遅延というデメリットを持つ一方で、通信の信頼性と柔軟性を確保するための非常に重要なデータ転送方式である。その特性を深く理解し、適用するシステムの要件に応じて他の方式と比較検討することは、安定した情報システムの構築を目指すシステムエンジニアにとって不可欠な知識である。

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