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VICS(ヴィックス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

VICS(ヴィックス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

道路交通情報通信システム (ドウロコウツウホウシンツウシンシステム)

英語表記

VICS (ヴィックス)

用語解説

VICS(Vehicle Information and Communication System)は、道路交通情報をリアルタイムに収集、処理し、車載機を通じてドライバーに提供する日本の交通情報通信システムである。その目的は、交通の円滑化、ドライバーの利便性向上、そして交通事故の削減に貢献することにある。システムエンジニアを目指す初心者にとって、VICSは、情報通信技術が社会インフラにどのように応用されているかを示す良い事例となる。

VICSのシステムは、まず、警察や道路管理者(国土交通省、高速道路会社など)から、交通渋滞、事故、工事、交通規制、駐車場の満空状況といった様々な情報を収集することから始まる。これらの情報は、道路に設置された車両感知器やカメラ、パトカーからの報告、さらにはETC2.0などから得られるプローブ情報など、多岐にわたるデータソースから集められる。収集された生の情報は、VICSセンターと呼ばれる専門の施設で集約され、リアルタイムに処理・編集される。この処理過程では、膨大な情報の中からドライバーにとって有用な情報を抽出し、分かりやすい形式に加工する作業が行われる。

加工された交通情報は、特定の通信媒体を通じて車載のカーナビゲーションシステムや専用受信機に配信される。VICSの配信方式には、主に「FM多重放送」「電波ビーコン」「光ビーコン」の三種類がある。それぞれの方式は、情報の伝達能力やカバーする範囲に違いがある。FM多重放送は、既存のFMラジオ放送の電波に乗せて交通情報を配信する方式である。この方式の利点は、広範囲にわたって情報を配信できる点にあるが、伝送できる情報量は限られており、主に文字情報が中心となる。カーナビ画面では、道路上の渋滞区間を色で表示したり、文字で規制内容を伝えたりするのに利用される。

電波ビーコンは、高速道路や主要な幹線道路の路上に設置されたアンテナから、特定の電波を発信して交通情報を配信する方式である。この方式は、FM多重放送よりも多くの情報を伝送でき、比較的リアルタイム性の高い情報を提供することが可能である。配信される情報は、渋滞の長さや発生箇所、事故・工事による車線規制の情報などが、簡易的な図形や文字情報として提供される。電波ビーコンは、特に高速道路の分岐点や合流点の手前などで、より詳細な情報を提供することで、ドライバーが適切な経路を選択するのを支援する。

最も多くの情報を伝送できるのが光ビーコンである。これも電波ビーコンと同様に道路の路上に設置されるが、赤外線光を用いて情報を配信する。光ビーコンは、電波ビーコンやFM多重放送と比較して、はるかに大量のデータを高速で送信できるため、渋滞の発生状況をより詳細なグラフィックで表示したり、過去の統計データに基づいた所要時間予測、さらには簡易的な画像情報などを提供することも可能である。また、光ビーコンは、車両側からVICSセンターへ情報を送信する双方向通信の機能を持つものもあり、渋滞の末尾情報や、通過時刻などのプローブ情報を収集する役割も担うことで、より精度の高い交通情報生成に貢献している。

VICSが提供する情報の種類は多岐にわたる。具体的には、リアルタイムの渋滞情報、所要時間情報、事故や工事による交通規制情報、通行止め情報、駐車場の満空情報、さらにはサービスエリアやパーキングエリアの情報、ガソリンスタンドの混雑情報などがある。これらの情報をカーナビゲーションシステム上で視覚的に表示することで、ドライバーは現在の交通状況を正確に把握し、渋滞を避けた最適なルートを選択したり、目的地までの所要時間を予測したりすることが可能となる。

VICSの利用は、ドライバーにとって多くのメリットをもたらす。まず、最適なルート選択により、移動時間の短縮が図れる。これは、時間的なコスト削減だけでなく、精神的なストレスの軽減にもつながる。また、無駄な走行を減らすことで燃料消費を抑え、燃費の向上や二酸化炭素排出量の削減にも貢献する。社会全体で見ると、VICSによる情報提供は、交通流の分散を促し、特定の道路への交通集中を緩和することで、都市部の慢性的な渋滞の解消に寄与する。これは物流の効率化にもつながり、経済活動全体に良い影響を与える。さらに、事故情報や災害時の通行規制情報を迅速に提供することで、ドライバーの安全性を高め、二次災害の防止にも役立つ。

近年では、VICSは「VICS WIDE」へと進化している。VICS WIDEは、FM多重放送の帯域を拡張し、従来のVICSよりも格段に多くの情報を伝送できるようになった。これにより、一般道の情報提供が充実し、従来はカバーしきれなかった詳細な渋滞情報や所要時間情報が提供されるようになった。また、局地的な豪雨による冠水箇所や、地震などの災害発生時の通行可能な道路情報といった、防災・減災に資する情報も提供されるようになっている。VICS WIDEは、より広範囲で、より詳細かつきめ細やかな交通情報を提供することで、ドライバーの利便性と安全性を一層向上させている。

VICSは、ITS(高度道路交通システム)の中核をなす技術の一つであり、情報通信技術と社会インフラが密接に連携することで、社会課題の解決に貢献する典型的なシステムである。システムエンジニアにとって、このような大規模な情報収集、処理、配信システムは、リアルタイムデータ処理、通信プロトコル、データセキュリティ、ユーザーインターフェース設計など、多岐にわたる技術要素が組み合わさって実現されていることを理解する上で非常に良い学習対象となる。これからもVICSは、自動運転技術の進展やMaaS(Mobility as a Service)といった新たなモビリティサービスの普及とともに、その役割と提供価値をさらに進化させていくことが期待されている。

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