【ITニュース解説】Amazon EVS(Elastic VMware Service)を動かすためのメモ

2025年09月08日に「Qiita」が公開したITニュース「Amazon EVS(Elastic VMware Service)を動かすためのメモ」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

AWS上でVMwareの仮想サーバー環境を構築できる新サービス「Amazon EVS」。この記事は、実際にEVSを稼働させるための具体的な手順や設定を記録した技術メモである。クラウドでVMwareを扱う際の最初のステップとして参考になる。(118文字)

ITニュース解説

アマゾンウェブサービス(AWS)と、サーバー仮想化技術の分野で広く利用されているVMware社が連携した新しいサービス「Amazon Elastic VMware Service(EVS)」が注目を集めている。これは、多くの企業が自社内で運用しているVMwareベースのシステムを、AWSのクラウド環境へスムーズに移行するための新たな選択肢となるものである。システムエンジニアを目指す上で、現代のITインフラを支えるクラウドと、従来型のオンプレミス環境で主流であった技術がどのように融合していくのかを理解することは非常に重要である。このAmazon EVSは、そのトレンドを象徴するサービスの一つと言える。

まず、背景としてVMwareの役割を理解する必要がある。VMwareは「サーバー仮想化」を実現するソフトウェアであり、一台の高性能な物理サーバー上で、複数の独立した仮想的なサーバー(仮想マシン)を動作させる技術である。これにより、企業は物理サーバーの台数を減らし、ハードウェアリソースを効率的に利用できるため、コスト削減や運用管理の簡素化といったメリットを享受してきた。多くの企業がデータセンター内にVMwareで構築した仮想化基盤を持っており、これが企業のITシステムの中核を担っている。

近年、ビジネスの俊敏性や拡張性を求めて、こうしたオンプレミスのシステムをAWSのようなパブリッククラウドへ移行する動きが加速している。このニーズに応えるため、以前から「VMware Cloud on AWS(VMC on AWS)」というサービスが存在した。これは、AWSが提供する物理サーバー(ベアメタルインスタンス)を借り、その上にVMwareのソフトウェア群を導入して、オンプレミスとほぼ同じVMware環境をクラウド上に再現するサービスである。しかし、VMC on AWSには一つの特徴があった。それは、サーバーの計算能力(CPUやメモリ)と、データを保存するストレージ容量が一体化したパッケージで提供される点である。具体的には、VMwareのストレージ仮想化技術である「vSAN」が利用されており、サーバーを追加すると計算能力とストレージ容量がセットで増える仕組みになっていた。これは構成がシンプルな反面、「計算能力はあまり必要ないが、大量のデータ保存領域だけが欲しい」あるいはその逆の場合に、不要なリソースにまでコストを支払う必要があり、柔軟性に課題があった。

そこで登場したのが、Amazon EVSである。EVSもVMC on AWSと同様に、AWSのベアメタルインスタンス上にVMwareの環境を構築する点では共通している。しかし、最大の違いはストレージの仕組みにある。EVSでは、VMwareのvSANを利用する代わりに、AWSが提供する高性能なフルマネージドストレージサービス「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を外部ストレージとして利用する。このアーキテクチャの変更が、決定的なメリットを生み出す。つまり、サーバーの計算能力を担うコンピューティングリソースと、データを保存するストレージリソースを完全に分離して管理できるようになったのである。

この分離により、利用者はそれぞれの要件に応じて、コンピューティングとストレージの量を独立して、かつ柔軟に拡張・縮小できる。例えば、大量のデータを分析するシステムでストレージ容量だけが逼迫した場合、サーバーを追加することなくストレージだけを増設できる。逆に、計算処理が集中するアプリケーションのために、CPUやメモリだけを強化することも可能だ。これにより、リソースを無駄なく利用でき、コスト効率を大幅に改善できる可能性がある。サービス名の「Elastic(伸縮自在な)」は、このリソースの柔軟な調整能力を的確に表している。

実際にAmazon EVSの環境を構築するプロセスは、AWSの管理コンソールから進められる。まず、AWS上にプライベートなネットワーク空間であるVPCを作成し、次にEVSで利用するコンピューティングリソースの集合体である「EVSクラスター」を作成する。そして、データストアとして機能する「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を設定する。これらの準備が整うと、VMwareの各種ソフトウェア(サーバー仮想化のvSphere、ストレージ仮想化のvSAN、ネットワーク仮想化のNSXなど)を統合した「Software-Defined Data Center(SDDC)」のデプロイが開始される。このデプロイには数時間を要するが、完了すればクラウド上に完全なVMware環境が構築される。利用者は、オンプレミス環境で使い慣れたVMwareの統合管理ツール「vCenter Server」にアクセスし、これまでと同じ操作感で仮想マシンの作成や管理を行うことができる。

Amazon EVSは、既存のVMware資産を持つ企業にとって、クラウド移行のハードルを下げ、よりコスト効率の高い運用を可能にする強力な選択肢となる。特に、コンピューティングとストレージの要求性能がアンバランスなシステムを抱える企業にとっては、そのメリットは大きい。クラウドとオンプレミスの技術が融合し、それぞれの長所を活かすハイブリッドなアプローチが主流となる現代において、Amazon EVSのようなサービスの仕組みを理解することは、将来のシステムエンジニアにとって不可欠な知識となるだろう。