エラスティック(エラスティック)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エラスティック(エラスティック)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エラスティック (エラスティック)

英語表記

elastic (エラスティック)

用語解説

エラスティックとは、英語で「弾力性のある」「伸縮自在の」といった意味を持つ言葉であり、IT分野においては特に、システムが利用するコンピューターリソースを状況に応じて柔軟かつ自動的に増減させる能力を指す。この概念は、現代のクラウドコンピューティング環境において非常に重要な要素となっている。システムへのアクセス量や処理負荷が変動する際に、それに合わせてCPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク帯域幅などのリソースを動的に調整できる特性がエラスティックであると言える。

詳細を説明する。従来のオンプレミス環境では、システムを構築する際に、将来の最大負荷を予測してサーバーやネットワーク機器といった物理的なリソースを事前に導入する必要があった。これは、たとえ通常時にはリソースの大部分がアイドル状態であっても、一時的なピーク時にシステムが停止しないように、常に余裕を持った構成にしなければならないためだ。しかし、この方法では、ピーク時以外のリソースが無駄になり、設備投資や運用コストが高くなるという問題があった。

現代のWebサービスやアプリケーションは、アクセス量が予測困難なほど大きく変動することが珍しくない。例えば、セール期間中、テレビCM放送後、あるいは特定のイベント開催時など、突発的にアクセスが集中し、通常の何倍もの負荷がかかることがある。このような状況において、あらかじめ固定されたリソースでは、アクセス集中時に処理が遅延したり、最悪の場合システムがダウンしたりする可能性が高まる。エラスティックなシステムは、このような課題を解決するために不可欠な概念である。

エラスティックなシステムは、クラウドコンピューティングサービスを利用することで実現されるのが一般的だ。クラウドプロバイダは、膨大なコンピューターリソースを仮想化技術を用いて提供しており、ユーザーは必要な時に必要なだけのリソースを利用し、その利用量に応じて料金を支払う従量課金モデルが主流である。このクラウド環境におけるエラスティックの核となる機能の一つが「オートスケーリング」である。オートスケーリングは、システムへの負荷状況を継続的に監視し、設定された閾値(しきいち)に基づいて、自動的にサーバーインスタンス(仮想サーバー)を増やしたり減らしたりする機能だ。例えば、CPU使用率が一定期間80%を超えたらインスタンスを1台追加し、逆に20%を下回ったら1台削除するといった設定が可能である。

オートスケーリングと密接に関連するのが「ロードバランシング」である。負荷が増大して複数のインスタンスが起動した場合、ユーザーからのアクセスをこれらのインスタンスに均等に分散させる必要がある。ロードバランサは、この役割を担い、システム全体のパフォーマンスを維持し、特定のインスタンスに負荷が集中するのを防ぐ。これにより、ユーザーは安定したサービスを享受でき、システム管理者は運用の手間を削減できる。

エラスティックなシステムの導入は、多くのメリットをもたらす。まず、コスト効率が大幅に向上する。必要な時に必要なだけのリソースを利用するため、リソースの無駄がなくなり、固定費ではなく変動費としてITコストを最適化できる。次に、システムの可用性(安定稼働性)と耐障害性が向上する。負荷集中によるシステムダウンのリスクが減少し、一部のインスタンスに障害が発生しても、他のインスタンスが処理を引き継ぐことでサービス継続が可能となる。また、運用負荷の軽減も大きな利点だ。リソースの増減を自動化することで、システム管理者が手動でサーバーの増強や削減を行う必要がなくなり、より戦略的な業務に集中できる。さらに、ビジネスの変化への迅速な対応が可能になる。急な需要の増加や新しいサービスの展開にも、ITインフラが柔軟に対応できるため、ビジネスチャンスを逃さない。

一方で、エラスティックなシステムの導入には注意点も存在する。オートスケーリングの設定が不適切であると、リソースが過剰に増えすぎて予期せぬ高額な料金が発生したり、逆にリソース不足でパフォーマンスが低下したりする可能性がある。また、エラスティックな環境に適したアプリケーション設計が求められる。例えば、各インスタンスが独立して動作できるように、セッション情報などを共有しない「ステートレス」なアプリケーション設計が望ましい。データベースのような永続的な状態を持つリソースは、エラスティックな伸縮とは異なる管理が必要となる場合が多い。

このように、エラスティックは、現代の変動するビジネス環境において、ITシステムが常に最適なリソースで動作し、安定したサービスを提供し続けるための重要な特性であり、クラウドコンピューティングによってその真価が発揮されている。システムエンジニアを目指す者にとって、この概念とその実現方法を理解することは、これからのITインフラを設計・運用する上で不可欠な知識となる。

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