【ITニュース解説】Screw the money — Anthropic’s $1.5B copyright settlement sucks for writers

2025年09月06日に「TechCrunch」が公開したITニュース「Screw the money — Anthropic’s $1.5B copyright settlement sucks for writers」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

AI企業Anthropicは、書籍を違法にダウンロードした著作権侵害で15億ドルの和解金を支払うことで合意した。これはAIへの学習が問題なのではなく、コンテンツを正規に購入しなかったことが原因だ。ただし、この和解金は作家に直接渡されない。

ITニュース解説

AI技術の急速な進化は、私たちの生活を大きく変えようとしている。特に、大量のテキストデータを学習して人間のような自然な文章を生成する大規模言語モデル(LLM)は、多くの可能性を秘めている。しかし、この画期的な技術の裏側には、常にデータの出所や利用方法に関する法的な問題、特に著作権の問題が潜んでいる。

最近、このようなAI開発における著作権問題の一つとして、Anthropic(アンソロピック)という主要なAI開発企業が15億ドルという巨額の和解金に合意したというニュースが報じられた。この金額は日本円で2000億円以上に相当し、企業にとってどれほど大きなインパクトを与えるか想像できるだろう。このニュースは、AI開発に携わるシステムエンジニアを目指す皆さんにとって、技術的なスキルだけでなく、法的・倫理的な側面がいかに重要であるかを教えてくれる良い事例だ。

今回の和解合意は、Anthropicが開発するAIモデルの学習データとして、書籍を不法にダウンロードして利用したことに対するものだ。ここが非常に重要なポイントである。多くの人は、AIが著作物を学習すること自体が問題視され、それに対する補償金だと誤解するかもしれない。しかし、そうではない。この15億ドルの和解金は、Anthropicが書籍のデータを「不法に」取得した、つまり、正当な手続きを踏まずに無許可でダウンロードしたという、明確な著作権侵害行為に対して支払われるものなのだ。

通常、AIモデルを開発する際には、膨大な量のテキストデータが必要となる。これらのデータには、著作権で保護された書籍や記事などが含まれることが多い。企業がこれらの著作物を利用する際には、出版社や著作者からライセンスを取得したり、適切な対価を支払ってデータを購入したりするなど、法的に定められた手続きを踏む必要がある。これは、ソフトウェアを開発する際に、商用利用が許可されていないオープンソースライブラリを誤って使ってしまうと問題になるのと似ている。正規のルートでデータを取得することは、著作権法という基本的なルールを守る上で不可欠だ。

Anthropicが今回問題になったのは、正規の購入ルートではなく、許可されていない方法で書籍データを手に入れたことにある。これは、たとえその書籍がAI学習に非常に有用であったとしても、その取得方法自体が違法であったということを意味する。企業活動において、このようなコンプライアンス違反は、今回のように巨額の和解金という形で、企業に甚大な経済的打撃を与えるだけでなく、社会的な信用失墜にもつながる。システム開発において、使用するデータやコンポーネントのライセンス、そして著作権を軽視することは、プロジェクト全体を危機に陥れる可能性があると理解しておくべきだ。

この和解金が作家にとって「最悪」だと言われる背景には、今回の問題がAIによる著作物の「利用」そのものではなく、著作物の「不法な取得」という側面にあるためだ。AIが学習のために著作物を利用すること自体の適法性や、それに対する適切な報酬のあり方については、まだ世界中で議論が続いている。多くの作家は、自身の作品がAIの学習に使われることに対して、適切な対価が支払われるべきだと考えている。しかし、今回の和解金は、あくまで「不法ダウンロード」という行為に対する罰金的な意味合いが強く、作家がAIによる著作物利用に対する正当な対価を受け取れるようになるという状況には直結しない。つまり、AI時代における作家の著作権問題の根本的な解決には至っていない、というのが作家側の見方なのだ。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このニュースは非常に示唆に富んでいる。AI開発に限らず、どのようなシステムを構築するにしても、そのシステムが扱うデータや情報、そして利用する技術が、法的に問題ないか、倫理的に適切かという視点を持つことが極めて重要だ。安易にデータを取得したり、著作権を無視した開発を進めたりすることは、最終的にプロジェクトの失敗や企業の信用失墜につながりかねない。技術を追求するだけでなく、その技術が社会の中でどのように位置づけられ、どのような責任を伴うのかを理解することは、これからのシステムエンジニアにとって不可欠なスキルとなるだろう。データソースの選定から取得、利用、そして廃棄に至るまで、常に法的・倫理的な観点から慎重に検討し、適切なプロセスを踏むことの重要性を、このAnthropicの事例は強く物語っている。