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【ITニュース解説】Apple has a private CSS property to add Liquid Glass effects to web content

2025年09月15日に「Hacker News」が公開したITニュース「Apple has a private CSS property to add Liquid Glass effects to web content」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

AppleがWebコンテンツに「リキッドグラス」のような特殊な視覚効果を加えるための、独自のCSSプロパティを持っていることが分かった。これはSafariなどのブラウザで、標準のCSSでは実現できない表現を可能にする。

ITニュース解説

Webサイトの見た目、つまりデザインを形作る上で非常に重要な役割を果たすのがCSS(Cascading Style Sheets)である。CSSはHTMLで記述されたWebページの内容に、色や形、配置、アニメーションといった様々な装飾を施し、ユーザーが快適に、そして美しく情報を利用できるようなインターフェースを作り出すための言語だ。ブラウザと呼ばれるソフトウェアがWebページを表示する際、このCSSの指示に従って見た目をレンダリングしている。

今回注目するニュースは、AppleがSafariブラウザで独自に実装している「-webkit-liquid-glass」というプライベートCSSプロパティに関するものである。これはWebコンテンツに「リキッドグラスエフェクト」と呼ばれる独特な視覚効果を追加するためのもので、Webデザインに新たな可能性をもたらす興味深い技術だ。

では、具体的に「リキッドグラスエフェクト」とはどのような効果なのだろうか。これを理解する最も身近な例は、iPhoneやiPadのiOSで使われているコントロールセンターや通知センターを想像すると良いだろう。これらの画面は、その背後にあるコンテンツがぼんやりと透けて見え、まるで磨りガラス越しに見ているかのような、あるいは液体を通して見ているかのような、非常に洗練された半透明のぼかし効果が特徴だ。この効果は、単なる透明度を調整するだけでなく、背景の要素をぼかすことで、手前の要素が浮き上がって見えるような奥行きと高級感を演出する。Webサイト上でこのような視覚効果を実現できるのが、「-webkit-liquid-glass」の機能だ。

ここで「プライベートCSSプロパティ」という言葉が出てきたが、これは標準的なCSSプロパティとは異なる。Web技術の標準化はW3C(World Wide Web Consortium)という国際的な団体によって進められており、そこで合意された仕様が「標準CSS」としてすべてのブラウザで共通して利用できることを目指している。しかし、新しいWeb技術やデザインが生まれる際、すぐに標準化されるわけではない。そこでブラウザの開発元、つまり「ベンダー」が、実験的にあるいは先行して独自の機能を実装することがある。その際に使われるのが「ベンダープレフィックス」と呼ばれる接頭辞で、AppleのSafariやGoogle Chromeでは-webkit-、Mozilla Firefoxでは-moz-、Microsoft Edge(旧版)では-ms-といった形でプロパティ名の頭につく。今回の場合の-webkit-liquid-glassも、-webkit-という接頭辞から、Safari(WebKitエンジンを使用しているブラウザ)専用の機能であることがわかる。

なぜこのようなプライベートプロパティが存在するのか。その理由はいくつかある。一つは、新しい機能やデザインをいち早く試行し、市場の反応を見るためだ。標準化のプロセスは時間を要するため、その間に独自の機能を提供することで、ユーザー体験の向上を図ることができる。また、新しい技術が実際にどのように使われるか、どのような問題が発生するかを検証するための実験的な位置づけでもある。もしその機能が広く利用され、有用性が認められれば、後に標準化の議論を経て、ベンダープレフィックスなしの標準プロパティとして採用される可能性も出てくる。

Appleが「-webkit-liquid-glass」を実装した背景には、彼らの製品におけるデザイン哲学が深く関わっている。AppleはUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)を非常に重視しており、その製品群全体で一貫した洗練されたデザインを提供することを目指している。iOSデバイスで実現しているリキッドグラスのような効果をWeb上でも実現したいというニーズから、この独自プロパティが生まれたと考えられる。技術的な側面では、このような複雑な視覚効果を滑らかに、そして高速に描画するためには、デバイスのグラフィックス処理ユニット(GPU)を効率的に利用する必要がある。Appleは低レベルのグラフィックスAPIであるMetalなどを活用し、ハードウェアとソフトウェアを統合した最適化を行っているため、このような高度なエフェクトもスムーズに実現できるのだろう。

Webサイトを開発するエンジニアの視点から見ると、「-webkit-liquid-glass」の利用にはメリットとデメリットがある。メリットとしては、Safariユーザーに対してはApple製品と統一感のある、非常に洗練されたUIを提供できる点だ。しかしデメリットとしては、このプロパティがSafari専用であるため、FirefoxやChromeといった他のブラウザでは意図した効果が得られない、という互換性の問題が挙げられる。つまり、すべてのユーザーに同じ体験を提供したい場合は、このプロパティに頼るべきではない。

Web標準の世界では、このような背景のぼかし効果を実現するための標準プロパティとしてbackdrop-filterがすでに存在する。backdrop-filterは、要素の背後にあるコンテンツにフィルター効果(ぼかし、彩度、コントラストなど)を適用するもので、多くの主要ブラウザでサポートされている。Appleが「-webkit-liquid-glass」を導入した時期と、backdrop-filterの標準化およびブラウザサポートの状況を考えると、Appleは先行して独自の表現力を追求したのかもしれない。今後はbackdrop-filterのような標準プロパティを優先して使用することが、より多くのユーザーに互換性のあるWeb体験を提供する上で重要となるだろう。

このように、Web技術は常に進化を続けており、ブラウザベンダーごとの独自実装が標準化への道を切り開くこともある。システムエンジニアを目指す上で、このような技術の動向を理解することは非常に重要だ。標準技術と独自技術、そしてその背景にある意図や技術的な詳細を知ることで、より堅牢で、かつ魅力的なWebアプリケーションを設計・開発するための視野が広がる。

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