【ITニュース解説】Berg's Card Sorting Task

ベルク・カード分類課題（BCST）は、認知機能、特に実行機能を評価するために設計された神経心理学的検査。実行機能とは、目標達成のために思考や行動を制御・調整する一連の認知プロセスのこと。計画、問題解決、ワーキングメモリ、注意の切り替え、衝動抑制などが含まれる。

BCSTは、被験者に対し、複数のカード（通常は128枚）を、カードに描かれた図形の属性（色、形、数）に基づいて分類するように指示する。被験者は事前に分類ルールを知らされず、試行錯誤を通してルールを発見する必要がある。

検査は以下の流れで進む。まず、4枚の刺激カードが提示され、それぞれのカードが分類の基準となる属性を表している（例えば、赤、三角形、2つ、星）。次に、被験者には1枚ずつ反応カードが提示され、いずれかの刺激カードに一致するように分類するように指示される。

検査者は、被験者の分類に基づいて正誤をフィードバックする。重要なのは、検査者は事前に分類ルールを決定しているものの、被験者にはそれを明示しない点。被験者はフィードバックを受けながら、どの属性が分類ルールとして用いられているのかを推測し、カードを分類していく。

ある程度の試行錯誤の後、被験者が一定回数連続して正しく分類できた場合（例えば、10回連続）、検査者は予告なしに分類ルールを変更する。被験者は新しいルールに適応する必要があり、ここで実行機能の重要な側面である「注意の切り替え」や「ルールの学習」が評価される。

BCSTの主な評価項目は以下の通り。

• カテゴリ達成数: 設定された分類ルールを正しく学習し、一定回数連続して正しく分類できた回数。これは、問題解決能力やルールの学習能力を反映する。
• 試行錯誤数: 正しい分類ルールを学習するために必要とした試行回数。試行錯誤数が少ないほど、効率的にルールを学習できていることを示す。
• 保続性エラー: 一度学習したルールから抜け出せず、新しいルールに適応できない場合に発生するエラー。例えば、ルールが変更された後も、以前のルールに基づいてカードを分類してしまう場合。保続性エラーは、認知的な柔軟性の欠如や、固執した思考パターンを示す可能性がある。
• 非保続性エラー: 保続性エラー以外のエラー。注意散漫や理解不足など、様々な要因によって発生する。
• パーセンテージエラー: 全試行数に対するエラーの割合。全体的なパフォーマンスの指標となる。

BCSTは、実行機能障害を伴う様々な神経疾患や精神疾患の評価に用いられる。例えば、前頭葉損傷、注意欠陥多動性障害（ADHD）、統合失調症、パーキンソン病などの患者において、BCSTのパフォーマンス低下が認められることがある。

システムエンジニアを目指す上で、BCSTのような認知機能検査について知っておくことは、直接的なスキルアップには繋がらないかもしれない。しかし、人間の認知特性や認知機能障害について理解を深めることで、よりユーザーフレンドリーなシステム設計や、障害を持つ人々を支援するテクノロジーの開発に貢献できる可能性が広がる。

例えば、BCSTの結果から、ユーザーインターフェースの設計において、情報過多を避け、明確なフィードバックを提供することの重要性を理解できる。また、注意散漫なユーザーを考慮し、集中力を維持しやすいようなデザインを検討することも可能になる。

さらに、高齢者や認知機能が低下した人々が利用しやすいように、シンプルで直感的なインターフェースを設計したり、エラーが発生した場合に適切なサポートを提供する機能を実装したりすることも考えられる。

BCSTは、直接的にプログラミングスキルやインフラ構築の知識を教えてくれるわけではないが、システムエンジニアとして、より良いシステムを開発するために、人間の認知特性について学ぶことの重要性を示唆している。ユーザーの視点に立ち、認知的な負担を軽減するようなシステムを設計することで、より多くの人々がテクノロジーの恩恵を受けられる社会の実現に貢献できる。