【ITニュース解説】Your UI is Not Part of Security: The Reality of BOLA

2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Your UI is Not Part of Security: The Reality of BOLA」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

UIの表示制限だけではセキュリティ対策は不十分。攻撃者はUIを無視し、APIリクエストのID等を書き換えて他人の情報にアクセスする。この脆弱性「BOLA」を防ぐには、UIではなくバックエンド側でデータへのアクセス権限を必ずチェックする必要がある。

ITニュース解説

Webアプリケーションやサービスを開発する際、セキュリティは最も重要な要素の一つである。初心者が陥りやすい誤解として、「ユーザーが操作する画面上で、見えないボタンやリンクを用意しなければ、その機能は実行されず安全だ」というものがある。しかし、この考え方は非常に危険であり、深刻なセキュリティ上の欠陥、すなわち脆弱性を生み出す原因となる。現代のWebアプリケーションにおける最も一般的で危険な脆弱性の一つに「BOLA(Broken Object Level Authorization)」があり、この脆弱性はまさに、セキュリティを画面上の制御のみに依存するという誤解から生じる。

BOLAとは、「オブジェクトレベルの認可の不備」を意味する。ここで言う「オブジェクト」とは、アプリケーションが扱う個々のデータ、例えば特定のユーザー情報、SNSの投稿、オンラインショップの商品データなどを指す。「認可」とは、あるユーザーが特定のオブジェクトに対して、閲覧、編集、削除といった操作を行う権限を持っているかどうかを検証するプロセスである。つまりBOLAは、アプリケーションがこの認可の検証を怠った結果、ユーザーが本来アクセス権限を持たない他人のデータなどにアクセスできてしまう脆弱性のことだ。

この脆弱性がなぜ発生するのかを理解するには、Webアプリケーションの基本的な仕組みであるUI(ユーザーインターフェース)とAPI(Application Programming Interface)の関係を知る必要がある。UIとは、ユーザーが実際に目にして操作する画面のことである。一方、APIは、その画面の裏側で動作し、UIからの指示(リクエスト)に応じてデータの取得や更新といった処理を行うプログラムの窓口である。例えば、ユーザーが「マイページ」ボタンをクリックすると、UIは「このユーザーの情報をください」というリクエストをAPIに送信する。APIはリクエストを受け取り、データベースから該当ユーザーの情報を探し出してUIに返し、画面にプロフィールが表示される、という流れだ。

開発者がUIの設計のみに注目し、「自分のプロフィールページには、他人のプロフィール情報を閲覧するためのボタンは存在しない」という理由で安全だと判断してしまうことがある。しかし、攻撃者は正規のUIを全く使用しない。彼らは、Burp Suiteやcurlといったツールを使い、アプリケーションのAPIに対して直接リクエストを送信する。例えば、ログイン中のユーザーIDが「123」である場合、プロフィール情報を取得するリクエストは「/api/users/123」という形式かもしれない。攻撃者はこのリクエストのID部分を「124」のように手動で書き換え、「/api/users/124」というリクエストを直接APIに送信する。このとき、APIの処理、すなわちバックエンドのプログラムが、「このリクエストを送信してきたユーザーは、本当にユーザーID 124の情報を閲覧する権限を持っているのか?」という認可チェックを実装していなければ、攻撃者の要求に応じて他人の個人情報を渡してしまう。これがBOLA脆弱性による情報漏洩の典型的な手口である。UIはあくまでAPIを利用する一手段に過ぎず、セキュリティを保証する防壁にはなり得ない。

BOLAがもたらすビジネス上の影響は計り知れない。個人情報や金融情報といった機密データが漏洩するだけでなく、他人のアカウントを不正に操作して商品を購入したり、送金したりするアカウント乗っ取りにもつながる。このような事態は、GDPR(EU一般データ保護規則)やHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)といった国内外の法規制に違反する可能性があり、企業に多額の罰金が科されるリスクもある。そして何より、一度失った顧客からの信頼を回復するのは極めて困難であり、企業の評判に深刻なダメージを与える。攻撃が比較的容易であるため、BOLAはセキュリティ専門家や攻撃者がシステムの弱点を探す際に、真っ先に試す攻撃手法の一つとなっている。

このような深刻な脆弱性を防ぐためには、セキュリティ対策の主戦場はUIではなく、APIを中心としたバックエンドにあるという事実を認識することが不可欠である。まず、すべてのAPIリクエストに対して、その操作を実行しようとしているユーザーが、対象となるデータへの適切なアクセス権限を持っているかを必ずサーバーサイドで検証しなければならない。また、「最小権限の原則」を適用し、ユーザーには業務上必要な最低限の権限のみを与えるべきである。アクセス権限を検証するロジックは、コードの様々な場所に散在させず、一箇所に集約して管理することで、実装漏れや矛盾を防ぐことができる。開発時のテストにおいても、画面を操作するだけでなく、ツールを使ってAPIに直接不正なリクエストを送信し、認可制御が正しく機能するかを検証する工程が必須となる。

結論として、堅牢なシステムを構築するためには、セキュリティはユーザーの目に見える部分で完結するものではないと理解することが極めて重要である。本当のセキュリティは、システムの裏側、すなわちAPIのロジックと、そこでの一貫した認可制御によって担保される。攻撃者は、善良なユーザーのようにボタンをクリックするのではなく、リクエストそのものを書き換えてシステムの隙を突いてくる。この攻撃者の視点を常に持ち、すべてのリクエストを疑い、その正当性をバックエンドで検証することこそが、安全なアプリケーション開発の基本となる。

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