【ITニュース解説】Latches in C++ 20 concurrency - just like the CountdownLatch of Java concurrency package...

2025年09月05日に「Dev.to」が公開したITニュース「Latches in C++ 20 concurrency - just like the CountdownLatch of Java concurrency package...」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

C++20でマルチスレッドの同期機能「latch」が導入された。これは、複数のスレッドが特定の処理を完了するまで、他のスレッドの進行を待機させる。カウントダウンカウンターとして働き、指定回数の処理が完了してゼロになると、待機中のスレッドを解放する。JavaのCountdownLatchに似ている。

ITニュース解説

マルチスレッドプログラミングは、現代のソフトウェア開発において非常に重要な技術であるが、同時に多くの課題を抱えている。一つのプログラムの中で複数の処理(スレッドと呼ぶ)を同時に動かすことで、処理速度の向上やユーザーインターフェースの応答性向上といったメリットが得られる。しかし、これらのスレッドがどのような順序で開始され、いつ終了するかは、オペレーティングシステム(OS)のスケジューリングアルゴリズムに依存するため、開発者が完全に制御することは難しい。この予測不可能性は、プログラムのテストやデバッグを困難にし、「競合状態(レースコンディション)」や「デッドロック」といった、複数のスレッドが資源を巡って衝突したり、互いに相手の処理を待ち続けて停止したりする問題を引き起こす原因となる。

このようなマルチスレッドプログラミングの困難さを解決するために、「スレッド同期」と呼ばれる技術が用いられる。スレッド同期は、複数のスレッドが安全に協調して動作するための仕組みを提供する。その中でも、「ラッチ(Latch)」は特定のタスクが完了するのを待つための強力なツールである。以前はJava言語の並行処理パッケージに「CountdownLatch」という同様の機能が存在したが、C++言語には直接対応するものがなかった。しかし、C++20規格で新たに導入されたstd::latchによって、このギャップが埋められたことは、C++プログラマーにとって大きな進歩である。

std::latchは、C++20で導入された「同期プリミティブ」の一つである。同期プリミティブとは、複数のスレッドが安全に協調動作するために用いられる基本的な構成要素のことだ。std::latchの主な役割は、一つまたは複数のスレッドが、特定の数の操作が完了するまで待機することを可能にすることである。これはちょうど、指定された数値からカウントダウンを始め、その数値がゼロになるまで他のスレッドの進行をブロックするカウンタのような働きをする。カウンタがゼロになると、待機していたスレッドは解放され、次の処理に進むことができる。

具体的な使用例を通してstd::latchの動作を見てみよう。記事では、学生がそれぞれ与えられたタスクをこなし、先生がその全員の完了を待つというシナリオがコードで示されている。このシナリオでは、3人の学生がいて、それぞれが独立したスレッドとしてタスクを実行する。先生の役割を担うメインの処理は、これら3人の学生全員がタスクを終えるのを待つ必要がある。

まず、Studentというクラスが定義されている。このクラスは、学生の名前とタスク完了にかかる時間を持つ。重要なのは、Studentクラスのtaskメソッドである。このメソッドは、学生がタスクを開始したことを表示し、一定の時間(timeToFinish)だけ処理を一時停止することでタスクの実行をシミュレートする。タスクが完了すると、「学生がタスクを終えた」と表示され、その直後にstd::latchオブジェクトのcount_down()メソッドが呼び出される。このcount_down()メソッドの呼び出しにより、ラッチ内部のカウンタが1つ減少する。つまり、1人の学生がタスクを完了するたびに、ラッチのカウンタが減っていく仕組みである。

次に、classETCというクラスが登場する。このクラスのgiveTaskToStudentメソッドが、学生たちにタスクを与える先生の役割を果たす。このメソッド内では、threadオブジェクトを使って3人の学生(Ridit、Ishan、Rajdeep)それぞれに新しいスレッドを割り当て、それぞれの学生がStudent::taskメソッドを独立して実行するように開始する。各スレッドは、先ほど説明したStudent::taskメソッドを実行する際に、共通のstd::latchオブジェクトを引数として受け取る。これにより、すべての学生スレッドが同じラッチカウンタを共有し、各自のタスク完了時にそのカウンタを減らすことができる。

学生スレッドを起動した後、先生は「すべての学生がタスクを終えるのを待っている」と表示する。その直後に、riditT.join(); ishanT.join(); rajdeepT.join();というコードが記述されている。これは、個々の学生スレッドが完全に終了するまでメインの処理が待機するための命令である。join()は、指定されたスレッドが完了するまで現在のスレッド(ここでは先生の処理)の実行をブロックする。この例では、全ての学生スレッドがタスクを完了し、各自のcount_down()を呼び終えてから、それらのスレッドの終了を待っている。

そして、学生スレッドのjoin()処理がすべて完了した後、l.wait();というコードが呼び出される。このl.wait()メソッドが、std::latchの最も重要な機能の一つである。これは、ラッチの内部カウンタがゼロになるまで、現在のスレッド(先生の処理)の実行を停止させる。このシナリオでは、ラッチは初期値3で設定されている。3人の学生がそれぞれタスクを完了し、count_down()を3回呼び出すことで、ラッチのカウンタは3から0になる。カウンタがゼロになると、l.wait()で待機していた先生の処理はブロックが解除され、次の行である「すべての学生がタスクを提出した...先生は教室を去る」というメッセージが表示され、処理が続行される。

main関数では、プログラムのエントリーポイントとして機能する。まず、C++のバージョン情報を表示する部分があるが、これは本質的な処理とは異なる。重要なのは、latch l(3);という行である。ここでstd::latchオブジェクトが作成され、その初期カウンタ値が3に設定される。この数値は、「いくつの操作が完了するのを待つか」ということを意味する。今回の例では、3人の学生がタスクを完了するのを待つため、初期値は3になっている。その後、classETCオブジェクトが作成され、そのgiveTaskToStudentメソッドに、先ほど初期化したラッチオブジェクトが渡される。これにより、学生たちと先生の同期処理が実行されるわけである。

このコード全体を通して、std::latchがどのように機能するかが明確になる。各学生スレッドは独立してタスクを実行し、タスク完了時にラッチのカウンタを減らす。先生の処理は、ラッチのカウンタがゼロになるのをl.wait()で待ち続ける。カウンタがゼロになる、つまり全ての学生がタスクを完了した時点で、先生の処理はブロックが解除され、次のステップに進むことができる。このように、std::latchは複数のタスクの完了を待機し、それら全てが完了した時点で同期解除を行う、シンプルながら強力なスレッド同期メカニズムを提供している。JavaのCountdownLatchと同様に、これは並行処理において特定のイベントの発生を待つ場合に非常に有効なツールとなるだろう。

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