【ITニュース解説】社内システム開発で「デザイン思考」を実践してみた
2025年09月10日に「Qiita」が公開したITニュース「社内システム開発で「デザイン思考」を実践してみた」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
「使われない社内システム」の課題に対し、「デザイン思考」を導入して開発を実践した事例を紹介。ユーザー視点で本当に役立つシステムを作るため、どのようなアプローチを取ったのかがわかる。
ITニュース解説
社内システム開発において、「なぜ作ったのか分からない」「作ったはいいけど、誰も使っていない」といった課題を抱える企業は少なくない。特に日本の伝統的な大企業(JTC)では、このような状況が頻繁に発生すると言われる。これは、システムを開発する側がユーザーの真のニーズや業務上の課題を十分に理解せず、開発を進めてしまうことが原因であることが多い。結果として、多大な時間とコストを投じて完成させたシステムが、利用者にとって価値のないものとなり、ほとんど使われないまま放置される事態を招く。
このような問題を解決し、利用者にとって本当に価値があり、業務改善に繋がるシステムを開発するための有効なアプローチとして、「デザイン思考」が注目されている。デザイン思考とは、デザイナーが課題解決のために用いる思考プロセスをビジネスに応用したもので、ユーザー中心のアプローチで課題を発見し、創造的な解決策を生み出すための方法論である。これは、システム開発の現場においても非常に強力な武器となり得る。
デザイン思考は、主に五つのフェーズを反復しながら進められる。まず一つ目は「共感」のフェーズだ。システム開発において最も重要なのは、そのシステムを使う人々、つまりユーザーが誰で、どのような課題やニーズを抱えているのかを深く理解することである。この段階では、単に意見を聞くだけでなく、ユーザーへの直接インタビューを通じて彼らの声に耳を傾けたり、彼らが実際に業務を行う様子を観察したりすることで、言葉にならない潜在的な不満や改善点を洗い出す。例えば、「この業務プロセスは複雑で時間がかかる」「必要な情報が散らばっていて見つけにくい」といった具体的な「痛み」を、ユーザーの立場に立って肌で感じ取ることが求められる。
次に二つ目のフェーズは「問題定義」である。共感フェーズで集めた膨大な情報の中から、ユーザーが抱える本質的な課題を明確にする段階だ。漠然とした「システムが使いにくい」といった意見をそのまま受け入れるのではなく、「なぜ使いにくいのか」「具体的にどの点が不便なのか」を深掘りし、「情報が部門横断的に共有されず、意思決定が遅れる原因となっている」「データ入力の手間が多く、ヒューマンエラーが発生しやすい」といった、具体的な問題として言語化する。この問題定義が的確でなければ、その後の解決策も的外れになってしまうため、極めて重要なステップと言える。
三つ目のフェーズは「アイデア創出」である。定義された問題に対して、多角的な視点から解決策を検討する段階だ。ここでは、ブレインストーミングなどの手法を用いて、実現可能性にとらわれずに自由な発想で多くのアイデアを出し合うことが推奨される。例えば、「AIを活用した情報レコメンド機能」「シンプルな操作でデータ入力が完結するインターフェース」など、これまでの常識にとらわれない斬新な解決策を模索する。量と多様性を重視することで、より革新的なアイデアが生まれる土壌を作り出す。
四つ目のフェーズは「プロトタイプ作成」だ。アイデア創出フェーズで生まれた複数の解決策の中から有望なものを選択し、実際に形にしてみる段階である。ここで作成するプロトタイプは、完成されたシステムである必要はない。紙に手書きで画面のイメージを描いたり、PowerPointやFigmaといったデザインツールを使って簡易的な画面遷移を再現したりするだけで十分だ。重要なのは、最小限の労力でアイデアを具現化し、ユーザーが実際に触れてその体験をシミュレーションできる形にすることである。これにより、開発側もユーザー側も、アイデアが実際にどのように機能するかを具体的にイメージしやすくなる。
最後のフェーズは「テスト」である。作成したプロトタイプを実際のユーザーに試してもらい、その使用感や改善点についてのフィードバックを収集する。ユーザーがプロトタイプを操作する様子を観察し、どのような点に迷い、どのような点を快適だと感じるのかを直接聞き取る。このテストで得られた「この機能は使いにくい」「もっとこうすれば便利になる」といった率直な意見は、プロトタイプの改善に直結する貴重な情報となる。デザイン思考は、このテストフェーズで得られたフィードバックを元に、再び共感や問題定義、アイデア創出のフェーズに戻ることを繰り返す。この反復的なプロセスを通じて、システムの精度を継続的に高め、ユーザーにとって最適な形へと進化させていくのである。
実際に社内向けの情報共有ツールのリニューアルプロジェクトにデザイン思考を適用した事例では、まず利用者のインタビューや行動観察を通じて、既存ツールの問題点として「情報が部門ごとに散らばり、必要な情報が見つけにくい」という本質的な課題を発見した。この課題解決に向けて、チームで多様なアイデアを出し合い、Figmaを用いて具体的な画面イメージのプロトタイプを迅速に作成した。そのプロトタイプを実際のユーザーに試してもらい、「検索機能の改善」や「よく使う情報へのクイックアクセス機能」といった具体的なフィードバックを収集し、プロトタイプを繰り返し改善していった。
このデザイン思考を取り入れた結果、ユーザーの本当のニーズに合致したシステムが開発され、利用者満足度が大幅に向上した。また、開発の初期段階でユーザーの意見を継続的に取り入れたことで、大規模な手戻りが減少し、開発期間の短縮やコスト削減にも繋がった。さらに、ユーザーを巻き込みながら開発を進めるプロセスは、開発チームと業務部門とのコミュニケーションを活発化させ、部門間の連携強化という副次的な効果も生み出した。
システムエンジニアを目指す上で、技術的な知識やプログラミングスキルはもちろん重要である。しかし、それ以上に、ユーザーの視点に徹底的に立ち、彼らが抱える真の課題を理解し、その解決に向けて創造的にアプローチする「デザイン思考」の考え方は、これからの時代に求められる非常に重要なスキルとなるだろう。使われないシステムを作るのではなく、人々に真の価値を提供し、業務をより良くしていくシステム開発を実現するために、デザイン思考は欠かせないアプローチなのである。