【ITニュース解説】増加傾向から一転、被害額が4割弱減 - クレカ不正利用
2025年09月11日に「セキュリティNEXT」が公開したITニュース「増加傾向から一転、被害額が4割弱減 - クレカ不正利用」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
増加傾向にあったクレジットカードの不正利用被害額が、2025年第2四半期には前四半期から一転し、約4割減少した。これは直近1年間で最も低い水準となっている。
ITニュース解説
クレジットカードの不正利用被害額が大幅に減少したというニュースは、セキュリティ対策の進展を象徴する重要な出来事である。これまで増加の一途を辿っていた不正利用被害が、2025年第2四半期において直前の四半期から約4割も減少し、過去1年間で最も低い水準を記録したという事実は、システムエンジニアを目指す者にとっても注目すべき動向と言える。この背景には、多岐にわたる技術的・組織的対策の強化があり、特に本人認証技術や不正検知システムの進化が大きく寄与している。
クレジットカードの不正利用とは、カードの持ち主の意思に反して、第三者がカード情報を使って商品を購入したり、サービスを利用したりする行為の総称である。主な手口としては、カード番号や有効期限、セキュリティコードといった情報を盗み取るフィッシング詐欺、スキミング、マルウェア感染などがある。ECサイトの普及に伴い、インターネット上でのカード決済が増えたことで、カード情報が直接手元になくても不正利用が可能になったため、被害は拡大傾向にあった。詐欺師は巧妙な手口で偽のウェブサイトを作り、利用者をだまして情報を入力させたり、セキュリティの甘いサイトからデータベースを攻撃して情報を抜き取ったりする。また、ダークウェブと呼ばれる場所で盗んだカード情報が売買されることも、不正利用を助長する一因となっていた。
しかし、今回の減少は、こうした状況に対する強力な反撃の結果と見ることができる。その最も大きな要因の一つとして挙げられるのが、本人認証技術「3Dセキュア2.0」、正式名称「EMV 3Dセキュア」の普及である。これは、これまでの固定パスワード方式の3Dセキュアを進化させたもので、より柔軟かつ高度な認証を実現している。従来の3Dセキュアは、決済時に事前に設定したパスワードを入力させる方式だったが、この方法はパスワードを覚える手間や、万が一パスワードが漏洩した場合のリスクという課題を抱えていた。
EMV 3Dセキュアでは、カード会社や決済代行会社が、購入者のデバイス情報、IPアドレス、過去の購入履歴、決済金額、利用店舗などの多岐にわたる情報をリアルタイムで分析する。これにより、不正利用の可能性が高いと判断された場合にのみ、追加の認証を要求する仕組みとなっている。例えば、スマートフォンの生体認証(指紋認証や顔認証)や、ワンタイムパスワード、アプリからの承認といった、よりセキュアで利便性の高い方法で本人確認が行われる。システム側でリスクを自動的に評価し、通常のリスクが低い取引では認証なしでスムーズに決済が完了する一方で、リスクが高いと判断された場合にのみ追加認証を行うため、利便性を損なわずにセキュリティを向上させることが可能になった。この裏側では、複雑なルールエンジンやAI、機械学習の技術が使われており、膨大なデータを瞬時に分析してリスクスコアを算出している。システムエンジニアは、このような高度な認証システムの設計、開発、運用において中心的な役割を担っている。
もう一つの重要な要因は、不正検知システムの飛躍的な進化である。これは、AI(人工知能)や機械学習といった最先端の技術を駆使し、異常な取引パターンをリアルタイムで識別するシステムである。例えば、普段は数千円程度の買い物しかしない利用者が、突然数十万円の高額商品を、しかも海外のIPアドレスから購入しようとした場合など、通常の行動パターンから逸脱した取引をシステムが自動で検知し、不正の可能性を警告する。以前は人間が過去のデータに基づいてルールを設定していたが、不正の手口は日々進化するため、対応が追いつかない側面があった。しかし、AIは大量の取引データを学習し、不正の特徴を自律的に発見し、常にその精度を向上させることができる。これにより、これまでにない新たな手口の不正にも迅速に対応できるようになり、水際での阻止能力が格段に向上したと言える。このようなシステムは、膨大なデータを高速に処理するための大規模なデータベース設計や、機械学習モデルの構築、運用管理といった、高度なシステムエンジニアリングのスキルが求められる分野である。
さらに、クレジットカードの発行会社、決済代行会社、そして商品やサービスを提供する加盟店が一体となってセキュリティ対策を強化している点も看過できない。各社は情報共有を密に行い、不正利用に関する最新の情報を共有することで、業界全体として対策レベルの底上げを図っている。政府や警察も、サイバー犯罪対策の強化や法整備を進め、不正利用に対する取り締まりを厳格化している。また、利用者自身のセキュリティ意識の向上も、間接的ではあるが被害減少に貢献している。二段階認証の設定、不審なメールやSMSへの警戒、定期的なパスワード変更など、個人レベルでの基本的なセキュリティ対策が浸透しつつある。
システムエンジニアを目指す者にとって、今回のニュースは、情報セキュリティがいかに社会インフラの安定に貢献しているかを具体的に示す事例である。セキュリティ技術は単にシステムを守るだけでなく、利用者の安心・安全なデジタルライフを支える基盤となっている。今回の被害減少は、3Dセキュア2.0のような認証技術や、AIを用いた不正検知システムといった、最新のテクノロジーが実際に社会問題の解決に貢献した証拠だ。システム開発において、セキュリティは後付けで考えるものではなく、設計段階から組み込むべき必須要件であることを改めて教えてくれる。
しかし、これで不正利用が完全に根絶されたわけではない。サイバー攻撃の手口は常に進化し、新たな脆弱性や技術を狙ってくる。そのため、今回の減少傾向を維持し、さらに被害を減らすためには、セキュリティ技術の研究開発、システムの継続的な改善、そして関係者間の連携強化が不可欠である。システムエンジニアは、これからもセキュリティの最前線に立ち、変化する脅威に対応するための新しい技術を学び、開発し続ける必要がある。データ分析のスキル、クラウドセキュリティの知識、そしてAI/機械学習に関する理解は、今後ますますシステムエンジニアにとって重要な要素となるだろう。このニュースは、セキュリティ分野がシステムエンジニアにとってやりがいのある、そして社会貢献度の高い領域であることを明確に示している。