【ITニュース解説】Drizzle ORM Claude Code: Modern TypeScript Development

2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Drizzle ORM Claude Code: Modern TypeScript Development」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Drizzle ORMは、TypeScriptでデータベースを安全に操作できる軽量なツールだ。SQLに似た直感的な構文で初心者も学びやすく、AIによる開発支援との相性も抜群。型安全性が高く、コンパイル時にエラーを発見し、効率的な開発を強力にサポートする。

ITニュース解説

システム開発において、データベースの操作は避けて通れない重要な要素だ。特に大規模なシステムやチームでの開発では、データベース操作の正確性や効率性がプロジェクトの成否を分けることもある。TypeScriptを使って開発する際、データベースとの連携でよく直面する課題の一つが「型安全性」だ。データベースのスキーマ(構造)とプログラムのコードの間で整合性が取れていないと、実行時に予期せぬエラーが発生し、デバッグに多くの時間がかかってしまう。また、どのデータベースツールを選ぶか、AIを活用した開発とどう組み合わせるかも、現代の開発者にとっては大きな関心事だろう。

この記事では、TypeScriptプロジェクトでのデータベース操作を、より安全かつ効率的に行うための強力なツールである「Drizzle ORM」と、AIを活用した開発ツール「Claude Code」との組み合わせに焦点を当てて解説する。

まず「ORM」という言葉から説明しよう。ORMは「Object-Relational Mapping(オブジェクト関係マッピング)」の略で、データベースのテーブル(行と列で構成されるデータの集まり)と、プログラム内で扱うオブジェクト(データとそれを操作する機能がまとまったもの)とを関連付ける技術だ。通常、データベースを操作するにはSQL(Structured Query Language)という専用の言語を使う必要がある。例えば「特定のユーザーの情報を取得する」「新しいデータを追加する」といった操作はSQL文を書いて実行する。しかし、ORMを使うと、開発者はSQLを直接書く代わりに、TypeScriptなどのプログラミング言語の構文を使ってデータベースを操作できるようになる。これは、SQLの知識がなくてもデータベースを扱えるようになるだけでなく、プログラムのオブジェクトとしてデータを扱えるため、コードの可読性や保守性が向上するメリットがある。

Drizzle ORMは、TypeScriptでの開発に最適化された、非常に軽量なORMツールだ。その最大の特徴は「TypeScriptファースト」という設計思想にある。これは、TypeScriptの持つ強力な型システムを最大限に活用し、開発者が安全にデータベース操作を行えるようにすることを目指している。

Drizzle ORMの主な利点はいくつか挙げられる。一つ目は「完全な型安全性」だ。Drizzle ORMは、データベースのスキーマ定義からTypeScriptの型定義を自動的に生成し、クエリ(データベースへの問い合わせ)を記述する際に、その型情報を使ってエラーをチェックする。例えば、存在しないカラム名を指定したり、数値型のはずのデータに文字列を代入しようとしたりすると、プログラムを実行する前、つまりコードを書いている途中の「コンパイル時」にエラーとして教えてくれる。これにより、実行時になって初めてエラーが発覚するといった問題を大幅に減らすことができ、開発者は安心してコードを書けるようになる。他のORMには、部分的にしか型チェックができないものや、生のSQL文には型安全性が適用されないものもあるが、Drizzle ORMはクエリビルダーを通じて記述されるほとんどの操作で完全な型安全性を実現している。

二つ目は「直感的なSQLライクな構文」だ。Drizzle ORMのAPIは、SQLの記述方法によく似ており、SQLの知識がある開発者であれば比較的短い学習時間で使いこなせるようになる。例えば、ユーザー情報を取得し、そのユーザーが作成した投稿の数をカウントするような複雑なクエリも、SQL文の構造を模倣した形式で記述できる。これは、他のORMが独自の記法(例えばオブジェクトのネスト構造や文字列ベースのクエリ)を用いることがあるのと対照的で、Drizzle ORMは開発者が既存のSQL知識をそのまま活かせるため、スムーズに導入しやすい。

三つ目は「軽量設計」であることだ。Drizzle ORMは余分な抽象化レイヤーが少なく、必要最低限の機能に絞られているため、実行時のオーバーヘッドが非常に小さい。これは、アプリケーションのパフォーマンス向上にも寄与する。さらに、PostgreSQL、MySQL、SQLiteといった主要な複数のデータベースに対応しているため、プロジェクトの要件に合わせてデータベースを選択できる柔軟性も持っている。

次に、AIを活用した開発ツール、特に「Claude Code」とDrizzle ORMの相性の良さについて見ていこう。AIによるコード生成は、現代の開発現場で急速に普及しているが、Drizzle ORMはその特性上、AIが効率的にコードを生成しやすいというメリットがある。

Drizzle ORMの構文はSQLに似ており、非常に「明示的」だ。AIはSQLの構造や文法について豊富な学習データを持っているため、「ユーザーの最新の投稿を10件取得するクエリを書いて」といった指示に対して、AIはDrizzle ORMの形式で、SQLの構造を反映した正確なクエリを生成しやすい。また、Drizzle ORMはクエリを構築する際に、select().from().where().join()といった形で段階的にコードを追加していくスタイルを取る。この「ステップバイステップ」なアプローチは、AIが開発者の意図を理解し、クエリを徐々に洗練させていく過程をサポートするのに非常に適している。さらに、Drizzle ORMが提供する明確な型エラーメッセージもAI開発を後押しする。AIが誤ったコードを生成した場合でも、TypeScriptのコンパイラが具体的なエラー内容を提示するため、AIはそのフィードバックを受けて効率的にコードを修正できる。

Drizzle ORMの具体的な実装例を見てみよう。まず、データベースのテーブル構造を定義する「スキーマ定義」では、pgTableという関数を使ってテーブル名とカラム(列)を記述する。例えば、ユーザーテーブルにはID、メールアドレス、名前、アクティブ状態、作成日時、更新日時といったカラムがあり、それらの型(テキスト、真偽値、タイムスタンプなど)を指定する。投稿テーブルでは、ユーザーIDを外部キーとしてユーザーテーブルのIDに参照させることで、ユーザーと投稿の関連付けを定義できる。この定義に基づいてDrizzle ORMはTypeScriptの型情報を生成し、その後のクエリ記述の型安全性を保証する。

複雑なクエリの例として、アクティブなユーザーの情報を取得し、そのユーザーが投稿した記事の総数や公開されている記事の数、最新の投稿日時などを集計するクエリがある。Drizzle ORMでは、selectfromleftJoinwheregroupByhavingorderByといったSQLの句に相当するメソッドをチェーン形式で記述することで、このような複雑な条件を持つクエリを型安全に構築できる。countmaxcase_のような集計関数もTypeScriptの型チェックを受けながら利用可能だ。

データベース操作では、「トランザクション」の概念も重要になる。トランザクションとは、複数のデータベース操作を一つのまとまりとして扱い、その全てが成功するか、あるいは一つでも失敗した場合は全ての操作が元に戻される(ロールバックされる)仕組みだ。例えば、新しいユーザーを作成し、同時にそのユーザー向けのウェルカム投稿を作成するという二つの操作がある場合、ユーザー作成が成功したのに投稿作成が失敗すると、データに不整合が生じてしまう。Drizzle ORMは、db.transactionメソッドを使って、これらの操作をアトミック(不可分)に実行できる。これにより、データの一貫性を確実に保つことが可能になる。

Drizzle ORMが特に真価を発揮するユースケースとしては、複数のテーブルを結合する「複雑なJOIN」を伴うデータ分析クエリや、ユーザーの入力に応じて検索条件が変化するような「動的なクエリ構築」が挙げられる。Drizzle ORMのクエリビルダーはこれらのシナリオにおいて、型安全性を保ちつつ柔軟にクエリを構築できる。また、もしDrizzle ORMのクエリビルダーでは表現できないような特殊なSQL文(例えばウィンドウ関数など)が必要になった場合でも、db.execute(sql```)という「生のSQL」を直接記述できるエスケープハッチが用意されており、柔軟な対応が可能だ。

Drizzle ORMをプロジェクトに導入するための基本的な手順も押さえておこう。まず、drizzle-ormと使用するデータベースドライバー(例えばPostgreSQLならpostgres)をインストールし、開発時には型定義生成のためのdrizzle-kitも追加する。次に、drizzle.config.tsという設定ファイルを作成し、データベースの接続情報やスキーマファイルの場所を指定する。そして、src/db/index.tsのようなファイルでデータベースへの接続を確立し、Drizzle ORMのインスタンスを作成する。最後に、drizzle-kit generate:pgコマンドでスキーマ定義からマイグレーションファイル(データベースの構造変更履歴を管理するファイル)を生成し、drizzle-kit push:pgコマンドでデータベースにその変更を適用する、という流れになる。

まとめると、Drizzle ORMはTypeScriptプロジェクトにおけるデータベース操作において、その軽量性、直感的なSQLライク構文、そして特に「完全な型安全性」によって開発効率と品質を大きく向上させるツールだ。さらに、その明示的で段階的なクエリ構築の特性は、AIアシスト開発ツールであるClaude CodeのようなAIとの連携において非常に高い相性を示す。複雑なデータ結合や集計、動的なクエリ構築が求められるプロジェクトにおいて、Drizzle ORMを採用することは、開発体験を大きく改善し、将来のAIと共存する開発スタイルにおける強力な選択肢となるだろう。今後はDrizzle ORMの公式ドキュメントで基本概念を学び、実際に小さなプロジェクトで試してみることで、そのメリットを実感できるはずだ。

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