【ITニュース解説】Excel、Excel VBA をGitで管理する

2025年09月09日に「Qiita」が公開したITニュース「Excel、Excel VBA をGitで管理する」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ExcelやExcel VBAファイルの変更履歴管理や共同作業は難しい課題だった。本記事は、システム開発で広く使われるバージョン管理システム「Git」を活用し、これらのファイルを効率的に管理する手法を解説する。これにより、複数人での作業や過去の状態への正確な復元が可能になり、管理の負担を軽減できる。

出典: Excel、Excel VBA をGitで管理する | Qiita公開日:

ITニュース解説

システム開発の現場では、表計算ソフトウェアのExcelと、その中で動作するプログラミング言語であるVBA(Visual Basic for Applications)が非常に広く利用されている。しかし、ExcelやVBAを開発ツールとして使う場合、特にバージョン管理という点で大きな課題を抱えることが多い。例えば、複数人で同じExcelファイルを修正する際に、誰がいつどこを変更したのか分からなくなったり、以前の状態に戻したくてもバックアップが見つからなかったり、あるいは誤って重要な変更を上書きしてしまったりといった経験はないだろうか。このような状況は、開発の効率を大きく下げ、時にはシステムの品質にも悪影響を及ぼす。

このような問題を解決するために、プログラミングの世界で広く使われているのが「Git(ギット)」というバージョン管理システムだ。Gitは、ソフトウェア開発におけるソースコードの変更履歴を効率的に管理するためのツールであり、ファイルの変更を細かく記録し、いつでも過去の任意の時点に戻したり、複数人での共同開発をスムーズに進めたりすることを可能にする。普段、Excelファイルを修正するたびに「ファイル名_日付_担当者名.xlsx」のような名前で別名保存して管理しているとすれば、Gitはそれをもっと洗練された形で自動的に、かつ確実に管理してくれるものだと考えると分かりやすいかもしれない。

では、ExcelやVBAをGitで管理するには具体的にどうすれば良いのだろうか。通常のExcelファイル(.xlsxや.xlsm)は、テキストデータではなく「バイナリファイル」と呼ばれる形式で保存されている。このため、Gitにそのまま登録しても、ファイルの中身がどのように変更されたのか、具体的にどのセルやどの数式が変わったのかをGitが詳細に把握することは非常に難しい。Gitはテキストファイルの差分を比較することを得意としているため、バイナリファイルではその強みが活かせないのだ。

そこで考えられる有効なアプローチが、Excelファイルに埋め込まれたVBAコードを「テキストファイル」として抽出し、これをGitで管理するという方法だ。ExcelのVBA開発環境であるVBE(Visual Basic Editor)には、VBAモジュールやクラスモジュールといったコンポーネントを、.basや.clsなどのテキストファイル形式でエクスポート・インポートする機能がある。この機能を使えば、VBAコードを通常のプログラムコードと同じようにテキストとして扱えるため、Gitがその変更履歴を正確に追跡できるようになる。

しかし、Excelファイルに変更があるたびに手作業でVBAコードをエクスポートし、Gitに登録するのは非常に手間がかかる作業だ。この手間を省き、自動化するためのツールがいくつか存在している。例えば、「vbacommit」のようなツールは、Excelファイルが保存される際に、VBAコードを自動的にテキストファイルとして抽出し、Gitにコミット(変更を記録する操作)するプロセスを支援してくれる。また、「xlsm_diff」のようなツールは、Excelファイル(.xlsm)自体の変更内容、特にシートの構造や数式、定義名などの変更をテキスト形式で比較できるように補助する機能を提供してくれる。これらのツールを組み合わせることで、VBAコードだけでなく、Excelファイル本体の重要な変更点もGitで管理しやすくなる。

Gitを使った開発の基本的な流れは、まず「リポジトリ」と呼ばれる、プロジェクトの全てのファイルと変更履歴を保存する場所を作成することから始まる。開発者はこのリポジトリから最新のファイルを取得し、自分だけの作業スペースで修正を行う。修正が終わったら、その変更内容を「コミット」としてリポジトリに記録する。コミットは「いつ、誰が、何を、なぜ変更したか」という情報をセットで記録するもので、後から変更履歴を辿る際に非常に役立つ。

また、Gitには「ブランチ」という機能がある。これは、開発の進行を一時的に分岐させ、本体の開発に影響を与えずに新しい機能の開発やバグ修正を進めるためのものだ。例えば、メインの開発ライン(通常はmainmasterと呼ばれる)とは別に、新しい機能「機能X」を開発するための「feature/X」ブランチを作成し、そこで存分に開発を進めることができる。開発が完了したら、そのブランチの内容を元のメインブランチに「マージ」(統合)することで、新しい機能が本体に取り込まれる。このブランチとマージの仕組みは、複数人での同時並行開発を安全かつ効率的に進める上で不可欠な機能となる。

さらに、Gitリポジトリを「GitHub」や「GitLab」といったオンラインサービス上の「リモートリポジトリ」と連携させることで、開発チーム全体でコードを共有し、管理することができるようになる。開発者はリモートリポジトリからコードを自分のローカル環境に「プル」(取得)し、変更を加えてコミットした後、その変更をリモートリポジトリに「プッシュ」(送信)することで、チームメンバー全員が最新のコードにアクセスできるようになる。これにより、物理的に離れた場所にいるチームでも、あたかも同じ場所で作業しているかのようにスムーズな共同開発が可能になる。

このようにGitを使ってExcelやVBAを管理することには、多くのメリットがある。第一に、すべての変更履歴が明確に記録されるため、いつ誰がどのような修正を行ったのかがすぐにわかる。これにより、問題が発生した際に原因特定が容易になり、責任の所在も明確になる。第二に、誤ってコードを削除してしまったり、意図しない変更を加えてしまったりした場合でも、簡単に過去の安定したバージョンに戻すことができるため、安心して開発を進められる。第三に、複数人で並行して開発を進める際も、Gitのブランチ機能とマージ機能によって、それぞれの作業が衝突することなく、効率的に統合できるようになる。これは開発効率の大幅な向上につながる。最後に、コードレビューが容易になるという点も挙げられる。Gitは変更の差分を分かりやすく表示できるため、他のメンバーが自分の書いたVBAコードを確認し、改善点を指摘したり、品質を保証したりするプロセスがスムーズになる。

システムエンジニアを目指す初心者にとっては、Gitの概念や操作を習得することは、最初は少し難しく感じるかもしれない。しかし、現代のソフトウェア開発においてGitはデファクトスタンダード(事実上の標準)ツールであり、これを使いこなすことはプログラマーとしての必須スキルの一つと言える。ExcelやVBAのような身近なツールであっても、Gitを導入することで、その開発と管理の品質を劇的に向上させることが可能になる。これは、より堅牢で保守しやすいシステムを構築するための第一歩であり、今後のキャリアにおいても大いに役立つ知識となるだろう。