【ITニュース解説】Faster Rust builds on Mac
2025年09月05日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Faster Rust builds on Mac」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
MacでRustのビルドが高速化。原因は、Rustコンパイラがデフォルトでリンク時にdylib(動的ライブラリ)を優先する設定。これをstaticlib(静的ライブラリ)優先にすることで、リンク時間を短縮できる。Cargoの設定を変更し、codegen-unitsを増やすと効果的。
ITニュース解説
Rustは、近年人気が高まっているプログラミング言語だ。その特徴は、高速な実行速度、メモリ安全性の高さ、そしてモダンな開発体験にある。しかし、Rustの弱点として、コンパイル速度の遅さが指摘されることが多かった。特にMac環境においては、その傾向が顕著だったようだ。今回Redditで話題になっているのは、MacにおけるRustのビルド速度を大幅に改善する可能性のある情報だ。
Rustのコンパイルが遅い理由の一つとして、リンク処理の複雑さが挙げられる。リンクとは、コンパイルされた複数のオブジェクトファイル(プログラムの部品)を結合し、最終的な実行可能ファイルを作り出す工程のことだ。Rustでは、安全性を重視する設計思想から、コンパイラが詳細なチェックを行うため、リンク処理に時間がかかる。特に、大規模なプロジェクトや、多くの外部ライブラリ(クレートと呼ばれる)を使用している場合、リンク時間は無視できないものになる。
Mac環境におけるRustのビルド速度の遅さには、Appleが提供するリンカ(ld)の性能も影響していると考えられる。リンカは、オブジェクトファイルを結合するソフトウェアだが、その性能はOSやリンカの種類によって大きく異なる。Appleのリンカは、必ずしもRustのコンパイルに最適化されているとは言えず、これがボトルネックとなるケースがあった。
今回のRedditのスレッドでは、MacにおけるRustのビルド速度を改善するための具体的な方法がいくつか提案されている。最も注目されているのは、別のリンカを使用するというアプローチだ。特に、LLVMプロジェクトの一部であるlldリンカを使うことで、大幅な速度改善が期待できるという報告が複数見られる。lldは、Rustコンパイラと同じLLVM基盤で動作するため、相性が良いと考えられている。
lldリンカを使用するには、Cargo(Rustのパッケージマネージャー兼ビルドツール)の設定を変更する必要がある。Cargo.tomlファイル(プロジェクトの設定ファイル)に、リンカを指定する設定を追加することで、lldを使用するように指示できる。具体的な設定方法は、Rustのドキュメントや、lldリンカのドキュメントを参照するのが望ましい。
また、moldリンカも高速なリンカとして注目されている。moldは、lldよりもさらに高速であることを目標に開発されており、大規模なプロジェクトにおいて特に効果を発揮すると言われている。ただし、moldは比較的新しいリンカであり、まだ利用できる環境が限られている場合がある。
リンカの変更以外にも、ビルド速度を改善するための方法はいくつか存在する。例えば、コンパイルオプションを調整することで、コンパイラの最適化レベルを変更できる。最適化レベルを下げると、コンパイル時間は短縮されるが、実行速度が低下する可能性がある。プロジェクトの要件に合わせて、最適なバランスを見つけることが重要だ。
また、コンパイルキャッシュを活用することも有効な手段だ。コンパイルキャッシュとは、以前にコンパイルした結果を保存しておき、次回以降のコンパイル時に再利用する仕組みのことだ。これにより、変更されていないソースコードを再度コンパイルする必要がなくなり、ビルド時間を大幅に短縮できる。sccacheなどのツールを使用することで、コンパイルキャッシュを簡単に導入できる。
さらに、CPUのコア数を増やすことも、ビルド速度の改善に繋がる。Rustのコンパイラは、並列処理をサポートしており、複数のコアを同時に使用してコンパイルを行うことができる。そのため、より多くのコアを持つCPUを使用することで、コンパイル時間を短縮できる可能性がある。
システムエンジニアを目指す初心者にとって、これらの情報は、Rustのコンパイル速度に関する問題を理解し、改善策を検討するための第一歩となるだろう。Rustは、習得に多少時間がかかるものの、その高い性能と安全性から、今後ますます重要なプログラミング言語になると考えられる。コンパイル速度の改善は、Rustの利用を促進し、より多くの開発者がRustを採用するきっかけになるかもしれない。色々な方法を試して、快適なRust開発環境を構築してほしい。