【ITニュース解説】When a For Loop Powers Your Stock Backtester - Devlog

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「When a For Loop Powers Your Stock Backtester - Devlog」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Pythonで株式売買戦略を試すライブラリ「Stocksimpy」の開発進捗。シンプルな`for`ループでデータを処理し、売買戦略は関数やクラスで柔軟に対応する。パフォーマンス向上策や、固定・動的取引の機能を実装。今後はリスク評価指標の追加が課題だ。

ITニュース解説

今回のニュース記事は、株取引の「バックテスト」を行うためのPython製ライブラリ「Stocksimpy」の開発状況を伝えるものだ。バックテストとは、過去の株価データを用いて、ある取引ルール(戦略)で売買した場合にどうなったかをシミュレーションし、その戦略の有効性を検証する作業である。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これは現実世界の課題をソフトウェアで解決する具体的な事例として理解を深めるのに役立つだろう。

開発者は「Stocksimpy」を、既存の複雑なライブラリに代わる、より軽量で使いやすいものとして開発を進めている。この連載記事では、開発の各ステップが詳細に共有されており、他のプログラマーにも実践的な学びを提供している。これまでの開発では、株のポートフォリオ(複数の株の組み合わせ)を管理する「Portfolio」クラスが作られたが、今回の記事では、この「Portfolio」クラスを支えるバックテストの核心部分、「メインループ」に焦点を当てている。

まず、株の売買を判断する「戦略」をどうプログラムに組み込むかについて説明する。「Stocksimpy」の「Backtester」クラスは、シンプルであるように設計されている。これは、売買の判断ロジック、つまり戦略そのものは、「Backtester」クラスを使う際に外部から提供されるためだ。開発者は当初、この戦略を「買う」「売る」「何もしない」という指示を返すシンプルな「関数」として実装した。関数とは、特定の処理を実行する一連のコードのまとまりを指す。しかし、株の戦略は多岐にわたり、時には多くの計算や複数の機能を組み合わせて判断する必要がある。このような複雑な戦略に対応するため、開発者は将来的に、戦略を「クラス」として定義できるようにすることも検討している。クラスを使うことで、関連するデータとそのデータを操作する処理(メソッド)をまとめて管理でき、より複雑なロジックを整理しやすくなる。現時点ではライブラリの軽量さを優先しているため、この機能は将来的な改善点として残されている。

次に、バックテストの中心的な処理である「メインループ」について解説する。この核となる部分は、データの長さにわたって繰り返す、非常に基本的な「forループ」というプログラミング構文で実現されている。「forループ」は、データ(例えば、日々の株価の記録)の各要素に対して、順番に同じ処理を繰り返し実行するために用いられる。開発者は、大量の株価データ(例えば、5年から10年分の日次データ)をこのシンプルな「forループ」で処理した場合のパフォーマンス(処理速度)を懸念していた。しかし、実際に動かしてみたところ、約2分で処理が完了したという。これはPythonで全面的に実装されたシステムとしては十分に速く、許容範囲内だと判断された。より高速なバックテストライブラリは、しばしばC言語やC++といった高速な言語で書かれた部分とPythonを組み合わせているが、それでも数時間もかかるような遅さではないことが確認された。

しかし、開発者はさらなる効率化の可能性を見出した。それは、Pythonでデータ分析に広く使われる「Pandas」というライブラリの組み込み関数を活用する方法である。Pandasは、大量のデータを効率的に扱うための強力な機能を提供している。開発者は、戦略による売買シグナル(売買の判断結果)を事前に全て計算し、それをPandasのデータ構造である「Pandas.Series」に保存しておけば、メインループでは実際に取引が発生する日付だけを処理すればよいと考えた。この方法ならば、毎日全てのデータをチェックするよりも、はるかに効率的にバックテストを実行できる。この改善案も、将来的に実装が検討されている重要なポイントである。

さらに、株の売買における「固定額」と「動的な売買」という二つの異なるアプローチにも言及されている。開発者は当初、シンプルさを重視し、毎回決まった金額で株を売買する「run_backtest_fixed()」という関数を作成した。これは、「常に1000ドル分の株を買う」といった固定的なルールでバックテストを行う場合に有効だ。しかし、実際の取引戦略では、例えば「保有している株の半分を売却する」といった、株の数量が状況によって変わる動的なロジックが必要になることに気づいた。固定額の売買では、このような動的な判断に対応できないため、開発者は、売買する株の数量を戦略に応じて柔軟に決定できる「run_backtest_dynamic()」という関数を新たに追加した。これにより、より多様で現実的な取引戦略をバックテストで検証できるようになった。この開発の経緯は、システム設計において、初期のシンプルな構想から、利用者の多様なニーズに対応するための柔軟性をどう取り入れていくかを示す良い事例となる。

「Stocksimpy」の今後の展望についても詳しく述べられている。開発者は、複数の戦略を同時に実行する機能や、より高度なパフォーマンス評価指標の追加を検討している。特に、投資のパフォーマンスを評価する上で不可欠な「シャープレシオ」や「ドローダウン」といったリスク調整済み指標の実装に力を入れるという。シャープレシオは、投資のリスクに対するリターンを評価する指標であり、ドローダウンは、投資期間中に発生した最大の資産減少率を示す指標である。開発者は、これらの指標がなければ、単に「利益が出たか」だけでなく、「どれだけのリスクを負ってその利益を得たか」を客観的に評価できないため、ライブラリが単なる「おもちゃ」にとどまってしまうと考えている。このため、これらのリスク調整済み計算機能の追加が、次の開発の最優先事項とされている。また、バックテストの結果を視覚的に分かりやすく表示する「ビジュアライゼーション」機能や、ドキュメント(使い方や説明書)の整備も計画されているが、まずは肝心なパフォーマンス指標の追加に注力する方針である。

このように、「Stocksimpy」の開発は、シンプルさから始まり、実際の利用や検討を通じて見えてくる課題や、より良い解決策を継続的に探求し、改善を重ねていくプロセスそのものだ。これは、システム開発の現場で常に経験する問題解決のサイクルであり、システムエンジニアを目指す皆さんにとって、ソフトウェアを構築していく上での考え方や工夫、そして将来を見据えた計画の重要性について、多くの示唆を与えてくれるだろう。開発者は、このライブラリが複雑な既存のツールに悩む人々の一助となることを願っており、GitHubでのフィードバックを積極的に求めている。

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