【ITニュース解説】GitHub、GitHub Actionsのための自然言語プログラミング「Agentic Workflows」を発表
2025年09月09日に「CodeZine」が公開したITニュース「GitHub、GitHub Actionsのための自然言語プログラミング「Agentic Workflows」を発表」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
GitHubが、開発作業の自動化ツールGitHub Actions向けに新機能「Agentic Workflows」を発表した。日本語などの自然言語で指示するだけで、必要な自動化設定(ワークフロー)を自動で作成してくれる。専門知識が少なくても複雑な自動化が可能となる。
ITニュース解説
ソフトウェア開発の現場で広く利用されているプラットフォーム「GitHub」が、開発プロセスを大きく変える可能性を秘めた新しい技術「Agentic Workflows for GitHub Actions」を発表した。これは、開発者が日常的に使う自然言語、つまり話し言葉や書き言葉を使って、複雑な自動化処理をAIに作成させるという画期的な試みである。この技術を理解するために、まず背景となる「GitHub Actions」について解説する。
GitHubは、プログラムのソースコードを保存、管理、共有するためのサービスである。世界中の開発者が自身のプロジェクトをGitHub上で公開し、チームで協力しながら開発を進めている。そして、このGitHubが提供する機能の一つに「GitHub Actions」がある。これは、ソフトウェア開発における一連の作業を自動化するための仕組みだ。例えば、プログラマーが新しいコードを追加した際に、そのコードにバグがないかを自動でテストしたり、テストに合格したコードを自動でサーバーに反映(デプロイ)させたりすることができる。このような開発から運用までの一連の流れを自動化する考え方をCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)と呼び、GitHub Actionsはそれを実現するための強力なツールである。
しかし、従来のGitHub Actionsを利用するには、開発者自身が「ワークフロー」と呼ばれる自動化の設計図を作成する必要があった。このワークフローは、YAMLという特定の書式で記述された設定ファイルによって定義される。YAMLは人間にも比較的読みやすい形式ではあるが、独自の構文やルールを正確に理解していなければならず、特に初心者にとっては学習コストが高いという課題があった。どのようなコマンドを、どの順番で、どのような条件で実行するのかを細かく指定する必要があり、目的の自動化を実現するためには専門的な知識と試行錯誤が求められた。
今回発表された「Agentic Workflows」は、この課題を根本から解決することを目指している。この技術を使えば、開発者はYAMLの複雑な構文を覚える必要がなくなる。「Webサイトのスクリーンショットを撮って、脆弱性スキャンを実行してほしい」といったように、実現したいことを自然言語で指示するだけで、AIがその意図を汲み取り、適切なGitHub Actionsのワークフローを自動で生成してくれる。これにより、専門知識の有無にかかわらず、誰でも高度な自動化の恩恵を受けられるようになる。
この技術の核心は、単なるコード生成AIとは一線を画す「AIエージェント」という概念にある。従来のコード生成AIは、与えられた指示に基づいてコードを出力するまでが主な役割だった。しかし、Agentic WorkflowsにおけるAIエージェントは、より自律的に振る舞う。まず、ユーザーの曖昧な指示から「最終的な目標は何か」を正確に解釈する。次に、その目標を達成するための一連のステップを計画する。そして、計画の各ステップを実行するために、利用可能なツール群(特定のコマンドやAPIなど)の中から最適なものを自ら選択し、それらを組み合わせてワークフローを構築する。もし途中で問題が発生すれば、それを解決するための代替案を模索することさえ試みる。
つまり、開発者は「何をしたいか」という目的を伝えるだけでよく、「どのように実現するか」という具体的な手段はAIエージェントが考えて実行してくれる。これは、人間が経験豊富なアシスタントに作業を依頼する感覚に近い。このアプローチにより、開発者は本来集中すべき創造的なコーディング作業により多くの時間を割くことができるようになり、開発全体の生産性が飛躍的に向上することが期待される。
この「Agentic Workflows」は、まだGitHubの先進的な技術を研究・開発する「GitHub Next」というプロジェクトの一部であり、すぐに全てのユーザーが利用できるわけではない。しかし、この技術が示す未来は非常に明るい。プログラミングやシステム開発の世界は、これまで人間がコンピュータに対して一行一行細かく命令を与えることで成り立ってきた。しかし、AI技術の進化により、人間はより高次元の「意図」や「目的」を伝え、その実現方法はAIが担うという新しい協業スタイルへと変化しつつある。Agentic Workflowsは、その大きな変化を象徴する技術の一つであり、今後のソフトウェア開発のあり方を大きく変える可能性を秘めている。システムエンジニアを目指す者にとって、このような技術の動向を理解しておくことは、将来のキャリアを考える上で極めて重要であると言えるだろう。