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【ITニュース解説】Inside vLLM: Anatomy of a High-Throughput LLM Inference System

2025年09月13日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Inside vLLM: Anatomy of a High-Throughput LLM Inference System」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

vLLMは、大規模言語モデル(LLM)の推論を高速化するシステムだ。一度に多くの処理を高効率で行い、システムの応答性を高める「高スループット」を実現する。その内部構造と仕組みについて解説する記事だ。

ITニュース解説

大規模言語モデル(LLM)は、ChatGPTに代表されるように、テキスト生成や要約、翻訳など、多岐にわたるタスクで利用されるAI技術だ。これらのモデルは非常に大きく、私たちが質問を投げかけたり、文章の生成を依頼したりする際には、「推論」というプロセスが実行される。推論とは、モデルが学習済みの知識を使って新しい入力を処理し、結果を出力することだ。この推論は、特に大規模なLLMの場合、膨大な計算資源、主に高性能なGPUを必要とするため、多くのユーザーからのリクエストを同時に、かつ迅速に処理することは大きな課題となる。

vLLMは、このようなLLMの推論における課題を解決するために開発された、高スループットな推論システムだ。高スループットとは、単位時間あたりに処理できるリクエストの数が多いことを指す。つまり、vLLMは、多数のユーザーが同時にLLMを利用しても、それぞれの応答を素早く返すことができるように設計されている。システムエンジニアにとって、これはサーバーの負荷を効率的に管理し、ユーザー体験を向上させるための重要な技術要素となる。

vLLMの核心にある技術の一つは、「Paging Attention(ページングアテンション)」だ。LLMがテキストを生成する際、一つ前の単語や文脈の情報を記憶しておく必要がある。この記憶は「キー(K)キャッシュ」と「値(V)キャッシュ」という形でGPUメモリ上に保持される。これらを合わせてK/Vキャッシュと呼ぶ。従来のシステムでは、このK/Vキャッシュの管理が非効率だった。具体的には、モデルが生成するテキストの長さに応じて必要なメモリ量が変動するため、事前に最大のメモリを確保するか、またはメモリが不足するたびに再割り当てする必要があった。これにより、メモリの断片化が発生しやすくなり、GPUメモリの利用効率が低下したり、応答速度が遅くなったりすることが問題だった。

Paging Attentionは、このK/Vキャッシュをオペレーティングシステム(OS)の仮想メモリ管理のように扱う。OSが物理メモリを「ページ」という小さな単位に分割し、必要に応じて割り当てたり解放したりするのと同様に、Paging AttentionはK/Vキャッシュを「ブロック」という固定サイズの単位に分割する。そして、モデルが新しいトークン(単語や文字の最小単位)を生成するたびに、必要なブロックだけを動的に割り当てたり解放したりする。これにより、メモリの断片化が大幅に減少し、GPUメモリをより効率的に、かつ無駄なく利用できるようになる。結果として、同じGPUメモリ量で、より多くのLLM推論リクエストを同時に処理できるようになり、スループットの向上に貢献する。

もう一つの重要な技術が「Continuous Batching(連続バッチ処理)」だ。LLMの推論では、通常、複数のリクエストをまとめて処理する「バッチ処理」が行われる。これは、個々のリクエストを一つずつ処理するよりも、GPUの計算資源を効率的に使うためだ。しかし、従来のバッチ処理では、バッチ内の全てのリクエストが完了するまで次のバッチの処理を開始できないという制約があった。例えば、10個のリクエストをバッチ処理する場合、その中の最も処理時間の長いリクエストが完了するまで、他の9個のリクエストも待機することになる。これにより、GPUがアイドル状態になる時間が発生し、全体の処理効率が低下する問題があった。

Continuous Batchingは、この問題を解決する。ユーザーからのリクエストが到着すると、それを動的に現在のバッチに追加し、処理中のバッチの一部として実行する。そして、バッチ内のいずれかのリクエストが完了すると、すぐにそのリクエストをバッチから外し、空いたスペースに新しいリクエストを追加する。このように、バッチを常に満たされた状態に保ち、GPUのアイドル時間を最小限に抑えることで、高いスループットと低いレイテンシ(応答速度)を実現する。

さらにvLLMは、GPUの計算能力を最大限に引き出すための「高性能カーネル」も採用している。カーネルとは、GPU上で実行される低レベルのプログラムのことで、LLMの複雑な計算、特にアテンション機構などの主要な部分を、GPUのアーキテクチャに合わせて最適化することで、処理速度を大幅に向上させている。これらの最適化されたカーネルが、Paging AttentionやContinuous Batchingといった高レベルな機能と連携し、vLLM全体の性能を底上げしている。

これらの技術の組み合わせにより、vLLMはLLMの推論において、従来のシステムと比較して大幅な性能向上を達成する。具体的には、低レイテンシでユーザーリクエストに応答しつつ、高いスループットで多数のリクエストを同時に処理できる。これは、より少ないGPU資源で、より多くのユーザーにサービスを提供できることを意味し、運用コストの削減にも直結する。システムエンジニアがLLMを活用したサービスを構築する際、vLLMのようなシステムは、ユーザー体験の向上とコスト効率の両面で非常に強力なツールとなる。LLMの普及に伴い、その推論をいかに効率良く、経済的に行うかはますます重要になっており、vLLMはその最先端を行く解決策の一つだ。

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