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【ITニュース解説】Exploring Interlisp-10 and Twenex

2025年09月06日に「Hacker News」が公開したITニュース「Exploring Interlisp-10 and Twenex」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

1970年代の先進的なLisp統合開発環境Interlisp-10と、その基盤OSであるTwenexをエミュレータで再現。ファイル補完など現代にも通じる機能を備えた、歴史的コンピュータシステムの仕組みと操作方法を解説する。

出典: Exploring Interlisp-10 and Twenex | Hacker News公開日:

ITニュース解説

現代のコンピュータ技術の多くは、過去数十年にわたる革新の積み重ねの上に成り立っている。その歴史を紐解くことは、システムエンジニアを目指す上で、現在使われている技術の成り立ちや思想を深く理解する助けとなる。近年、エミュレーション技術の発展により、過去の伝説的なコンピュータシステムを現代のPC上で再現し、実際に操作することが可能になった。ここでは、1970年代から80年代にかけて大きな影響力を持ったメインフレームコンピュータ「PDP-10」と、その上で動作したオペレーティングシステム「Twenex」、そして画期的なプログラミング環境であった「Interlisp-10」を実際に体験し、探求する試みについて解説する。

まず、この体験の舞台となるPDP-10は、Digital Equipment Corporation(DEC)社が開発したコンピュータであり、当時の大学や研究機関で広く利用されていた。PDP-10は、現代のコンピュータとは異なる36ビットアーキテクチャを採用しており、科学技術計算や初期の人工知能研究などでその性能を発揮した。このPDP-10上で動作するオペレーティングシステム(OS)の一つが「Twenex」である。OSとは、WindowsやLinuxのように、ハードウェアを管理し、アプリケーションソフトウェアが動作するための土台となる基本的なソフトウェアのことだ。Twenexは、当時としては極めて先進的な機能を数多く備えていた。その一つが、強力なコマンドラインインターフェースである。ユーザーがコマンドを途中まで入力して特定のキーを押すと、システムが残りのコマンド名を自動的に補完してくれる機能は、現代のLinuxシェルなどでは当たり前だが、Twenexはその原型となるアイデアを実装していた。また、利用可能なコマンドのリストを表示するヘルプ機能も充実しており、ユーザーが直感的にシステムを操作できるような工夫が凝らされていた。さらに、Twenexは「仮想メモリ」という仕組みを早期に本格的に導入したOSとしても知られている。これは、物理的に搭載されているメモリ(RAM)の容量よりも大きなメモリ空間をプログラムに提供する技術であり、複数のプログラムを同時に効率よく実行させるために不可欠な機能である。これらの特徴は、Twenexが単なる古いOSではなく、現代のOS設計思想に直接的な影響を与えた重要な存在であったことを示している。

次に、Twenex上で動作したプログラミング環境「Interlisp-10」について見ていく。これは、Lispというプログラミング言語のための開発環境である。Lispは、人工知能(AI)研究の分野で特に好んで使われた言語で、プログラムそのものをデータとして扱えるという強力な特徴を持つ。Interlispは、単にLispのプログラムを書いて実行するだけのツールではなかった。それは、プログラムを作成するためのエディタ、プログラムの誤り(バグ)を発見し修正するためのデバッガ、ファイルの管理機能などが緊密に連携して動作する、一つの巨大な統合開発環境(IDE)だった。現代のエンジニアがVisual Studio CodeやEclipseといったツールを使って開発を行うのと同じように、当時の研究者たちはInterlispという統一された環境の中で思考し、コーディングし、デバッグを行っていた。Interlispを特に有名にしたのが、「DWIM(Do What I Mean)」と呼ばれる機能である。これは「私が意図したことを実行せよ」という意味の頭文字を取ったもので、プログラマーが入力したコードに軽微なスペルミスなどがあった場合、システムがその意図を推測し、自動的に正しいコードに修正して実行を試みるという画期的な機能だった。これにより、開発者は些細なミスに煩わされることなく、より本質的な問題解決に集中することができた。このような対話的でユーザーを強力に支援する開発環境の思想は、後の多くのプログラミング環境に大きな影響を与えている。

これらの歴史的システムは、もはや実機を見つけることすら困難だが、「KLH10」のようなエミュレータソフトウェアを用いることで、現代の一般的なPC上でPDP-10の動作をソフトウェア的に再現することが可能である。エミュレータは、古いハードウェアの命令セットや動作を模倣することで、その上で動いていたOSやアプリケーションをそのまま実行できるようにする技術だ。このエミュレータ上にTwenexをインストールし、さらにInterlisp-10を起動することで、誰でもキーボードを叩きながら1970年代の最先端コンピューティング環境を追体験できる。この体験から得られる知見は大きい。Twenexの洗練されたコマンド操作や、Interlispのシームレスな開発体験は、現代我々が享受している技術が、決して突然現れたものではなく、長年にわたる試行錯誤と先人たちの創意工夫の結晶であることを実感させてくれる。過去の優れたシステムを学ぶことは、なぜ現代の技術が現在の形になっているのかという背景を理解し、システムエンジニアとしての技術的視野を広げる上で、非常に価値のある活動であると言えるだろう。

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