【ITニュース解説】Microsoft slips unscathed through EU competition probe after promising to unbundle Teams
2025年09月12日に「TechCrunch」が公開したITニュース「Microsoft slips unscathed through EU competition probe after promising to unbundle Teams」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Microsoftは、EUからの独占禁止法に関する厳しい調査を無事に乗り切った。Office製品に抱き合わせ提供されていたTeamsを切り離すことを約束したため、数十億ドル規模の巨額な罰金を回避できた。
ITニュース解説
Microsoftが、EU(欧州連合)が実施していた大規模な競争法調査から、ほとんど罰金を受けることなく切り抜けたというニュースが報じられた。この背景には、同社がコミュニケーションツールであるTeamsを、主力製品であるMicrosoft 365(旧Office 365)から切り離して提供することを約束したことがある。EUの調査は、Microsoftに数十億ドル規模の巨額な罰金が科される可能性も秘めていたため、今回の結果は同社にとって非常に大きな意味を持つ。
まず、このニュースを理解する上で重要な「EU競争法」と「アンチトラスト」という考え方について説明する。EUは、加盟国間の経済的な協力だけでなく、市場全体が公平で健全な競争環境を保つことを非常に重視している。そのために「競争法」というルールを定めており、これは特定の企業が市場で不当に大きな力を持つことを防ぎ、公正な競争を促すことを目的としている。この考え方を「アンチトラスト(独占禁止)」と呼ぶこともある。なぜこのようなルールが必要かというと、もし一部の企業が市場を独占してしまうと、その企業は製品の価格を自由に上げたり、品質を下げたり、あるいは革新的な新しい製品やサービスを開発しようとする競合他社の参入を妨げたりする可能性があるからだ。結果として、消費者は選択肢を失い、より良いサービスや製品を手に入れる機会が失われてしまう。EUは、消費者の利益を保護し、イノベーションを促進するために、こうした市場の歪みを厳しく監視している。
今回の問題の中心となったのは、Microsoftが提供するコミュニケーションツール「Teams」の「バンドリング」、つまり「抱き合わせ販売」だった。Microsoftは、ビジネス向けの生産性向上ツール群であるMicrosoft 365の中に、Teamsを標準で組み込んで提供していた。Microsoft 365は、WordやExcel、PowerPointといった広く使われているアプリケーションを含むため、多くの企業が導入している。そのため、これらのツールを使う企業は自動的にTeamsも手に入れることになり、Teamsを単体で導入する手間が省けたり、追加費用なしで使えるというメリットがあった。しかし、EUはこの「抱き合わせ販売」が競争上問題であると判断した。
EUの視点から見ると、Microsoftがすでに市場で強い影響力を持つMicrosoft 365とTeamsを一緒に販売することで、競合他社のコミュニケーションツール、例えばSlackのような製品は、不利な立場に置かれる。多くの企業はMicrosoft 365を利用しているため、わざわざ別のコミュニケーションツールを検討しなくても、すでに手元にあるTeamsを使えば良いと考えるのが自然だ。これは、Teamsがその製品としての優劣に関わらず、Microsoft 365という強力なプラットフォームの力によって、市場でのシェアを不当に拡大していると見なされる可能性がある。つまり、Microsoftが自社の市場支配力を濫用して、他の競合製品の成長を阻害しているとEUは指摘したのだ。
MicrosoftにとってTeamsは非常に重要な製品である。現代のビジネスにおいて、チームでのコミュニケーションやコラボレーションは不可欠であり、Teamsはチャット、ビデオ会議、ファイル共有など、多様な機能を統合したハブとして機能する。パンデミックを経てリモートワークが普及する中で、その重要性はさらに高まった。そのため、MicrosoftとしてはTeamsの普及を強力に進めたいという思惑があった。
EUの調査は数年にわたり行われ、Microsoftは市場での優位性を濫用したとして、その行為が競争法に違反すると認定されれば、同社のグローバルな年間売上高の最大10%という巨額の罰金が科される可能性があった。これは数百億ドル規模に上ることもあり、企業にとっては非常に大きな打撃となる。過去にもEUは、GoogleやAppleといった他の巨大IT企業に対しても、同様の競争法違反で巨額の罰金を科してきた実績がある。
こうした状況の中で、MicrosoftはEUの懸念を解消するために「アンバンドリング」、つまりTeamsをMicrosoft 365から「切り離して提供する」という具体的な約束をした。具体的には、Microsoft 365の契約からTeamsを外し、企業がTeamsを必要とする場合は、別途契約する形にするというものだ。これにより、企業はMicrosoft 365だけを契約し、コミュニケーションツールとしてはSlackなどの他社製品を選ぶ自由が生まれる。Teamsを切り離すことで、競合他社がより公平な土俵で製品をアピールし、企業が自社のニーズに最も合ったツールを自由に選択できる環境が生まれることが期待されている。
この約束によって、EUはMicrosoftが競争環境を改善する意思があると判断し、今回の調査を大きな罰金なしで終結させる道を選んだ。Microsoftは巨額の罰金を回避できただけでなく、EUとの関係悪化という最悪のシナリオも避けることができたと言える。
今回の件は、IT業界における巨大企業のビジネス戦略と、それが各国の法規制、特に競争法とどのように関わるかを示す良い事例である。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、単に技術的な知識だけでなく、IT企業がどのような法的・経済的な制約の中でビジネスを展開しているのかを理解することは非常に重要だ。市場の公平性を保ち、消費者の利益を守るための法律が、技術開発や製品戦略にどのような影響を与えるのか、本件はその一端を示している。今後、他の巨大IT企業に対しても、同様のアンチトラスト調査が行われる可能性があり、企業は自社の製品やサービスの提供方法について、これまで以上に慎重な検討が求められるだろう。