【ITニュース解説】Odin does have undefined behavior

2025年09月07日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Odin does have undefined behavior」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

プログラミング言語Odinに、プログラムの予期せぬ挙動やバグの原因となる「未定義動作」があることが指摘された。これによりセキュリティリスクも生じ得るため、開発者は注意が必要だ。

ITニュース解説

プログラミングの世界には「未定義動作(Undefined Behavior)」という、非常に厄介で予測不可能な現象が存在する。これは、プログラムが実行する何らかの操作について、プログラミング言語の仕様がその結果を明確に定めていない状態を指す。言語仕様が結果を保証しないため、コンパイラは未定義動作を含むコードに対して、任意のコードを生成できる自由を持つ。その結果、プログラムは予期せぬクラッシュを起こしたり、誤った結果を返したり、全く関係のない場所でメモリが破壊されたり、セキュリティ上の脆弱性が生まれたり、あるいは特定の環境ではたまたま正しく動作するが別の環境では全く動かないといった、予測不能な問題を引き起こす。このため、未定義動作はプログラムの信頼性を大きく損ない、プログラマにとって最大の敵の一つと言える。

未定義動作が存在する主な理由は、コンパイラがプログラムを最適化しやすくするためだ。もし言語仕様が全ての操作の結果を厳密に定めてしまうと、コンパイラは多様な最適化を行う自由を失い、生成されるプログラムの性能が低下する可能性がある。また、特定のハードウェアやオペレーティングシステムに依存せず、多様な環境で動作するプログラムを作成するためにも、あえて一部の挙動を未定義にしておくという側面もある。しかし、その代償として、プログラマは常に未定義動作を回避するために細心の注意を払う必要がある。

C言語やC++言語は、特に未定義動作が多いことで知られている。例えば、NULLポインタを逆参照する(何も指していないポインタを通じてメモリにアクセスしようとする)、配列の範囲外にアクセスする、初期化されていない変数を使用する、解放済みのメモリにアクセスする、そして符号付き整数がオーバーフローする(最大値を超えてしまう)といった操作は、いずれもC/C++における典型的な未定義動作の例だ。これらの操作が行われると、コンパイラは「そのようなコードは書かれないはず」という前提で最適化を進めるため、プログラマの意図とは全く異なる挙動が引き起こされることがある。デバッグは極めて困難になり、問題の原因特定に膨大な時間が費やされることも珍しくない。

Odin言語は、C言語の代替を目指して設計された比較的新しいプログラミング言語だ。Odinの設計目標の一つに「C/C++よりもはるかに少ない未定義動作、あるいは未定義動作のないプログラミング環境を提供する」というものがあった。これは、C/C++の抱える未定義動作の問題を解決し、より安全で予測可能なシステムプログラミングを可能にすることを目指している。しかし、Redditで交わされた議論によると、Odin言語にもC/C++の未定義動作に近い、予測不能な挙動を引き起こしうる操作が存在するのではないかという指摘が上がっている。

議論の中で具体的に挙げられたのは、主にメモリとデータ型の扱いに起因する問題だ。 まず、異なるデータ型間でポインタを変換する際の「アライメント」の問題がある。アライメントとは、メモリ上のデータが特定の規則に従って配置されることだ。例えば、整数型は通常4バイトの倍数アドレスに配置されるといった規則がある。Odinではraw_dataのような汎用ポインタを、raw_data_stringのような特定の型として解釈しようとする際に、元のデータのアライメントが新しい型の要件を満たしていない場合、予期せぬメモリ破壊やクラッシュが発生する可能性がある。Odinのcast操作は、プログラマがその操作の安全性を(例えばアライメント要件を満たしていることを)保証するという前提で動作する。言語自体がアライメントのチェックを常に行うわけではないため、誤った使用は未定義動作に近い結果を招く可能性がある。

次に、union型に関する問題も指摘された。unionは、異なるデータ型が同じメモリ領域を共有するための機能だ。例えば、整数型と浮動小数点数型が同じメモリ領域を使用するデータ構造を定義できる。しかし、unionに整数を格納した後、浮動小数点数として読み出そうとする場合、Odinの仕様がその挙動をどこまで保証しているのかが曖昧だという議論があった。C/C++では、これは典型的な未定義動作となる。Odinは安全性を重視するが、このような低レベルな操作においてプログラマの責任をどこまで求めるか、という点で議論の余地がある。

また、低レベルなポインタ演算、例えばポインタを直接操作して、プログラムに割り当てられていないメモリ領域や、アクセスが許可されていない領域を指すようにした場合の挙動も問題になりうる。OdinはC/C++に比べてポインタの自由度を制限しているものの、unsafeブロックなどを使うことで低レベルな操作が可能になる。これらの操作においては、依然としてプログラマがメモリの安全性を厳密に管理する必要があり、ミスがあれば予測不能な結果を生む。

符号付き整数のオーバーフローについても議論がある。C/C++では符号付き整数オーバーフローは未定義動作だが、Odinでは符号なし整数と同様に「ラップアラウンド」(最大値を超えると最小値に戻り、最小値を下回ると最大値に戻る)が保証されるべきだという意見も出た。しかし、現在のOdinの実装や仕様が全ての状況でそれを保証しているわけではない、という指摘もある。

Odinの設計者もこれらの議論に参加し、Odinの哲学とアプローチを説明している。Odinは、C/C++のような「何が起こるか全く予測できない、危険なコンパイラ最適化を許す未定義動作」を排除しようと努めている。プログラマが意図しない挙動を引き起こす可能性のある操作に対しては、コンパイル時にエラーを出すか、実行時にプログラムを停止させる(パニック)ことで、予測可能なエラー処理を提供することを目指している。しかし、設計者は、特定の低レベルな操作やunsafeブロックの使用においては、プログラマがメモリ安全性やデータの一貫性を管理する責任があることを強調している。Odinは、プログラマが「この操作は安全である」と信頼して行われるべき操作に対しては、全てのチェックを自動的には行わない。このようなケースは、C/C++の未定義動作ほど破壊的ではないかもしれないが、依然として言語仕様が明確に動作を規定しておらず、実装に依存する可能性があり、プログラマは注意する必要がある。

結局のところ、どんなプログラミング言語を使っても、低レベルなシステムプログラミングを行う際には、プログラマがメモリの構造やデータ型に関する深い知識を持ち、コードの安全性を確保する責任は常にある。Odinのような新しい言語が、未定義動作という長年の課題にどう向き合い、その概念をどう定義し、どう扱うかは、その言語の安全性、信頼性、そして普及に直結する非常に重要な課題だ。Odinは多くの一般的な未定義動作の落とし穴を避けるための強力な仕組みを提供しているが、その限界とプログラマの責任の範囲を理解することが、安全なOdinプログラムを書く上で不可欠だ。

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