【ITニュース解説】【Python】yieldでなんちゃって非同期処理
2025年09月14日に「Zenn」が公開したITニュース「【Python】yieldでなんちゃって非同期処理」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Pythonの`yield`は普段あまり使わない機能だが、データを少しずつ生成したり、一時停止と再開を繰り返す「なんちゃって非同期処理」を実現できる。その便利な使い方を解説する。
ITニュース解説
yieldというキーワードはPythonプログラミングにおいて、特に初学者にとってはあまり馴染みがなく、普段のコーディングで頻繁に使う機会は少ないかもしれない。しかし、このキーワードはPythonの強力な機能である「ジェネレータ」を理解する上で不可欠であり、特定の状況下で非常に役立つ概念を提供する。
通常のPython関数は、呼び出されると最初から最後まで処理を実行し、結果を一度に返すか、何も返さずに終了する。そして、一度処理が終わると、その関数内のローカル変数の値や実行状態は全て破棄される。一方、yieldキーワードを含む関数は「ジェネレータ関数」と呼ばれる。ジェネレータ関数は、通常の関数とは異なり、値を一度に全て計算して返すのではなく、必要に応じて値を一つずつ生成して返す特性を持つ。
ジェネレータ関数が呼び出されると、すぐに処理を開始するのではなく、ジェネレータオブジェクトという特殊なオブジェクトを返す。このジェネレータオブジェクトは「イテレータ」の一種であり、next()関数を使って次の値を要求することができる。next()が呼び出されるたびに、ジェネレータ関数は前回のyieldが実行された時点から処理を再開し、次のyield文に到達するまで実行される。そして、再びyieldが実行されると、その時点での値を呼び出し元に返し、関数内の実行状態(ローカル変数の値や次に実行すべきコードの位置など)を全て保持したまま、一時停止する。次にnext()が呼び出されるまで、ジェネレータ関数はその状態を保ったまま待機するのだ。
この「処理の一時停止と再開」のメカニズムが、yieldが「なんちゃって非同期処理」と呼ばれる理由につながる。非同期処理とは、時間のかかる処理(例えば、ネットワークからのデータ取得やファイルの読み書きなど)を実行している間に、他の処理を止めることなく並行して進める手法を指す。これにより、プログラム全体が応答不能になることを防ぎ、ユーザー体験を向上させたり、システムのリソースを効率的に利用したりできる。
yieldを使ったジェネレータは、真の非同期処理のようにオペレーティングシステムが複数のタスクを並行に実行するわけではない。あくまで単一の実行スレッド内で、複数のタスク間を協調的に切り替えながら実行する仕組みを提供する。これは「コルーチン」と呼ばれる概念に近い。ある処理が時間のかかる作業を開始する前にyieldを実行して、一旦制御を呼び出し元に返す。呼び出し元は別の処理を実行し、必要に応じて再び元の処理に制御を戻すためにnext()を呼び出す。この協調的なタスクの切り替えにより、複数の処理が細切れに実行され、あたかも同時に進行しているかのように見せかけることができる。
例えば、複数の独立した処理A、B、Cがあったとする。通常の関数であれば、Aが完了するまでBやCは開始できない。しかし、A、B、Cをそれぞれジェネレータ関数として定義し、それぞれが適度なタイミングでyieldを呼び出すように設計すると、Aが途中でyieldして処理をBに渡し、Bが途中でyieldして処理をCに渡し、Cが途中でyieldして処理をAに戻す、といった協調的な実行が可能になる。これにより、どの処理も長時間CPUを占有することなく、全体としてスムーズな進行を実現できる。これが「なんちゃって」非同期処理と呼ばれる所以である。オペレーティングシステムによるプリエンプティブな(強制的な)タスク切り替えではなく、プログラマーが意図的にyieldを使って処理を「譲る」ため、協調的という表現が使われる。
yieldの主な利点の一つは、メモリ効率の高さである。例えば、非常に巨大なデータセットを扱う場合、通常の関数でそのデータ全てをメモリにロードしてから処理しようとすると、メモリが不足してしまう可能性がある。しかし、ジェネレータ関数を使えば、データを一度に全てメモリに読み込むのではなく、必要な時に必要な分だけyieldで生成して渡すことができる。これにより、メモリの使用量を大幅に抑えることが可能になる。また、無限に続くシーケンス(例えば、無限のフィボナッチ数列)を表現する際にも、ジェネレータは非常に有効である。全てを前もって計算する必要がなく、必要な要素だけを順次生成できるからだ。
このように、yieldキーワードは、プログラムの実行フローを一時停止させ、その状態を保持し、後で再開するというユニークなメカニズムを提供する。これにより、メモリ効率の良いデータ処理、無限シーケンスの表現、そして協調的なタスクの切り替えによる「なんちゃって非同期処理」の実現など、様々な高度なプログラミングパターンを可能にする。普段はあまり意識しない機能かもしれないが、その原理を理解することは、より複雑なシステムを設計したり、効率的なコードを書いたりする上で、システムエンジニアを目指す者にとって非常に価値のある知識となる。