【ITニュース解説】Sony and other music labels settle copyright lawsuit against the Internet Archive
2025年09月16日に「Engadget」が公開したITニュース「Sony and other music labels settle copyright lawsuit against the Internet Archive」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
ソニーなど音楽レーベルが、Internet Archiveの古いSP盤デジタル化プロジェクトを著作権侵害で提訴していた件で、両者は和解に至った。和解内容は非公開だが、訴訟は取り下げられる。デジタル技術と著作権のバランスが問われた事例だ。
ITニュース解説
今回のニュースは、音楽業界の大手レーベルであるソニー・ミュージックエンタテインメントなどが、インターネット上の巨大なデジタル図書館として知られるインターネットアーカイブに対し、著作権侵害の訴訟を起こし、最終的に和解に至ったというものだ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この一件は、デジタルコンテンツを扱う上で避けては通れない「著作権」という非常に重要な概念を具体的に理解する良い機会となる。
まず、このニュースの核心にあるのは、インターネットアーカイブが推進していた「Great 78 Project」という取り組みだ。これは、かつて世界中で愛された古い78回転のSP盤レコードに記録された音楽をデジタル化し、保存しようとするプロジェクトだった。SP盤レコードは非常にデリケートな素材でできており、物理的に劣化しやすいだけでなく、再生機器も少なくなっているため、その音源は失われる危機に瀕していると考えられていた。インターネットアーカイブは、こうした貴重な文化遺産を未来に継承するために、デジタル保存の必要性を感じ、このプロジェクトを進めていたわけだ。
しかし、この行為に対して、ソニー・ミュージックエンタテインメントやユニバーサル・ミュージック・グループといった主要な音楽レーベルが、インターネットアーカイブを提訴したのだ。彼らの主張は、このプロジェクトでデジタル化された楽曲群、具体的にはフランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、マイルス・デイヴィス、ルイ・アームストロングといった伝説的なアーティストの作品を含む数千曲が、すでにSpotifyやApple Musicのような合法的な音楽ストリーミングサービスを通じて入手可能であり、失われる危険性はないというものだった。つまり、インターネットアーカイブが行ったデジタル化と公開は、著作権者の許可なく行われたものであり、既存のビジネスモデルと著作権保護の原則に反するという立場だ。
著作権とは、簡単に言えば、著作者が作成した作品(音楽、文章、プログラム、画像など)に対して与えられる独占的な権利のことだ。この権利があることで、著作者は自分の作品がどのように利用されるかをコントロールでき、それによって対価を得ることも可能になる。デジタル時代において、音楽や映像、ソフトウェアといったコンテンツは容易に複製され、インターネットを通じて瞬時に世界中に拡散されるようになった。そのため、著作権の保護は、クリエイターが創作活動を続け、正当な報酬を得るための基盤として、ますます重要になっている。システムエンジニアとして、コンテンツを扱うシステムやサービスを開発する際には、この著作権の概念を深く理解し、常に意識する必要がある。
今回の訴訟では、レーベル側は当初2,749曲の著作権侵害を訴え、その後さらに4,142曲へと対象を拡大した。もしこの訴訟が和解に至らず、裁判所がレーベル側の主張を全面的に認めていた場合、インターネットアーカイブは1曲あたり最大15万ドル、日本円にして約2000万円以上という巨額の賠償金を支払うよう命じられる可能性があった。4,000曲以上となると、その総額は天文学的な数字に上り、インターネットアーカイブの存続すら危うくするほどの莫大なリスクだったと言える。このような状況を回避するため、双方で話し合いが進められ、最終的に和解という形で解決に至ったのだ。和解の内容は公開されていないが、双方にとってこれ以上の法廷闘争を避けるための合理的な選択だったと推測される。
インターネットアーカイブが著作権を巡る訴訟に巻き込まれるのは、今回が初めてではない。記憶に新しいのは、2020年のパンデミック中に彼らが立ち上げた「National Emergency Library」プロジェクトに関する訴訟だ。このプロジェクトでは、世界中の図書館が閉鎖された状況を受けて、インターネットアーカイブが保有する140万冊もの電子書籍、その中には著作権保護されている作品も含まれていたが、それらを一時的にオンラインで無料公開した。これに対して、ハシェット・ブックグループをはじめとする米国の主要出版社が著作権侵害で提訴した。インターネットアーカイブは、「フェアユース」(公正な利用)の原則に基づいて、教育や研究、ニュース報道などの目的であれば、著作権者の許諾なく作品の一部を利用できるという主張を展開したが、裁判所はこの主張を認めなかった。結果としてインターネットアーカイブは敗訴し、この決定に対して上訴したが、再び裁判所は出版社の主張を支持した。
この二つの事例から学べることは非常に大きい。特にシステムエンジニアを目指す皆さんにとっては、「技術的に可能だからといって、何でもやっていいわけではない」という原則を理解することが重要だ。デジタル技術は、コンテンツの共有や配布を驚くほど容易にするが、それに伴う法的責任も大きくなる。著作権の保護期間が過ぎた「パブリックドメイン」のコンテンツと、まだ著作権が有効なコンテンツを明確に区別すること、そして著作権のあるコンテンツを利用する際には必ず適切な許諾を得るか、フェアユースのような法的例外に該当するかを慎重に判断する必要がある。
また、インターネットアーカイブのように公益性の高い活動であっても、既存の法律やビジネスモデルとの摩擦は避けられないという現実も示している。デジタル技術を活用して社会に貢献しようとする際には、技術的な側面だけでなく、法務、倫理、社会的な影響といった多角的な視点からプロジェクトを検討する能力が求められる。未来のシステムエンジニアとして、皆さんが関わることになるであろうデータやコンテンツは、単なる情報ではなく、誰かの権利や創造性が込められたものであるという意識を持つことが、信頼されるシステムやサービスを構築する上で不可欠となるだろう。今回のニュースは、デジタル世界における権利と責任のバランスを考える上で、非常に示唆に富む出来事と言える。