LED(エルイーディー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LED(エルイーディー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
発光ダイオード (ハッコウダイオード)
英語表記
LED (エルイーディー)
用語解説
LEDはLight Emitting Diodeの略称であり、日本語では発光ダイオードと呼ばれる。これは電流を流すと光を放出する半導体素子の一種である。IT分野においては、コンピュータやスマートフォンのディスプレイを背面から照らすバックライト、サーバーやネットワーク機器の動作状態を示すインジケーターランプ、光ファイバー通信における光源など、極めて広範な用途で利用されている。従来の光源であった白熱電球や蛍光灯と比較して、消費電力が少なく、寿命が長く、小型化が可能であるといった数多くの利点を持つため、多くの電子機器において不可欠な構成要素となっている。
LEDの動作原理を理解するためには、まずダイオードの基本特性と半導体の性質を知る必要がある。ダイオードとは、電流を一定の方向にしか流さない整流作用を持つ電子部品である。LEDもこのダイオードの一種であり、p型半導体とn型半導体と呼ばれる2種類の半導体を接合した構造を持つ。p型半導体は、電子が不足し、正孔(ホール)と呼ばれるプラスの電荷を持つキャリアが多い状態にある。一方、n型半導体は、余剰な電子というマイナスの電荷を持つキャリアが多い状態にある。この二つを接合した部分をpn接合と呼ぶ。pn接合部では、電子と正孔が互いに打ち消し合い、キャリアが存在しない空乏層という領域が形成される。この状態では電流は流れない。しかし、p型側にプラス、n型側にマイナスの電圧(順方向電圧)をかけると、p型半導体の正孔とn型半導体の電子がそれぞれpn接合部に向かって移動する。そして、接合部で電子と正孔が出会い、再結合する。この再結合の際、電子が持っていたエネルギーが、光のエネルギーとして放出される。この現象はエレクトロルミネッセンスと呼ばれ、LEDが発光する基本的な仕組みである。放出される光の色、すなわち波長は、使用される半導体材料の組成によって決定される。例えば、窒化ガリウム(GaN)系の材料からは青色や緑色の光が、ガリウムヒ素(GaAs)系の材料からは赤色や赤外線の光が得られる。
単一の半導体材料で直接白色光を効率よく生成することは技術的に困難であるため、一般的には複数の色を組み合わせることで白色光が作られている。現在、最も広く採用されている方式は、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせるものである。これは、高輝度な青色を発するLEDチップの上に、黄色の光を出す蛍光体を塗布または配置する構造を持つ。青色LEDから発せられた光の一部は、そのまま透過し、残りの一部は蛍光体に吸収される。蛍光体は吸収した青色光のエネルギーによって励起され、黄色の光を放出する。この透過した青色光と、蛍光体から放出された黄色光が混ざり合うことで、人間の目には白色光として認識される。これは、光の三原色における青と黄が補色の関係にあることを利用した原理である。もう一つの方式として、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のLEDチップを一つのパッケージ内に近接して配置し、それらを同時に点灯させることで白色光を得る方法がある。このRGB方式は、各色のLEDの光量を個別に制御することで、白色だけでなく、様々な色を自由に作り出すことが可能であるため、大型のLEDディスプレイや装飾用の照明などに利用される。
システムエンジニアが関わるITインフラやデバイスにおいても、LEDは基盤技術として多用されている。その代表例が液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトである。液晶パネル自体は発光しないため、映像を表示するには背面から光を当てる光源が必要となる。かつては冷陰極蛍光管(CCFL)が主流であったが、現在ではそのほとんどがLEDに置き換わっている。LEDバックライトは、薄型化、軽量化、低消費電力化を実現し、ノートパソコンやスマートフォンの携帯性を大きく向上させた。また、発色の再現性やコントラスト比の向上にも寄与している。次に、サーバー、ルーター、スイッチといったデータセンターやネットワークを構成する機器のステータス表示用インジケーターランプも、LEDの重要な用途である。電源のON/OFF、ハードディスクへのアクセス状態、ネットワークの通信状況などを、緑、橙、赤といった異なる色の点灯や点滅で視覚的に示すことができる。LEDは小型で消費電力が極めて少ないため、高密度に実装される機器の状態を効率的に監視する上で不可欠である。さらに、光通信の分野でもLEDは光源として利用される。レーザーダイオード(LD)に比べると、通信速度や伝送距離では劣るものの、安価で駆動回路が単純、かつ長寿命であるという利点から、比較的短距離のLAN(Local Area Network)などで光ファイバーを通してデータを送る際の光源として採用されることがある。この場合、送信したいデジタルデータをLEDの高速な点滅に変換し、光信号として伝送する。
LEDには多くの優れた特性がある。第一に、電気エネルギーから光エネルギーへの変換効率が高く、極めて省電力である点。第二に、半導体素子であるため物理的な劣化が少なく、数万時間という非常に長い寿命を持つ点。第三に、点灯・消灯の応答速度がマイクロ秒単位と非常に高速であるため、高速な信号伝送や映像表示に適している点である。加えて、素子自体が小型軽量で設計の自由度が高く、固体であるため振動や衝撃に強いという機械的な堅牢性も備えている。一方で、システム設計において注意すべき点も存在する。LEDは熱に弱いという特性を持つ。素子自体の温度が高くなると、発光効率が低下したり、寿命が著しく短くなったりする。そのため、特に高出力のLEDを使用する場合には、ヒートシンクや冷却ファンを用いた適切な放熱設計が不可欠となる。また、LEDの光は指向性が強く、特定の方向に集中して放射される傾向がある。広範囲を均一に照らすためには、拡散板やレンズといった光学部品を組み合わせて配光を制御する必要がある。さらに、LEDを駆動させるには、定格に合った適切な電圧と電流を供給することが重要である。過大な電流を流すと素子が破壊されるため、通常は定電流駆動回路を用いて安定した電流を供給する設計が求められる。
以上のように、LEDはpn接合を持つ半導体に順方向電圧を印加した際に生じるエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子である。省電力、長寿命、小型、高速応答といった優れた特性から、IT分野ではディスプレイのバックライト、機器のインジケーター、光通信の光源など、ハードウェアを支える基本的な部品として広く浸透している。システムエンジニアとして、機器の仕様や動作原理を深く理解する上で、LEDのこのような基本的な知識を有しておくことは有益である。