【ITニュース解説】Svelte’s Growing Pains: Runes, Stores, and the Quest for Standards
2025年09月17日に「Dev.to」が公開したITニュース「Svelte’s Growing Pains: Runes, Stores, and the Quest for Standards」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Svelteに新機能「Runes」が導入され、従来のデータ管理「Stores」の良さが薄れたと感じる開発者もいる。「Stores」は状態管理に優れ、標準化に役立ったが、「Runes」への移行でコードの標準化が課題に。筆者はSvelteを使い続けるため、標準化支援ライブラリ開発で貢献する。
ITニュース解説
Svelteは、ウェブアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)を構築するためのフレームワークの一つで、コードを開発時に効率的なJavaScriptに「コンパイル」することで、高速でシンプルなアプリケーション作成を可能にする。このSvelteの開発者コミュニティでは、最近のバージョンアップで導入される「Runes」という新機能が、既存の「Stores」という仕組みとどう異なり、なぜ一部の開発者がその変化に「成長痛」を感じているのかが議論されている。この記事では、このSvelteの大きな変化について、システムエンジニアを目指す初心者にもわかるように解説する。
これまでSvelteの大きな魅力の一つは、「Stores(ストア)」という強力な状態管理の仕組みだった。状態管理とは、アプリケーション内で使われるデータ(ユーザー入力、サーバーデータ、画面表示の状態など)をどのように保持し、変更し、複数のコンポーネント間で共有するかを管理することだ。
Storesは、この状態管理を「オブザーバブル(Observable)」という考え方で行う。オブザーバブルとは、データが時間とともに変化する様子を表現する概念だ。簡単に言えば、あるデータが変化したときに、そのデータを「観察している」すべての部分に自動的に通知が届き、それに応じて処理が実行されるという仕組みである。筆者は、このStoresのオブザーバブルな特性を高く評価していた。
例えば、ユーザーの操作やサーバーからのAPI呼び出しといった、時間とともに発生する出来事をすべてオブザーバブルとして扱うことで、アプリケーション全体のデータフローを統一的に見通せるようになる。これにより、データの流れが明確になり、大規模なプロジェクトでも複雑なバグの発生を抑え、全体的なアーキテクチャ(設計)を堅牢に保つことができた。
筆者の経験では、巨大なSvelteプロジェクトにおいて、開発者がStoresを単なる「値」としてではなく、「変化する可能性のあるオブザーバブル」として意識することが重要だったと指摘している。この考え方が浸透すると、どこでデータが必要か、そのデータがどのように変化し、UIに反映されるかといった一連の流れが非常に分かりやすくなる。これは、例えばサーバーサイドフレームワークであるNestJSでRxJSというライブラリを使ってオブザーバブルを扱うのと似ており、すべてをオブザーバブルとして扱うことで、コード全体の一貫性が保たれる。
もちろん、オブザーバブルの管理が複雑になるケースも存在するが、そうした特殊なケースは個別の解決策で対応し、システムの大部分では標準的なオブザーバブルの考え方を維持できる。特に注意すべきは、オブザーバブルを手動で「購読(subscribe)」することだ。購読した場合は、必ず不要になったときに購読を解除(クリーンアップ)しなければメモリリークなどの問題が発生する可能性があるため、手動購読は極力避け、Svelteの組み込み機能やRxJSなどのライブラリが提供する安全な方法を使うのが鉄則だ。
さらに筆者は、Storesをコンポーネント内部の状態管理にも活用していた。これにより、アプリケーション全体で同じツール(Stores)を使って状態を管理できるため、コードの一貫性が保たれ、学習コストも削減できるという利点があった。そして、Svelteがもともと持っていた特徴として、RxJSというリアクティブプログラミングのライブラリと非常に高い親和性があった。Storesの存在のおかげで、オブザーバブルがSvelteにおいて「第一級市民」、つまり特別な考慮を必要とせず自然に扱えるものとなっていたため、RxJSの豊富な機能をそのまま活用し、複雑な非同期処理やイベント処理を簡単に記述できたのだ。
しかし、Svelteのバージョン5で導入が予定されている「Runes(ルーン)」という新しいリアクティビティプリミティブ(反応性を実現する基本的な要素)の登場により、これまでの標準的な開発スタイルに大きな変化がもたらされようとしている。
筆者は、Runes自体が悪いわけではないとしながらも、これまで築き上げられてきたSvelteの「標準」が、この大きな変化によって失われつつあると感じている。これはSvelte特有の問題ではなく、既存の膨大なコードベースやコミュニティを持ちながら、後方互換性を保ちつつ根本的な技術的シフトを行う際に避けられない困難だとも指摘している。例えば、Angularという別のフレームワークでも「Signals」と「Observable」の共存が議論されているが、Svelteの場合はRunesがStoresを「置き換えようとしている」ように見える点が問題視されている。
新しい機能が導入されることは進化の一部であり、それ自体に誤りはない。しかし、この大きな変化は、既存の多くのライブラリやツール、そして開発コミュニティ全体に影響を与える。既存のライブラリがすぐに書き換えられる必要はないかもしれないが、Svelteコミュニティ外の開発者が新しいライブラリをSvelte向けに開発しようとするとき、彼らは最新バージョンの機能(Runes)を使って開発したいと考えるだろう。
また、企業やプロジェクトマネージャーたちは、常に最新バージョンのフレームワークを使うことを求める傾向にある。例えば、契約上の要件であったり、セキュリティ上の理由であったり、あるいは単に最新情報を重視する方針であったりする。このような状況では、Svelteが内部的に複数のリアクティビティモデルを持つことで、開発者はどの機能を使うべきか迷い、コードの標準化が難しくなる。最終的には、ほとんどのプロジェクトがSvelteの最新バージョン(Runesを含む)に移行することを強いられるだろう。しかし、これには既存のコードベースに大規模な変更を加える必要があり、多大な時間と労力がかかることが予想される。
筆者は、Svelteのシンプルで自然な開発体験を愛しており、今後もSvelteを使い続けたいと考えている。しかし、Runesの登場によって生じた「標準の喪失」という波を乗り越え、自身のコードベースを新しい時代に適応させるためには、かなりの時間と努力が必要だと感じている。
Svelteの開発チームは、この大きな変化の中で、コミュニティを正しい方向へと導こうと努力していると筆者は評価している。そして、筆者自身もこの変化を乗り越え、Svelteコミュニティに貢献したいと考えている。特にオブザーバブルやサービス(ビジネスロジックを管理する部分)の領域で、プロジェクトの標準化を助けるようなライブラリを開発中である。具体的には、GraphQLクライアントであるApollo GraphqlのSvelte向け抽象化や、Svelte 5でRxJSをより使いやすくするためのライブラリを開発している。
このように、Svelteは進化の過程で、開発者にとっての「成長痛」とも言える大きな変化に直面している。しかし、これはより良いSvelteを目指すための必然的なステップであり、コミュニティ全体でこの課題に取り組み、新しい標準を築いていく時期が来ていると言えるだろう。