【ITニュース解説】富士フイルムヘルスケアアメリカ製Synapse MobilityにおけるWebパラメタの外部制御による権限昇格の脆弱性

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ITニュース概要

富士フイルムヘルスケアアメリカ製の医療用画像ビューア「Synapse Mobility」に脆弱性が存在する。外部からURLなどの値を不正に操作されることで、本来許可されていない高い権限を奪取され、システムを乗っ取られる危険がある。

ITニュース解説

富士フイルムヘルスケアアメリカが提供する医療用画像ビューアアプリケーション「Synapse Mobility」において、セキュリティ上の重大な弱点、すなわち脆弱性が発見された。この脆弱性は「Webパラメタの外部制御による権限昇格」と呼ばれる種類のもので、認証済みのユーザーが本来許可されていない操作を実行できてしまう危険性を含んでいる。システムエンジニアを目指す上で、このような脆弱性がなぜ発生し、どのような脅威をもたらすのかを理解することは極めて重要である。 まず、この問題の舞台となる「Synapse Mobility」は、医師や医療従事者が、病院内のサーバーに保管されているレントゲン写真、CTスキャン、MRIといった患者の医療用画像を、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末から閲覧するためのシステムである。極めて機密性の高い個人情報かつ生命に関わる情報を扱うため、高度なセキュリティが求められる。 脆弱性の核心を理解するために、Webアプリケーションが動作する基本的な仕組みから見ていく必要がある。私たちが普段Webサイトを閲覧したり、Webサービスを利用したりする際、手元のコンピュータやスマートフォン(クライアント)と、サービスを提供しているコンピュータ(サーバー)との間で通信が行われている。クライアントはサーバーに対して「このページが見たい」「この情報を登録したい」といった要求(リクエスト)を送り、サーバーはそれに応えて情報や処理結果(レスポンス)を返す。このリクエストの中には、サーバーに具体的な指示を伝えるための情報が含まれており、これを「Webパラメタ」と呼ぶ。例えば、特定の患者の画像データを表示するリクエストには、「どの患者のデータを表示するか」を指定する患者IDなどがパラメタとして含まれる。 今回の脆弱性は、このWebパラメタを悪意のあるユーザーが意図的に書き換えること、すなわち「外部制御」できてしまう点に問題がある。そして、その改ざんされたパラメタを受け取ったサーバー側のチェックが不十分なため、本来そのユーザーには与えられていないはずの権限での操作が実行されてしまう。これが「権限昇格」である。具体的には、ログイン自体は正常に行っている、ある権限レベルのユーザーが、サーバーに送るリクエストのパラメタを不正に書き換えることで、自分よりも高い権限を持つ管理者や、本来アクセスできないはずの別のユーザーになりすましたかのような操作ができてしまう可能性がある。 例えば、ある医師AがSynapse Mobilityにログインし、担当患者であるXさんの画像データを見る権限を持っていたとする。このとき、アプリがサーバーに送るリクエストには「ユーザーAが、患者ID=Xのデータを要求する」という内容のパラメタが含まれている。しかし、この脆弱性が存在すると、悪意を持ったユーザーAがリクエストを送信する直前に、パラメタを「患者ID=Y」と書き換えることができてしまう。サーバー側で「ユーザーAは本当に患者Yのデータを見る権限を持っているか」という厳密な検証が行われていない場合、サーバーは改ざんされたリクエストを正しいものと誤認し、担当外であるYさんの医療画像をユーザーAに送ってしまう。これが、この脆弱性が引き起こす脅威の一例である。 この事例は、システム開発におけるセキュリティの基本原則を学ぶ上で非常に重要な教訓を含んでいる。それは「クライアントから送られてくる情報は決して信用してはならない」という考え方である。クライアント側のアプリケーションはユーザーの手元で動作するため、専門的な知識があれば、その動作や送信するデータを改ざんすることは比較的容易である。そのため、アクセス権の確認や重要なデータの正当性検証といったセキュリティに関わる処理は、必ず開発者が管理できるサーバー側で実行しなければならない。クライアント側で入力チェックを行っていたとしても、それはあくまでユーザーの利便性を高めるための補助的なものに過ぎず、セキュリティの砦にはなり得ない。今回のケースも、クライアントから送られてきたパラメタをサーバーが鵜呑みにしてしまった結果、引き起こされた問題であると言える。 この脆弱性が悪用された場合、医療情報という極めてセンシティブなデータが漏えいするだけでなく、不正な操作によってデータが改ざんされるといった、より深刻な事態に発展するリスクも考えられる。医療現場の信頼性を根幹から揺るがしかねない、非常に危険な脆弱性である。 幸い、この問題に対しては、開発元である富士フイルムヘルスケアアメリカが対策を施した新しいバージョンのソフトウェアを提供している。Synapse Mobilityを運用している医療機関のシステム管理者は、速やかに関連情報を確認し、ソフトウェアを最新バージョンにアップデートすることが、最も確実かつ重要な対策となる。システムを開発する側は、このような脆弱性を生まないよう、サーバーサイドでの厳密な権限チェックを徹底することが求められる。そして、システムを利用する側は、提供されるセキュリティアップデートを迅速に適用することの重要性を改めて認識する必要がある。この一件は、ITシステムが社会の重要な基盤となる現代において、セキュリティ対策がいかに重要であるかを示す実例と言えるだろう。

【ITニュース解説】富士フイルムヘルスケアアメリカ製Synapse MobilityにおけるWebパラメタの外部制御による権限昇格の脆弱性