【ITニュース解説】Untitled

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Untitled」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

ある開発者が、自身で作成したコードの動作サンプル『Pen』を公開した。プログラムが実際に動く様子を確認できる。

出典: Untitled | Dev.to公開日:

ITニュース解説

このニュース記事で紹介されているのは、ウェブブラウザでテキストを音声に変換して読み上げる、いわゆる「テキスト読み上げ(Text-to-Speech、TTS)」アプリケーションのデモンストレーションである。これは「Web Speech API」という技術を使って実現されており、ユーザーが入力したテキストを、様々な声の種類や速度、高さで読み上げることができる。システムエンジニアを目指す初心者にとって、ウェブ開発の基本的な要素とブラウザが提供する高度な機能を学ぶ良い題材となる。

まず、このアプリケーションの根幹をなす「Web Speech API」について説明する。これは、ウェブブラウザが音声認識(Speech Recognition)や音声合成(Speech Synthesis)といった、音声に関する機能を提供するための標準的なインターフェースである。今回の記事で使われているのは、テキストを音声に変換する「Speech Synthesis」、つまり音声合成の機能だ。このAPIを使うことで、開発者は特別なソフトウェアをインストールすることなく、ブラウザ上で直接テキスト読み上げ機能を実現できる。

次に、このアプリケーションがどのように構築されているか、ウェブ開発の基本要素に沿って見ていこう。ウェブアプリケーションは主にHTML、CSS、JavaScriptの三つの技術で構成される。

HTML(HyperText Markup Language)は、ウェブページの構造を定義する言語である。このアプリケーションでは、ユーザーが操作するインターフェースの骨格がHTMLで作成されている。具体的には、テキストを入力するための大きな入力欄(<textarea>)、読み上げを開始するボタン、一時停止や再開、停止のボタンがある。また、声の種類を選択するためのドロップダウンリスト(<select>)や、読み上げの速度(rate)や声の高さ(pitch)を調整するためのスライダー(<input type="range">)もHTMLで配置されている。これらの要素がウェブページのどこにどのような目的で存在するかを定義しているのがHTMLの役割だ。

CSS(Cascading Style Sheets)は、HTMLで定義されたウェブページの見た目を整える言語である。このアプリケーションでは、入力欄やボタンの配置、色、サイズ、形状などがCSSによって定義されている。例えば、ウェブページ全体の中央にアプリケーションのコンテナを配置したり、ボタンにマウスを重ねたときに色が変化するような視覚的な効果もCSSが担当する。これにより、ユーザーにとって使いやすく、見た目にも美しいインターフェースが提供される。CSSは、ウェブサイトのデザインとユーザー体験を向上させるために不可欠な技術である。

そして、JavaScriptは、ウェブページに動的な動きやインタラクティブな機能を追加するプログラミング言語である。このテキスト読み上げアプリケーションの「頭脳」とも言える部分がJavaScriptで書かれている。ユーザーがボタンをクリックしたり、テキストを入力したり、声の種類や速度、高さを変更したりする際に、実際に何が起こるかをJavaScriptが制御する。

JavaScriptの具体的な動作を見ていこう。 まず、JavaScriptはHTMLで定義された各要素(テキスト入力欄、ボタン、ドロップダウンリスト、スライダーなど)を特定し、プログラムからそれらを操作できるように取得する。これはDOM(Document Object Model)操作と呼ばれるウェブ開発の基本的な技術である。

次に、ユーザーの操作に応じて処理を実行するための「イベントリスナー」が設定される。例えば、「読み上げ」ボタンがクリックされたときには、JavaScriptがそのイベントを検知し、テキスト入力欄から現在のテキストを取得する。

Web Speech APIを利用するためには、SpeechSynthesisUtteranceというオブジェクトを作成する必要がある。このオブジェクトは、読み上げたいテキストや、どの声で読み上げるか、読み上げの速度や高さなどの詳細な設定を保持する。アプリケーションでは、ユーザーが入力したテキストをこのオブジェクトに渡し、さらにユーザーが選択した声の種類、スライダーで設定した速度と高さの値をSpeechSynthesisUtteranceオブジェクトのプロパティとして設定する。

特に声の選択機能は少し複雑だ。ブラウザが利用可能な声のリストは、speechSynthesis.getVoices()というメソッドで取得できる。しかし、このリストはブラウザが読み込みを完了するまで利用できない場合があるため、speechSynthesis.onvoiceschangedというイベントを利用して、声のリストが利用可能になったときにドロップダウンリストを更新する処理が記述されている。これにより、ユーザーは自分のシステムで利用できる様々な言語や種類の声を選ぶことができるようになる。

全ての準備が整ったら、speechSynthesis.speak()というメソッドを呼び出すことで、SpeechSynthesisUtteranceオブジェクトに設定された内容に基づいて、ブラウザがテキストの読み上げを開始する。 さらに、アプリケーションには「一時停止」「再開」「停止」ボタンもある。これらは、speechSynthesis.pause()speechSynthesis.resume()speechSynthesis.cancel()といったメソッドを呼び出すことで実現される。これにより、ユーザーは読み上げを途中でコントロールできる柔軟性が与えられる。

また、速度やピッチのスライダーを操作すると、その値がリアルタイムで表示される機能もJavaScriptで実装されている。これは、スライダーの入力イベントを検知し、表示用のHTML要素のテキスト内容を更新することで実現している。

このテキスト読み上げアプリケーションは、ウェブ開発におけるHTML、CSS、JavaScriptの連携の重要性を明確に示している。HTMLで構造を作り、CSSで見た目を整え、JavaScriptで動きと機能を加える。さらに、Web Speech APIのように、ブラウザが標準で提供する強力なAPIを活用することで、開発者は複雑な機能も比較的簡単に実現できることを示している。システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなシンプルなアプリケーションの仕組みを理解することは、ウェブアプリケーション開発の基礎を固め、将来的にさらに高度なシステムを構築するための第一歩となるだろう。ブラウザが持つ機能を理解し、それらを組み合わせて新しい体験を作り出すという思考は、現代のIT開発において非常に価値のある能力だ。

【ITニュース解説】Untitled | いっしー@Webエンジニア