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【ITニュース解説】The web has a new system for making AI companies pay up

2025年09月10日に「The Verge」が公開したITニュース「The web has a new system for making AI companies pay up」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

WebパブリッシャーがAIによるコンテンツ利用条件を設定できる新ライセンス標準「RSL」が登場した。RedditやYahooなどが支持し、AI開発者がウェブコンテンツをスクレイピングする際の対価支払いの仕組みを定める狙いがある。

ITニュース解説

現代のIT社会において、AI技術は急速に進化を遂げ、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えている。特に、文章を生成したり、質問に答えたりする大規模なAIモデルの登場は目覚ましく、これらのAIはインターネット上にある膨大な量の情報を学習することでその能力を獲得している。具体的には、ウェブサイトに公開されている記事やブログ、フォーラムの投稿など、あらゆる種類のテキストデータがAIの「先生」となっていると言える。

しかし、このAIの学習プロセスには、これまで明確なルールや合意が十分に整備されてこなかったという課題がある。多くのAIシステムは、ウェブサイトを自動的に巡回し、公開されているコンテンツをプログラム的に収集する「スクレイピング」と呼ばれる手法を用いてデータを集めている。これはウェブサイトのコンテンツをまるでコピーして自社のデータベースに保存するような行為だが、コンテンツを作成したパブリッシャー側からすると、自分たちが時間や労力をかけて生み出した作品が、AIの学習に無断で、あるいは無報酬で利用されているという状況だった。コンテンツの作者や出版社は、その作品がどのように利用され、誰に利益をもたらしているのかについて、ほとんどコントロールができない状態にあったのだ。

このような状況の中、ウェブパブリッシャーがAIシステム開発者によるコンテンツ利用の条件を自ら設定できる新しいライセンス標準「Really Simple Licensing (RSL)」が登場した。これは、ウェブ上のコンテンツ提供者が、AIが自分の作品を利用する際にどのような条件を満たすべきか、あるいはどのような対価を支払うべきかを明確に定められるようにするための仕組みである。RSLは「オープンなコンテンツライセンス標準」として設計されており、誰でもその仕様を確認し、利用できることを目指している。

RSLの核心は、ウェブサイトのパブリッシャーが、自分のコンテンツがAIボットによってどのようにスクレイピングされ、利用されるべきかについて具体的な「条件」を提示できる点にある。例えば、特定のAI企業には利用を許可するが、別の企業には許可しない、あるいは一定の料金を支払うことで利用を許可する、といった多様な条件を設定することが可能になるかもしれない。ニュース記事のタイトルにある「AI企業にお金を払わせる新しいシステム」という表現は、まさにこの「対価を求める」側面を指している。

このシステムが普及すれば、AI開発者は、これまでのようになんでも自由にスクレイピングできるわけではなくなる。AIモデルの学習に使うデータを収集する際には、RSLに基づいた各パブリッシャーのライセンス条件を確認し、それに従って利用許諾を得たり、定められた対価を支払ったりする必要が生じるだろう。これは、AI開発におけるデータの倫理的かつ法的な利用を促進するための重要な一歩となる。

RSLの登場と普及の動きは、ウェブコンテンツのエコシステム全体に大きな影響を与える可能性がある。コンテンツパブリッシャーにとっては、自分たちの努力が正当に評価され、AIの発展という新たな領域から収益を得る機会が生まれるかもしれない。また、自社のコンテンツがどのように利用されるかをより詳細に管理できるようになることで、ブランドイメージの保護や特定の情報利用に関する規制もかけやすくなるだろう。

一方、AI開発者にとっては、学習データの収集方法やコスト構造に変化が求められることになる。これまで無料で利用してきたデータに対して、ライセンス費用が発生したり、利用条件が複雑になったりすることで、AIモデルの開発コストが増加する可能性もある。しかし、これは同時に、より品質が高く、倫理的にクリーンなデータを安心して利用できる環境が整うことにもつながる。ライセンスを遵守して取得されたデータであれば、将来的な法的なトラブルのリスクを減らし、安定したAIサービスを提供しやすくなるメリットもある。

RSLの提唱を強力に後押ししているのは、Reddit、Yahoo、Medium、Quora、People Inc.といった、非常に大規模で影響力のあるウェブブランドである。これらの大手企業がRSLへの支持を表明したことは、この新しいライセンス標準が単なるアイデアにとどまらず、実際にウェブ全体のデファクトスタンダード(事実上の標準)となる可能性を大きく高めている。多くのユーザーが利用するこれらのプラットフォームがRSLを採用すれば、AI開発者もそれを無視することはできなくなり、広く浸透していくことが期待される。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このRSLの動きは、将来のキャリアにおいて無視できない重要なトレンドを示唆している。AI技術が社会に深く浸透していく中で、データと情報の「利用のルール」はますます複雑かつ重要になっていく。AIモデルを開発したり、AIを活用したサービスを構築したりする際には、単に技術的な側面だけでなく、データがどこから来て、どのようなライセンスで利用できるのか、著作権や知的財産権の問題はどうなっているのかといった、法務や倫理に関わる知識が不可欠になる。

ウェブスクレイピングを行うシステムを開発する場合でも、その対象となるサイトがRSLのようなライセンスを採用しているかを確認し、適切な方法でデータを取得する知識が求められるだろう。また、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を利用してデータを取得する際も、そのAPIの利用規約やライセンス条項を正確に理解し、遵守する必要がある。

これからのシステムエンジニアには、技術的なスキルだけでなく、ビジネス、法律、倫理といった多角的な視点を持つことが求められる。RSLのような新しい標準の登場は、まさにそのことを私たちに教えてくれている。ウェブエコシステムの進化とAI技術の発展が密接に絡み合う現代において、情報がどのように生成され、共有され、利用されるのか、その背後にあるルールやシステムを理解することは、将来のシステムエンジニアにとって極めて重要な基礎知識となるだろう。

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