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【ITニュース解説】Why WhatsApp Doesn’t Feel Like WhatsApp Anymore

2025年09月08日に「Medium」が公開したITニュース「Why WhatsApp Doesn’t Feel Like WhatsApp Anymore」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

メッセージアプリWhatsAppは、Meta社買収後に機能が増加し続けている。ストーリーやチャンネルなどの新機能は、元々のシンプルな使い心地を損ない、多くのユーザーから「求めていない機能だ」との声が上がっている。アプリは複雑化し、本来の魅力が失われつつある。(119文字)

ITニュース解説

かつてのWhatsAppは、純粋なメッセージングアプリとして世界中のユーザーから絶大な支持を得ていた。その成功の根幹にあったのは、極限まで磨き上げられた「シンプルさ」である。当時の携帯電話における主要なテキストコミュニケーション手段であったSMS(ショートメッセージサービス)の代替として登場し、インターネット回線を通じて無料で、かつ高速にメッセージを送受信できるという明確な価値を提供した。ユーザーインターフェースは直感的で、アプリを開けばすぐに連絡先リストとチャット画面にアクセスでき、メッセージのやり取りという単一の目的に特化していた。さらに、エンドツーエンド暗号化を標準で採用し、送信者と受信者以外は誰もメッセージ内容を閲覧できないという高いプライバシー保護を実現したことも、多くのユーザーから信頼を獲得した大きな要因であった。この「シンプル、高速、安全」という三つの柱が、WhatsAppをコミュニケーションインフラとして不動の地位に押し上げたのである。

しかし、2014年にFacebook(現在のMeta)に買収されて以降、このアプリの哲学は徐々に変化していく。当初は独立性が保たれていたものの、時間とともにMeta社のビジネス戦略が色濃く反映されるようになり、次々と新しい機能が追加され始めた。この変化の象徴的な例が、SnapchatやInstagramの「ストーリー」機能を模倣した「ステータス」機能の導入である。これは24時間で消える写真や動画を共有する機能だが、多くのユーザーはプライベートなメッセージングツールであるWhatsAppに、このようなソーシャルメディア的な要素を求めていなかった。これは、WhatsAppが本来のコアバリューから逸脱し始める転換点であったと言える。その後も、企業や著名人が一方的に情報を発信する「チャンネル」、複数の関連グループを一つにまとめる「コミュニティ」、さらには決済機能やAIを活用したチャットボットなど、多岐にわたる機能が実装されていった。

このような継続的な機能追加は、ソフトウェア開発の世界で「フィーチャー・クリープ」または「機能肥大化」と呼ばれる現象の典型例である。フィーチャー・クリープとは、製品が成熟する過程で、競合への対抗や新たな収益源の確保などを目的に、本来の目的とは直接関係のない機能が無秩序に追加され、結果として製品が複雑で使いにくいものになってしまう状況を指す。WhatsAppの場合、親会社であるMetaの収益化、すなわち「マネタイズ」の必要性が大きな駆動力となっている。無料で提供されているサービスから利益を生み出すため、企業向けのビジネスツールや広告導入の布石となる機能を組み込む必要があった。これは、メッセージング、決済、情報発信、各種サービスなどを一つのアプリで完結させる「スーパーアプリ」化を目指す戦略の一環でもある。しかし、この戦略は、ユーザーがWhatsAppに本来求めていた「純粋なコミュニケーションツール」としての価値を毀損する結果を招いた。

現在のWhatsAppは、かつての軽快さを失い、多くのユーザーにとって複雑で分かりにくいアプリケーションに変貌した。画面には不要なタブや通知が並び、メッセージを送るという基本的な操作を行うまでに、いくつもの無関係な情報を目にしなければならなくなった。アプリは重くなり、シンプルな操作性は失われた。このことは、システム開発に携わる者にとって重要な示唆を与える。それは、ソフトウェアの価値は機能の数によって決まるのではなく、ユーザーが抱える特定の問題をいかに効率的かつ快適に解決できるかによって決まるということである。ユーザーの真のニーズから乖離した機能追加は、たとえ技術的に優れていたとしても、ユーザー体験(UX)を低下させ、製品そのものの価値を損なう危険性をはらんでいる。ビジネス上の要求とユーザー中心の設計思想との間で適切なバランスを取ることは、持続可能なサービスを開発する上で極めて重要な課題である。WhatsAppの変遷は、このバランスが崩れた時、ユーザーが製品に対してどのように感じるようになるかを示す、現実的なケーススタディと言えるだろう。

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