アドレスクラス(アドレスクラス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アドレスクラス(アドレスクラス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アドレスクラス (アドレスクラス)
英語表記
address class (アドレスクラス)
用語解説
アドレスクラスとは、インターネットプロトコルバージョン4(IPv4)のアドレスを、その利用目的や規模に応じて分類するための仕組みの一つである。IPアドレスはネットワーク上でコンピューターなどの機器を一意に識別するための番号であり、通常32ビットの2進数で表現される。この32ビットは、ネットワーク全体を識別する「ネットワーク部」と、そのネットワーク内の特定の機器を識別する「ホスト部」に分けられる。アドレスクラスの役割は、このネットワーク部とホスト部の境界を、IPアドレスの先頭ビットの値に基づいて自動的に決定することにあった。
この分類は、IPアドレスの初期段階で設計されたもので、主にクラスA、クラスB、クラスCの3つの主要なクラスが存在する。これらのクラスは、割り当てられるIPアドレスの範囲、すなわち最初のオクテット(8ビット)の値によって区別される。
まず、クラスAアドレスは、最初のビットが0で始まるIPアドレスの範囲を指す。具体的には、IPアドレスの最初のオクテットが1から126までの範囲にあるものがクラスAに分類される。このクラスでは、最初の8ビットがネットワーク部として固定され、残りの24ビットがホスト部となる。そのため、クラスAは非常に大規模なネットワーク向けに設計されており、ネットワークの数は限られるが、各ネットワークに膨大な数のホスト(約1600万台)を収容できる特徴があった。
次に、クラスBアドレスは、最初の2ビットが10で始まるIPアドレスの範囲を指す。最初のオクテットが128から191までのIPアドレスがこれに該当する。クラスBでは、最初の16ビットがネットワーク部として固定され、残りの16ビットがホスト部となる。このクラスは中規模から大規模なネットワーク向けであり、クラスAよりも多くのネットワークを識別できるが、各ネットワークが収容できるホスト数は約6万5千台と、クラスAよりは少なくなる。
そして、クラスCアドレスは、最初の3ビットが110で始まるIPアドレスの範囲を指す。最初のオクテットが192から223までのIPアドレスがクラスCに分類される。このクラスでは、最初の24ビットがネットワーク部として固定され、残りの8ビットがホスト部となる。そのため、クラスCは小規模なネットワーク向けであり、非常に多くのネットワークを識別できるが、各ネットワークが収容できるホスト数は最大で254台と、最も少ない。
これら主要な3つのクラスの他に、マルチキャスト通信に使われるクラスDや、将来の研究・実験用に予約されているクラスEも存在するが、これらは通常のネットワークアドレスとしては使用されない。クラスDは最初のオクテットが224から239まで、クラスEは240から254までの範囲である。
アドレスクラスの概念は、IPアドレスの割り当てとルーティングを簡素化するために導入された。ルーターはIPアドレスの先頭ビットを見るだけで、それがどのクラスに属し、どこまでがネットワーク部でどこからがホスト部なのかを判断できたため、効率的なルーティングが可能になると考えられた。
しかし、この固定的なネットワーク部とホスト部の区切りは、やがて大きな課題を生じさせることになった。例えば、数十台の機器しか持たない組織がクラスBアドレスを割り当てられた場合、約6万5千ものホストアドレスが未使用のままとなり、IPアドレスの無駄遣いが発生した。逆に、数百台の機器を持つ組織にはクラスCアドレスでは足りず、複数のクラスCアドレスを管理する必要が生じるなど、柔軟性に欠ける点が問題となった。この非効率なIPアドレスの利用は、急速に拡大するインターネットにおいて、IPv4アドレスの枯渇を加速させる一因となった。
このような課題を解決するために、現在では「クラスレスアドレス」という考え方が主流となっている。これは、CIDR(Classless Inter-Domain Routing、サイダー)と呼ばれる技術によって実現されており、アドレスクラスの概念にとらわれず、ネットワーク部とホスト部の境界を任意のビット数で設定できるようにしたものである。CIDRでは、IPアドレスの後にスラッシュ(/)と数字(例: 192.168.1.0/24)を付けることで、ネットワーク部のビット数を明示的に示す。この数字を「プレフィックス長」と呼び、実質的なサブネットマスクの役割を果たす。
アドレスクラスは現在ほとんど使用されていないが、IPアドレスの歴史的背景を理解し、なぜCIDRが開発されたのか、そして現在のネットワーク設計がどのように行われているのかを学ぶ上で、非常に重要な概念であると言える。固定的な区切りから柔軟な区切りへの移行は、インターネットの成長に不可欠な進化であった。