アナログ(アナログ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アナログ(アナログ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アナログ (アナログ)
英語表記
analog (アナログ)
用語解説
アナログとは、情報を連続的に変化する量として表現する方式である。ITの世界では、離散的な数値で情報を表現する「デジタル」と対比される概念として極めて重要である。我々が日常的に体験する音、光、温度、時間といった自然界の現象の多くは、切れ目なく滑らかに変化するアナログ量で構成されている。システムエンジニアリングにおいて、これらの現実世界の情報をコンピュータで扱うためには、アナログとデジタルの両方の特性を正確に理解することが不可欠となる。コンピュータは基本的にデジタル情報を処理する機械であるが、その入出力の多くは現実世界のアナログ情報と接続されているためである。
アナログ信号の最大の特徴は、その「連続性」にある。例えば、アナログ時計の秒針は、カチカチと不連続に動くのではなく、滑らかに文字盤の上を動き続ける。同様に、マイクが拾う音声は、空気の圧力の連続的な変化であり、その波形は途切れることなく時間とともに変化する。これを電圧の変化として記録したものがアナログの音声信号である。この連続性により、アナログは理論上、無限の解像度を持つことができる。つまり、二つの異なる時点の間には、必ずその中間の状態が存在し、情報の密度が非常に高い。しかし、この特性は同時に弱点も内包している。アナログ信号は外部からのノイズ(雑音)の影響を受けやすく、信号にノイズが混入すると、元の情報とノイズを分離することが極めて困難になる。また、記録媒体へのダビングや長距離の伝送を繰り返すと、信号が徐々に劣化していくという性質も持つ。
これに対し、デジタルは情報を「0」と「1」の組み合わせといった、とびとびの値(離散値)に置き換えて表現する。アナログ信号をデジタル化するには、まず一定の時間間隔で信号の値を測定し(サンプリング)、その値をあらかじめ定められた段階的な数値に当てはめる(量子化)。この過程で、元の滑らかなアナログ情報の一部は失われるが、一度数値化されてしまえば、ノイズの影響を格段に受けにくくなる。もしノイズが加わっても、定められた数値の範囲内であれば容易に元の値に復元できるからである。さらに、データの複製を繰り返しても情報が全く劣化せず、コンピュータによる演算や加工、保存、検索が極めて容易になるという大きな利点がある。
システムエンジニアがアナログの知識を必要とする具体的な場面は、コンピュータシステムと現実世界が接するインターフェース部分に集中している。代表的なものがセンサー技術である。温度センサーや圧力センサー、イメージセンサーなどは、現実世界の物理的なアナログ量を、コンピュータが扱える電気信号に変換する装置である。これらのセンサーから出力される信号は、多くの場合アナログの電圧や電流である。このアナログ信号をコンピュータ内部で処理するためには、「A/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter)」と呼ばれる装置を用いてデジタル信号に変換する必要がある。逆に、コンピュータが処理した結果を人間が知覚できる形、例えばスピーカーからの音やディスプレイの映像として出力する際には、「D/Aコンバータ(Digital-to-Analog Converter)」によってデジタル信号を再びアナログ信号に変換する。このA/D変換とD/A変換は、IoTデバイスやマルチメディア処理、制御システムなど、現代のIT技術の根幹を支える重要なプロセスである。
また、無線通信やネットワーク技術においても、アナログの概念は基礎となっている。デジタルデータを電波に乗せて遠くまで運ぶためには、データをアナログの波(搬送波)の振幅や周波数、位相などを変化させる「変調」という技術が用いられる。この変調された信号はアナログであり、受信側でこれを解析して元のデジタルデータを取り出す「復調」が行われる。このように、デジタルの情報を効率的かつ確実に伝送するために、アナログの物理的な性質が巧みに利用されている。
結論として、アナログは情報を連続的な量として捉える方式であり、自然界の現象そのものを表現する根源的な形である。システム開発においては、デジタル技術の利便性が際立つ一方で、現実世界との接点においては必ずアナログの理解が求められる。システムエンジニアは、アナログの特性とデジタルへの変換プロセスを深く理解することで、より信頼性が高く、高精度なシステムの設計・構築が可能になるのである。