異常系テスト(イジョウケイテスト)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

異常系テスト(イジョウケイテスト)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

異常系テスト (イジョウケイテスト)

英語表記

Anomaly Test (アノマリテスト)

用語解説

システム開発において、システムが期待通りに動作するかを確認するテストは非常に重要だ。このテストには、システムが正常に動作する状況を検証する「正常系テスト」と、そうでない状況を検証する「異常系テスト」の二種類がある。異常系テストとは、システムが予期せぬ問題やエラーに直面した際に、どのように振る舞うかを検証し、その堅牢性や回復性を確認する一連のテスト活動を指す。

システムの利用者は常に正しい操作をするとは限らず、また、システムが依存する外部環境も常に安定しているわけではない。例えば、誤ったデータの入力、システムリソースの枯渇、外部サービスとの通信障害、セキュリティ上の脅威など、様々な異常な事態が発生する可能性がある。異常系テストは、これらの想定しうる異常な状況を意図的に作り出し、システムが適切にエラーを検知・処理し、利用者に適切なフィードバックを提供し、システム全体のクラッシュやデータの破損を防ぐことを保証する目的で行われる。これにより、システムの信頼性を高め、ユーザーが安心して利用できる品質を確保することが可能となる。

異常系テストの目的は、システムが異常な状況に直面した際に、適切にエラーを検出し、その影響を最小限に抑え、可能であれば回復し、ユーザーに混乱を与えない適切なメッセージを表示することを確認することにある。具体的には、システムの頑健性、つまり予期せぬ入力や環境変化に対する耐性を評価する。また、システム全体がクラッシュしたり、重要なデータが破損したりするのを防ぐとともに、セキュリティ上の脆弱性、例えば不正な入力によってシステムが攻撃される可能性がないかどうかも確認する。

テストケースの具体例としては多岐にわたる。まず、入力値に関する異常が挙げられる。必須項目が未入力の場合、数値入力欄に文字列を入力した場合、日付入力欄に存在しない日付(例えば2月30日)を入力した場合、最大文字数を超える文字列を入力した場合、定義された範囲外の数値を入力した場合などだ。さらに、悪意のある攻撃を想定し、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングを狙った特殊な文字列が入力された場合のシステムの挙動も確認対象となる。

次に、外部連携に関する異常がある。システムが他のサービスやデータベースと連携している場合、連携先のシステムがダウンしていたり、応答が遅延したり、予期せぬエラーコードを返したりする状況が考えられる。また、ネットワークの切断や通信の不安定さもテストの対象となる。

システムリソースに関する異常も重要だ。データベースの接続が切れた場合、ディスク容量が不足した場合、メモリが不足した場合、CPU使用率が異常に高くなった場合など、システムの実行環境に問題が発生した場合の挙動を検証する。これにより、リソース不足が原因でシステムが停止したり、不正確な情報を提供したりするリスクを低減する。

権限に関する異常では、アクセス権限がないユーザーが特定機能にアクセスしようとした場合や、認証情報が無効な場合に、システムが正しくアクセスを拒否し、セキュリティを維持できるかを確認する。時間の経過に関する異常としては、セッションがタイムアウトした場合や、特定の処理が制限時間を超過した場合の挙動が挙げられる。

その他の予期せぬイベントとして、ファイルアップロード中にファイルが破損した場合や、処理中に予期せぬ停電が発生した場合なども、システムがどのようにデータを保護し、復旧を試みるかを確認する必要がある。

これらのテストを設計する際には、考えられるすべての異常ケースを網羅的に洗い出すことが重要だ。境界値分析や同値分割といったテスト技法も異常系テストに応用できる。例えば、最大文字数の入力フィールドで、最大文字数プラス1の文字列を入力するケースなどがこれに当たる。また、リスクベースアプローチを適用し、発生頻度が高く、システムへの影響度が大きい異常ケースから優先的にテストを実施する。エラーログが適切に出力されているか、システム管理者に通知が行くかといった運用上の側面も確認項目に含めるべきだ。

異常系テストは、単体テスト、結合テスト、システムテストといった各テストフェーズで継続的に実施される。自動テストツールを活用することも有効だが、特に悪意のある入力や複雑な状況再現は手動テストが必要になる場合もある。異常が発生した際にシステムがどのような状態になるべきか、つまり期待値を事前に明確に定義しておくことが不可欠だ。例えば、「適切なエラーメッセージを表示して処理を中断する」「一時的なエラーであればリトライ処理を行う」「重要なデータはロールバックして整合性を保つ」など、具体的な挙動を定めておく。テスト結果は詳細に記録し、不具合の再現性や修正の進捗を管理することが品質向上の鍵となる。

異常系テストを怠ると、予期せぬシステムダウン、データ破損、セキュリティ侵害、そしてユーザーからの信頼失墜といった重大な問題につながる可能性がある。システムの安定性と信頼性を確保し、ユーザーが安心して利用できる高品質なサービスを提供するために、異常系テストは開発プロセスにおいて不可欠な活動なのである。

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