演算装置(エンザンソウチ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
演算装置(エンザンソウチ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
演算装置 (エンザンソウチ)
英語表記
Arithmetic logic unit (アリスメティック ロジック ユニット)
用語解説
演算装置は、コンピュータを構成する五大装置の一つであり、CPU(中央処理装置)の主要な機能ブロックである。その役割は、文字通り「演算」を行うことであり、コンピュータが行うあらゆる計算処理を担う中核部分である。コンピュータの頭脳と称されるCPUの中でも、特に計算実行を専門に担当する部署と位置づけられる。演算装置は、CPUのもう一つの主要機能である制御装置から送られてくる指示に従って、データに対するさまざまな計算を実行する。具体的には、足し算や引き算といった数学的な計算から、二つの条件が同時に満たされているかといった論理的な判断まで、多岐にわたる処理を行う。プログラムが実行される過程では、無数の命令がCPUに送られるが、その多くは何らかの形で演算装置の機能を必要とする。したがって、演算装置の性能は、コンピュータ全体の処理速度に直接的な影響を与える極めて重要な要素である。
演算装置の具体的な実体は、一般にALU(Arithmetic Logic Unit)、日本語では算術論理演算装置と呼ばれる電子回路である。ALUが実行する演算は、主に算術演算、論理演算、そしてシフト演算の三種類に大別される。算術演算は、加算、減算、乗算、除算といった四則演算を指す。コンピュータの内部では、すべてのデータが0と1の組み合わせである二進数で表現されており、ALUはこれらの二進数データに対して演算を行う。中でも加算は最も基本的な演算であり、減算は補数という概念を用いた加算として、乗算や除算は加算や後述するシフト演算の繰り返しとして実現されることが多い。次に論理演算は、与えられた条件が真か偽かを判定する演算であり、AND(論理積)、OR(論理和)、NOT(論理否定)、XOR(排他的論理和)などが含まれる。これらの演算は、特定の条件が満たされた場合にのみ処理を実行するといった、プログラムにおける条件分岐の基礎となる。また、データの中から特定のビット部分だけを取り出したり、書き換えたりするマスク処理など、より低レベルなデータ操作にも不可欠である。シフト演算は、二進数のビット列を、指定したビット数だけ右または左にずらす操作を指す。ビット列を左に1ビットシフトすると元の数値が2倍になり、右に1ビットシフトすると2分の1になるという性質があるため、乗算や除算を非常に高速に実行する手段としても用いられる。
演算装置は単独で機能するのではなく、CPU内部の他の要素と密接に連携して動作する。その最も重要なパートナーがレジスタである。レジスタは、CPUの内部に設けられた、極めて高速にアクセス可能な小容量の記憶領域である。演算装置は、主記憶装置(メモリ)から直接データを読み込んで演算を行うのではなく、一度レジスタに格納されたデータを対象に処理を実行する。演算の対象となるデータや、演算によって得られた結果は、このレジスタに一時的に保持される。代表的なレジスタには、演算結果を一時的に格納するアキュムレータや、様々な目的に利用できる汎用レジスタなどがある。また、フラグレジスタ(またはステータスレジスタ)も演算装置の動作において重要な役割を担う。これは、直前に行った演算の結果がどのような状態であったかを記録するための特殊なレジスタである。例えば、演算結果がゼロになったか(ゼロフラグ)、計算の過程で桁あふれが発生したか(キャリーフラグ)、結果が負の数になったか(サインフラグ)といった情報が、それぞれ1ビットのフラグとして記録される。制御装置は、このフラグレジスタの値を参照することで、演算結果に応じた次の動作、例えば条件分岐命令の実行などを決定する。このように、演算装置は制御装置からの命令を受け、レジスタ上のデータを処理し、その結果をフラグレジスタに反映させるという一連のサイクルを通じて、コンピュータの命令実行を支えている。現代の高性能なプロセッサでは、基本的なALUに加え、より高度で専門的な計算を高速に処理するための専用演算ユニットが複数搭載されることが一般的である。例えば、小数点を含む数値計算を専門に行うFPU(Floating-Point Unit)や、一つの命令で複数のデータを並列に処理することで画像処理や科学技術計算を高速化するSIMD演算ユニットなどがその代表例であり、これらも広義の演算装置に含まれる。