CSMA/CD(シーエスエムエーシーディー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
CSMA/CD(シーエスエムエーシーディー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
搬送波感知多重接続/衝突検出 (はんそうはかんちたじゅうせつどつきしょうとつけんしゅつ)
英語表記
CSMA/CD (シーエスエムエーシーディー)
用語解説
CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)は、イーサネットと呼ばれるネットワーク方式において、複数の機器が一本の共有された通信回線(メディア)を効率的かつ公平に利用するためのアクセス制御方式である。これは、複数の機器が同時にデータを送信しようとした際に発生する通信の「衝突」を回避し、万一発生した場合にはそれを検出し、適切に解決するための仕組みを定めている。この技術がなければ、共有回線を利用するネットワークでは、データが頻繁に衝突してしまい、まともに通信することができなくなるため、初期のイーサネット環境においては非常に重要な役割を担っていた。CSMA/CDの目的は、限られた通信資源を複数の機器で共有し、通信の公平性と効率性を確保することにある。
CSMA/CDは、その名称が示す通り、「キャリアセンス(Carrier Sense)」「多重アクセス(Multiple Access)」「衝突検出(Collision Detection)」という三つの主要な要素から構成される。
まず「キャリアセンス(Carrier Sense)」とは、データを送信したい機器が、実際にデータを送る前に、通信回線が現在他の機器によって使用されていないかを確認する機能である。機器は回線上の電気信号(キャリア)の有無を監視し、信号がなければ回線が空いていると判断する。これにより、すでに誰かが通信している最中に別の機器が送信を開始してしまう「事前衝突」の多くを防ぐことができる。通信を開始する前に、まず回線の状況を「聞く」(Listen Before Talk)という原則に基づいている。もし回線が使用中であると判断された場合、その機器はすぐには送信を開始せず、回線が空くまでランダムな時間待機するか、または回線が空いたことを確認してから送信を試みる。
次に「多重アクセス(Multiple Access)」とは、文字通り複数の機器が同じ共有通信回線に同時にアクセスし、データを送受信できることを意味する。CSMA/CDはこの多重アクセス環境下で、どのようにして通信の秩序を保つかを規定している。複数の機器が互いに協調し、一台の回線を共有するネットワーク、例えば初期のバス型やスター型(ハブを使用)イーサネットにおいて、各機器が平等にアクセスする権利を持つことを保証する。
そして最も特徴的な部分が「衝突検出(Collision Detection)」である。キャリアセンスによって事前衝突の多くは回避できるものの、回線が空いていると判断した直後に複数の機器がほぼ同時に送信を開始してしまうといった状況は避けられない。特に、遠く離れた機器同士が、それぞれの機器が相手の信号を検知するまでのわずかな時間差で同時に送信を開始した場合、衝突が発生する可能性がある。衝突とは、複数のデータ信号が同時に回線上で混ざり合い、いずれのデータも正しく伝わらなくなる状態を指す。CSMA/CDでは、データを送信している機器が、自身の送信と同時に回線上の電気信号レベルを常に監視し続ける。もし、自身の送っている信号とは異なる異常な信号、つまり衝突による混信信号を検出した場合、直ちにその衝突を認識する。
衝突が検出された場合、送信中の機器はすぐにデータの送信を中断する。そして、他の全ての機器にも衝突が発生したことを知らせるために、「ジャム信号」と呼ばれる特定のパターンを持つ信号を短時間だけ回線に送信する。このジャム信号は、ネットワーク全体に衝突の発生を確実に伝達し、他の機器が誤って衝突中のデータを処理しようとするのを防ぐ。ジャム信号を受信した他の機器も、回線上で衝突が発生していることを認識する。
衝突を検出した機器は、ジャム信号の送信後、すぐに再送するのではなく、ランダムな時間だけ待機してから再び送信を試みる。このランダムな待機時間を「バックオフ時間」と呼ぶ。もし衝突した全ての機器が同じ時間だけ待機して同時に再送しようとした場合、再び衝突が発生してしまう可能性が高い。そのため、各機器がそれぞれ異なるランダムな時間待機することで、再度衝突する確率を低減させている。さらに、同じ機器が繰り返し衝突を起こした場合、そのバックオフ時間の最大値を段階的に長くしていく仕組みが導入されている。これを「バイナリエクスポネンシャルバックオフ」と呼び、ネットワーク負荷が高い状況下での安定性確保に貢献する。これにより、ネットワークが混雑して衝突が頻発しても、システム全体が停止することなく、徐々に通信が落ち着くように設計されている。
このように、CSMA/CDは共有媒体型イーサネットにおいて、データの衝突を可能な限り回避し、万一衝突が発生した場合にはそれを迅速に検出して解決することで、通信の公平性と効率性を保つためのアクセス制御メカニズムとして機能してきた。現代のネットワーク環境では、ハブに代わりスイッチングハブが主流となり、各機器が専用の通信経路を持つ全二重通信が一般的になった。全二重通信では、送信と受信が同時に行われるため衝突の概念がなく、CSMA/CDが直接的に使われる機会は大幅に減少している。しかし、共有メディアの基本的な考え方や、衝突解決のためのバックオフアルゴリズム、通信の公平性を確保するためのロジックは、ネットワーク技術の基礎として今もなお重要であり、システムエンジニアを目指す上で理解しておくべき基本的な概念の一つである。