MDA(エムディーエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
MDA(エムディーエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
モデル駆動型アーキテクチャ (モデルドリブンアーキテクチャ)
英語表記
MDA (エムディーエー)
用語解説
MDA(Model Driven Architecture:モデル駆動型アーキテクチャ)は、OMG(Object Management Group)が提唱するソフトウェア開発のアプローチである。この手法の目的は、システムの設計を具体的なプログラミング言語や実行環境といった技術的な詳細から分離し、より抽象的なモデルを中心に据えることで、ソフトウェアのポータビリティ、相互運用性、および再利用性を向上させることにある。開発者は、まずビジネスロジックやシステム要件を記述したプラットフォームに依存しない抽象的なモデルを作成し、そのモデルから特定のプラットフォーム(例えばJava EE、.NET、CORBAなど)向けの具体的な実装モデルやコードを自動生成する。これにより、将来的な技術の変化やプラットフォームの移行に柔軟に対応できるシステムを構築することを目指す。
MDAの核心は、異なる抽象度を持つ複数のモデルを用いて開発を進める点にある。主要なモデルとして、CIM、PIM、PSMの3つが定義されている。
まず、CIM(Computation Independent Model:計算独立モデル)は、ビジネスアナリストやドメインエキスパートが作成する、業務プロセスやビジネスルールといったシステムが解決すべき問題を記述したモデルである。このモデルは、情報技術の具体的な実装方法に一切言及せず、純粋にビジネスの視点から現状とあるべき姿を表現する。例えば、顧客管理システムであれば、顧客の登録、注文処理、在庫管理といった業務フローが記述されるが、それがどのようなデータベースやプログラミング言語で実現されるかは考慮しない。CIMは、ビジネス要求とシステムの間のギャップを埋めるための出発点となる。
次に、PIM(Platform Independent Model:プラットフォーム独立モデル)は、CIMで定義されたビジネス要件を、特定のプログラミング言語やミドルウェア、オペレーティングシステムといったプラットフォームの制約から独立した形で抽象的に設計したモデルである。このモデルは、システムが提供すべき機能やその構造、振る舞いを記述する。UML(Unified Modeling Language)などの標準的なモデリング言語を用いて表現されることが多く、クラス図、シーケンス図、ユースケース図などが用いられる。PIMは、ビジネスロジックを技術的な詳細から切り離して表現するため、一度作成されたPIMは、異なるプラットフォームに対応する複数のシステムで再利用できる可能性を持つ。これはMDAのポータビリティの根幹をなす要素である。
最後に、PSM(Platform Specific Model:プラットフォーム特定モデル)は、PIMで設計されたシステムを、具体的なターゲットプラットフォーム(例:Java EE環境、.NET環境、クラウドサービスなど)の特性に合わせて詳細化したモデルである。PIMからPSMへの変換は、手作業で行うことも可能だが、MDAの理念では自動化されたツールによるモデル変換が推奨される。この変換プロセスでは、PIMの抽象的な要素が、ターゲットプラットフォーム固有のAPI呼び出し、データ型、フレームワークの規約、デプロイメント情報といった具体的な実装の詳細へとマッピングされる。例えば、PIMで定義された永続化の概念が、Java EEであればJPA(Java Persistence API)を用いたエンティティクラスとして、.NETであればEntity Frameworkを用いたクラスとして具体化される。複数のPSMを作成することで、同じPIMから異なるプラットフォーム向けのシステムを生成できるため、システム開発の柔軟性が大幅に向上する。
PSMが完成すると、そこから最終的な実行可能コードが生成される。このコード生成も、MDAツールによって自動化されることが一般的である。ツールはPSMの定義に基づき、対応するプログラミング言語(Java、C#など)のソースコードや、設定ファイルなどを出力する。これにより、手作業によるコーディング量を削減し、生産性の向上とヒューマンエラーの低減が期待できる。
MDAは、これらのモデルと変換プロセスを通じて、いくつかの重要なメリットを提供する。まず、プラットフォームの技術が進化したり、新しいプラットフォームへ移行する必要が生じた場合でも、PIMに変更を加えることなく、新しいPSMを生成することで対応できるため、システムのライフサイクル全体にわたる保守性と柔軟性が高まる。次に、抽象的なモデルでシステムの振る舞いを記述するため、異なるシステム間での相互運用性の基盤となる共通理解を促進する。さらに、モデルの再利用性を高めることで、開発コストの削減と開発期間の短縮にも寄与する。また、モデルベースでの開発は、システムの設計意図を明確にし、開発チーム内での認識齟齬を防ぎ、結果としてソフトウェアの品質向上に繋がる。
MDAを支える主要な技術標準として、UMLの他に、MOF(Meta-Object Facility:メタオブジェクト機能)、XMI(XML Metadata Interchange:XMLメタデータ交換)、QVT(Query/View/Transformation:クエリ/ビュー/変換)などがある。MOFは、UML自体を定義するようなメタモデルを記述するための標準であり、モデルのモデルを表現する。XMIは、UMLモデルやMOFモデルの情報をXML形式で交換するための標準であり、異なるモデリングツール間でのモデルのやり取りを可能にする。QVTは、PIMからPSMへの変換ルールなどを記述するための言語として使われる。これらの標準技術が連携することで、MDAの概念は具体的なツールとプロセスとして機能する。
MDAは、大規模で長期にわたるシステム開発において特にその効果を発揮するとされる。しかし、導入にはモデリングに対する深い理解や、適切なツール選択、初期の学習コストが伴う。また、全てのシステム開発に適用できる万能なアプローチというわけではなく、プロジェクトの特性や規模に応じてその適用範囲を慎重に検討する必要がある。それでも、IT環境の変化が激しい現代において、長期的な視点でのシステム資産の価値を最大化し、ビジネスの変化に柔軟に対応できるソフトウェアを構築するための強力な指針として、MDAは重要な役割を担っている。