エンダッシュ(エンダッシュ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エンダッシュ(エンダッシュ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エンダッシュ (エンダッシュ)

英語表記

endash (エンダッシュ)

用語解説

エンダッシュは、欧文のタイポグラフィで用いられる約物(やくもの)の一種である。横棒で表現され、その長さがハイフン(hyphen)より長く、エムダッシュ(em dash)より短いという特徴を持つ。名前の「en」は、活字の幅を測る単位である「en」(現在のフォントのNの文字幅に相当)に由来し、エムダッシュが「em」(現在のフォントのMの文字幅に相当)幅であることに対し、その半分の幅を持つことを意味する。システムエンジニアを目指す者にとって、このエンダッシュは、単なる見た目の違いだけでなく、情報の正確な伝達やシステムの国際化対応において理解すべき重要な要素となる。

エンダッシュの主な用途は、数値や日付、時間の「範囲」を示す場合や、二つの要素間の「関係性」や「対立」を示す場合である。例えば、「2023–2024年」のように期間を表したり、「10–20ページ」のように範囲を示したり、「東京–大阪線」のように地点間の接続を示したりする際に使用される。これは、単語の連結や改行、複合語の形成に用いられるハイフンとは明確に異なる役割を持つ。ハイフンは主に単語レベルの結合に使用され、エンダッシュはより大きな概念の範囲や関係性を表現するために用いられると理解するとよい。

詳細として、エンダッシュはUnicode文字セットの一部であり、そのコードポイントはU+2013である。これは、ASCII文字セットには含まれていないことを意味する。そのため、古いシステムや国際化対応が不十分な環境では、正しく表示されなかったり、異なる文字として扱われたりする可能性がある。システムエンジニアとしてテキストデータを扱う際には、文字コードの扱いに常に注意を払う必要があることを示す一例と言える。

具体的な利用例として、技術文書やユーザーマニュアルにおいて、対応するソフトウェアのバージョン範囲を示す際に「バージョン1.0–2.0」と記述する、対応するOSのリリース期間を「Windows XP SP1–SP3」と表記する、といった場面でエンダッシュが適切に使われる。このような正確な表記は、ユーザーが情報を誤解なく理解するために極めて重要である。

ハイフンとの違いをさらに掘り下げると、ハイフン(U+002D)は一般的に単語や数字の一部を結合する目的で使われる。例えば、「high-quality」のような複合形容詞や、電話番号の区切り、行末での単語の分割などである。これに対し、エンダッシュは二つの独立した要素間の関係や範囲を示す。例えば、「client-server architecture」はハイフンでつなぐ複合語だが、「input–output operation」のように、二つの対立する概念や独立した概念間の関係を示す場合はエンダッシュが適切となる場合もある。この使い分けは、英語圏のタイポグラフィの慣習に基づいているが、技術文書においては誤解を避ける上で重要である。

エムダッシュ(em dash, U+2014)との比較では、エムダッシュはエンダッシュよりもさらに長く、文章中で区切りや挿入句、一時的な中断、あるいは箇条書きの代わりなどに用いられる。文章のリズムや構造に影響を与える役割が強く、エンダッシュが示す「範囲」や「関係性」とは異なる。システムエンジニアが記述するドキュメントでは、エムダッシュはテキストフローにおける強調や中断に使われることが多いが、エンダッシュのようにデータ的な範囲を示す用途にはあまり使われない。

IT分野においてシステムエンジニアがエンダッシュを理解しておくべき理由はいくつかある。一つは、プログラミング言語における扱いである。多くのプログラミング言語では、エンダッシュは特殊文字として扱われ、変数名や関数名、識別子として使用することはできない。文字列リテラルやコメント内で使用する分には問題ないが、コードの一部として解釈させようとするとコンパイルエラーや実行時エラーの原因となる。

次に、データ表現と文字エンコーディングの側面である。データベースに文字列としてエンダッシュを含むデータを保存する場合、データベースの文字セットや照合順序が適切に設定されていないと、文字化けしたり、正しくソートされなかったりする可能性がある。特に、UTF-8のようなマルチバイト文字をサポートするエンコーディングを使用しない古いシステムや、異なるエンコーディング間の変換を行う際には、エンダッシュのような非ASCII文字が問題を引き起こしやすい。システム開発においては、国際化対応(i18n)を考慮し、Unicodeベースのエンコーディングを標準とすることが一般的だが、既存システムとの連携やレガシーデータを扱う際には注意が必要となる。

さらに、ユーザーインターフェース (UI) の設計においてもエンダッシュの適切な使用は重要である。例えば、検索フォームで日付の範囲を指定する際に「開始日–終了日」と表示したり、価格帯を「¥1,000–¥5,000」と示したりする場合、ハイフンではなくエンダッシュを用いることで、視覚的に「範囲」であることが明確に伝わり、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上に寄与する。これは単なる装飾ではなく、情報の意図を正確に伝えるための配慮である。

エンダッシュの入力方法は、一般的なキーボードには直接的なキーが割り当てられていないことが多い。Windows環境ではAltキーを押しながらテンキーで「0150」と入力する方法(Altコード)があり、macOSではOptionキーとハイフンキーを同時に押すことで入力できる。WebコンテンツにおいてはHTMLエンティティとして–または–を使用し、LaTeXのような組版システムでは--と入力することでエンダッシュが生成される。このように、利用するシステムやツールによって入力方法が異なるため、適切な方法を習得しておくことが望ましい。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、エンダッシュは一見すると小さな記号に過ぎないかもしれない。しかし、その背後には文字コード、国際化、UI/UX、ドキュメンテーションといった幅広い知識が関連している。正確な情報を伝えるためのタイポグラフィの知識は、プロフェッショナルな技術文書を作成する上で不可欠であり、システムの堅牢性やユーザーにとっての使いやすさを確保するためにも、こうした細部に意識を向けることが重要である。

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