HEIC(エイチイーアイシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
HEIC(エイチイーアイシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ハイイーシー (ハイイーシー)
英語表記
HEIC (エイチイーアイシー)
用語解説
HEICとは、High Efficiency Image File Formatの略称であり、主にデジタル画像を保存するために使用されるファイル形式の一つである。この形式は、従来の代表的な画像形式であるJPEGと比較して、より高い圧縮効率を持つことが最大の特徴である。具体的には、同等の画質を維持したまま、ファイルサイズを約半分にまで削減することが可能である。この特性により、スマートフォンのようなストレージ容量が限られたデバイスや、クラウドストレージ上でのデータ保存、ネットワーク経由での画像送受信において大きな利点をもたらす。HEICは、Apple社が2017年にリリースしたiOS 11およびmacOS High Sierra以降のオペレーティングシステムで標準の画像保存形式として採用したことで広く知られるようになった。iPhoneやiPadで撮影された写真は、デフォルトでこのHEIC形式(ファイル拡張子は.heic)で保存される。
HEICの技術的な基盤となっているのは、HEIF(High Efficiency Image Format)という標準規格である。HEIFは、動画圧縮技術として広く利用されているHEVC(High Efficiency Video Coding)、通称H.265の技術を静止画に応用したものである。HEVCは、前世代の動画圧縮規格であるAVC/H.264に比べて約2倍の圧縮性能を誇り、4Kや8Kといった高解像度映像の配信に不可欠な技術となっている。HEIFは、このHEVCの高度な圧縮アルゴリズムを利用して静止画をエンコードすることにより、高い圧縮率と高画質を両立させている。HEICは、HEIF規格に準拠したファイルの具体的な実装の一つであり、コンテナフォーマットとしての役割を担う。コンテナフォーマットとは、画像データだけでなく、音声やテキスト、メタデータといった様々な種類のデータを一つのファイルに格納するための器のような規格である。この多機能性により、HEICは単一の静止画を保存する以上の能力を持つ。例えば、一枚のHEICファイル内に、複数の画像(バーストモードで撮影した連写写真など)、深度情報(ポートレートモードで背景をぼかすために使用)、サムネイル画像、編集情報、さらには短いアニメーション(Live Photosなど)をまとめて格納することができる。
JPEG形式と比較した場合、HEICの優位性は圧縮率だけではない。画質の面でも利点がある。JPEGが通常8ビットの色深度、つまり約1677万色しか表現できないのに対し、HEICは10ビット以上の色深度に対応している。これにより10億色以上の豊かな色彩表現が可能となり、特に空のグラデーションのような滑らかな色の変化を、色の境界線が縞模様に見える「カラーバンディング」を発生させることなく、より自然に再現できる。また、HEICは画像の透過情報(アルファチャンネル)をサポートしており、PNG形式のように背景を透明にした画像を保存することも可能である。さらに、回転やトリミングといった編集操作を、元の画像データを破壊することなく、編集情報として別途保存する非破壊編集にも対応している。これにより、いつでも編集前のオリジナル状態に戻すことができる。
しかし、HEICには普及における課題も存在する。最大の課題は互換性の問題である。Apple製品では標準でサポートされている一方で、Windowsの古いバージョンや一部のAndroid端末、多くのウェブブラウザやアプリケーションではネイティブに対応していない場合がある。そのため、HEIC形式の画像を他の環境で閲覧・編集しようとすると、ファイルが開けないという問題に直面することがある。この問題に対処するため、OSに専用のコーデックや拡張機能をインストールしたり、HEICをJPEGに変換するソフトウェアやオンラインサービスを利用したりする必要が生じる。システム開発の観点からは、ユーザーがHEIC形式の画像をアップロードする可能性を考慮し、サーバーサイドでHEICを処理できるライブラリを導入したり、クライアントサイドで表示前にJPEGに変換したりするなどの対応が求められることがある。このように、HEICは優れた技術的特性を持つ次世代の画像フォーマットであるが、その普及はエコシステム全体の対応状況に依存するという側面も持ち合わせている。