圧縮(アッシュク)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

圧縮(アッシュク)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

圧縮 (アッシュク)

英語表記

compression (コンプレッション)

用語解説

「圧縮」とは、コンピューター上で扱うデータが占める記憶領域の容量を減らす処理のことである。これは、ファイルを保存するためのハードディスクやSSDなどのストレージスペースを節約したり、ネットワークを通じてデータを転送する際の時間を短縮したりすることを主な目的としている。例えば、容量の大きい画像ファイルや動画ファイルを友人や同僚に送る際、そのままでは時間がかかりすぎる場合や、メールの添付ファイル容量制限に引っかかる場合がある。このような状況で圧縮を行うことで、データをより小さくし、スムーズなやり取りを可能にする。また、ソフトウェアのインストールファイルやオペレーティングシステムのアップデートファイルなども、通常は圧縮された状態で配布されており、ダウンロード時間の短縮と配布コストの削減に貢献している。

圧縮の概念は、データを効率的に扱う上で非常に重要であり、現代のデジタル社会において欠かせない技術の一つとなっている。データ圧縮によって、私たちは限られたリソースの中でより多くの情報を扱い、迅速に共有できるようになっている。

圧縮技術は大きく分けて、「可逆圧縮」と「非可逆圧縮」の二種類がある。可逆圧縮は、圧縮されたデータを完全に元の状態に復元できる方式であり、非可逆圧縮は、圧縮によって一部の情報が失われるものの、人間がその変化をほとんど認識できないように最適化された方式である。どちらの方式を選択するかは、データの種類や目的によって異なる。

詳細に説明すると、まず可逆圧縮(Lossless Compression)は、元のデータと全く同じデータを復元できる点が最大の特徴である。そのため、プログラムファイル、テキストドキュメント、データベースファイル、CSVファイルなど、一文字でも間違えると意味が変わったり機能しなくなったりするような、正確性が求められるデータの圧縮に適している。可逆圧縮は、データの中に含まれる冗長性、つまり無駄な繰り返しや予測可能なパターンに着目してデータ量を削減する。

具体的な可逆圧縮のアルゴリズムとしては、ランレングス符号化(RLE)、ハフマン符号化、LZ77/LZ78(Lempel-Ziv)などがある。ランレングス符号化は、データ内で連続して出現する同じ値を、「その値」と「出現回数」という短い形式に置き換える方法である。例えば、「AAAAABBBCC」という文字列は「A5B3C2」のように表現できる。これにより、データ量が大幅に削減される場合がある。ハフマン符号化は、データ内の文字や記号の出現頻度に基づいて、頻繁に出現するデータには短いビット列を、あまり出現しないデータには長いビット列を割り当てることで、全体のデータ量を減らす。これは、モールス信号が頻繁に使う文字に短い符号を割り当てるのと似た考え方である。

LZ77/LZ78といったLempel-Ziv系のアルゴリズムは、データの中から繰り返し現れる文字列パターンを見つけ出し、そのパターンをすでにデータ内で出現した場所からの「距離」と「長さ」で置き換えることで圧縮を行う。この方法は、特に長いテキストやプログラムコードなど、繰り返しパターンが多いデータに対して高い圧縮率を発揮する。ZIP形式などで広く利用されているDEFLATEアルゴリズムは、ハフマン符号化とLZ77の原理を組み合わせたもので、非常に効率的な可逆圧縮を実現している。

次に、非可逆圧縮(Lossy Compression)は、圧縮時に一部の情報を意図的に破棄することで、可逆圧縮よりもはるかに高い圧縮率を達成できる方式である。しかし、破棄された情報は復元できないため、完全に元のデータに戻すことは不可能である。この方式は、主に画像(JPEG)、音声(MP3)、動画(MPEG)といったマルチメディアデータに用いられる。これらのデータは、人間が知覚できる情報の範囲が限られているという特性を利用する。例えば、人間の目には色や明るさの微妙な変化は判別しにくい部分があったり、耳には聞き取れない高周波や低周波の音があったりする。非可逆圧縮は、このような人間の感覚にとって重要度の低い情報を削除することで、品質の劣化を最小限に抑えつつ大幅なデータ削減を行う。

非可逆圧縮の技術としては、離散コサイン変換(DCT)や量子化、知覚モデルなどが挙げられる。離散コサイン変換は、画像を周波数成分に分解し、人間が感知しにくい高周波成分を圧縮しやすい形に変換する。その後、量子化というプロセスで、重要度の低い周波数成分の情報を大胆に丸めたり削除したりする。知覚モデルは、人間の聴覚や視覚の特性を数学的にモデル化し、どの情報が捨てられても知覚的な品質の劣化が少ないかを判断するために使われる。例えば、音量の大きい音の隣にある小さな音は聞こえにくい、といった心理音響モデルが利用される。

データ圧縮のプロセスは、一般的に専用のソフトウェアやハードウェアによって行われる。圧縮を行うソフトウェアは「圧縮ツール」や「アーカイバ」と呼ばれ、WindowsのZIP機能や7-Zip、WinRARなどがこれにあたる。これらのツールは、選択された圧縮アルゴリズムに従ってデータを分析し、冗長な部分を特定してデータ量を削減する。そして、圧縮されたデータを利用する際には、「展開」または「解凍」と呼ばれる逆の処理が必要となる。展開処理では、圧縮されたデータに適用されたアルゴリズムの逆操作を行い、元のデータ形式に戻す。

圧縮技術は、ただデータ量を減らすだけでなく、その後のデータの取り扱いにも影響を与える。例えば、データを圧縮すると、ストレージに保存する際には場所を節約できるが、利用する際には展開する必要があるため、CPUなどの処理能力を消費する。また、圧縮率と圧縮・展開にかかる処理速度の間にはトレードオフの関係がある。より高い圧縮率を目指せば、それだけ複雑なアルゴリズムが必要となり、処理に時間がかかる傾向にある。

圧縮は多岐にわたる場面で活用されている。ウェブサイトのコンテンツは、ユーザーへの高速な配信のためにHTTP圧縮が適用されることが多く、テキストデータやHTML、CSSファイルなどが圧縮されて転送される。オペレーティングシステムの中には、ファイルシステムレベルで透過的な圧縮をサポートするものもある。例えば、WindowsのNTFSファイルシステムは、特定のファイルを自動的に圧縮して保存する機能を持っている。データベースシステムにおいても、テーブルやインデックスのデータを圧縮することで、I/O性能の向上やストレージコストの削減を図ることが可能である。

しかし、圧縮には注意点も存在する。特に、可逆圧縮されたファイルでも、圧縮プロセス中にエラーが発生したり、圧縮されたデータが破損したりすると、展開できなくなり、元のデータが失われる可能性がある。また、非可逆圧縮では、圧縮の度合いを高めるほど品質の劣化が顕著になるため、目的に応じた適切な圧縮率を選択する必要がある。さらに、暗号化されたデータは、ランダムなバイト列に見えるため、一般的に圧縮効率が非常に低い。そのため、通常はデータを圧縮してから暗号化を行う。

システムエンジニアを目指す上では、データの特性や目的に応じて最適な圧縮技術を選択し、そのメリットとデメリットを理解しておくことが重要である。ファイル形式やプロトコルがどのように圧縮を利用しているか、それぞれのアルゴリズムがどのような原理で動作するのかを把握することで、システム設計やパフォーマンスチューニングにおいて適切な判断を下すことができるようになる。

関連コンテンツ

関連ITニュース

関連プログラミング言語