IMSI(アイエムエスアイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IMSI(アイエムエスアイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

国際移動加入者識別番号 (コクサイイドウカニュウシャシキシキバンゴウ)

英語表記

IMSI (アイエムエスアイ)

用語解説

IMSIは、International Mobile Subscriber Identityの略称であり、日本語では「国際移動体加入者識別番号」と訳される。これは、携帯電話ネットワークにおいて、個々の契約者(Subscriber)を世界的に一意に識別するために用いられる、最大15桁の数字から構成される識別番号である。この番号は、利用者が契約した際に通信事業者から提供されるSIMカード(Subscriber Identity Module)や、スマートフォン本体に組み込まれたeSIM(embedded SIM)の内部に記録されている。IMSIの最も重要な役割は、携帯電話端末がネットワークに接続しようとする際に、その端末を使用しているのが正当な契約者であるかを認証し、どの契約者に対して課金や各種サービスを提供すべきかを特定することにある。IMSIは、普段私たちが通話やデータ通信で利用する「電話番号」とは異なり、ネットワーク内部で契約者を管理するための技術的な識別子であり、利用者が直接この番号を意識する機会はほとんどない。

IMSIの構造は、国際的な標準規格によって厳密に定められており、大きく三つの部分から成り立っている。最初の3桁はMCC(Mobile Country Code)と呼ばれ、契約者がどの国の通信事業者に属しているかを示す国識別コードである。例えば、日本に割り当てられているMCCは440と441である。続く2桁または3桁はMNC(Mobile Network Code)と呼ばれ、国内のどの通信事業者(キャリア)であるかを示す事業者識別コードである。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった各事業者には、それぞれ固有のMNCが割り当てられている。最後の残りの桁はMSIN(Mobile Subscriber Identification Number)と呼ばれ、各通信事業者が自社の契約者を一意に識別するために割り当てる加入者識別番号である。このMCC、MNC、MSINの組み合わせによって、世界中に存在する膨大な数の携帯電話契約者の中から、特定のただ一人を重複なく識別することが可能となっている。

携帯電話の電源が投入されたり、圏外から圏内に入ったりすると、端末はまず最寄りの基地局と通信を開始し、ネットワークへの接続許可を求める。このプロセスを「アタッチ」と呼ぶ。この際、端末はSIMカードに記録されたIMSIをネットワーク側に送信する。ネットワーク側では、HLR(Home Location Register)や、その後継システムであるHSS(Home Subscriber Server)と呼ばれる契約者情報を管理するデータベースにアクセスし、送信されてきたIMSIと登録情報を照合する。この照合によって、契約が有効であるか、料金の未払いがないかなどを確認し、問題がなければ認証を完了させ、ネットワークへの接続を許可する。この一連の認証プロセスがあることで、正規の契約者のみがサービスを利用でき、不正なアクセスを防ぐことができる。

しかし、IMSIは契約者に紐付いた固定の番号であるため、もしこの番号が通信のたびに無線区間で送受信されると、第三者によって傍受される危険性がある。傍受したIMSIを追跡することで、特定の個人の位置情報を特定したり、行動を監視したりすることが可能となり、プライバシー上の深刻な問題を引き起こしかねない。このリスクを軽減するために、実際の通信ではTMSI(Temporary Mobile Subscriber Identity)という一時的な識別子が利用される。ネットワークは、端末が最初に接続する際などにIMSIを使って認証を行った後、その端末に対して一時的な識別子であるTMSIを割り当てる。以降の通信では、IMSIの代わりにこのTMSIが使用される。TMSIは一定の時間が経過したり、端末が異なるエリアに移動したりすると新しいものに更新されるため、万が一傍受されてもIMSIのように継続的な追跡が困難となり、利用者のプライバシーが保護される。

最後に、IMSIと混同されやすい他の識別子との違いを明確にしておくことが重要である。IMEI(International Mobile Equipment Identity)は、携帯電話の端末自体を識別するための番号であり、「どの端末か」を特定する。SIMカードを差し替えても端末が変わらなければIMEIは同じままである。一方、IMSIは「どの契約者か」を特定する番号であり、SIMカードに紐付いている。また、MSISDN(Mobile Subscriber Integrated Services Digital Network Number)は、一般的に「電話番号」として知られている番号であり、人間が連絡を取り合うために使用する。IMSIがネットワーク内部の管理用IDであるのに対し、MSISDNはユーザー向けのインターフェースとしての役割を担っている。これらIMSI、IMEI、MSISDNといった識別子がそれぞれの役割を果たし、連携することで、安全で安定したモバイル通信システムが成り立っているのである。

関連コンテンツ