JBOD(ジェイボッド)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

JBOD(ジェイボッド)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ジェイボッド (ジェイボッド)

英語表記

JBOD (ジェイボッド)

用語解説

JBODは「Just a Bunch Of Disks」の略称であり、日本語では「ただのディスクの束」と直訳される。その名の通り、複数の物理的なハードディスクやSSDを、冗長化や性能向上のための特別な制御を加えずに、単純に束ねて利用するための技術や、そのように構成されたストレージエンクロージャ(ディスクを格納する筐体)自体を指す言葉である。サーバーやコンピュータのストレージ容量を拡張する際に用いられる基本的な手法の一つであり、特にRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)と比較されることが多い。RAIDがデータの保護や読み書き速度の向上を目的として複数のディスクを協調動作させる複雑な仕組みであるのに対し、JBODは極めてシンプルな構成を特徴とする。

JBODの構成では、複数のディスクが専用のケースに搭載され、一本のケーブル(SAS: Serial Attached SCSIなど)を介してサーバーに接続される。サーバーのOSからこれらのディスクがどのように見えるかは、主に二つの方式に分けられる。一つは、搭載されている個々の物理ディスクが、それぞれ独立したドライブとしてOSに認識される方式である。例えば、1TBのディスクを4台搭載したJBODを接続した場合、OSからは4つの1TBドライブとして認識され、個別にフォーマットして使用することができる。これは最も純粋なJBODの形態であり、パススルーモードとも呼ばれる。もう一つは、複数のディスクを連結して、OSからは一つの巨大な記憶領域(論理ボリューム)として認識させる方式である。この方式はスパニングや連結とも呼ばれる。同じく1TBのディスク4台をスパニングで構成すると、OSからは合計容量である4TBのドライブが一つだけあるように見える。データは最初のディスクから順に書き込まれ、そのディスクがいっぱいになると自動的に次のディスクへと書き込みが続けられる。この方式は、複数の小容量ディスクをまとめて大容量の単一ボリュームとして扱いたい場合に便利である。

JBODを理解する上で、RAIDとの違いを明確にすることが重要である。最も大きな違いは、冗長性とパフォーマンスにある。RAIDには、RAID 1(ミラーリング)やRAID 5、RAID 6(パリティ付きストライピング)といった、一部のディスクが故障してもデータを失わないための冗長化機能が備わっている。しかし、JBODにはそのような機能は一切ない。そのため、JBOD構成のディスクが一つでも物理的に故障した場合、そのディスクに保存されていたデータは完全に失われる。特にスパニング構成の場合は、一つのディスクが故障しただけでボリューム全体がアクセス不能になる危険性があり、データ保護の観点では脆弱である。また、パフォーマンスに関しても、RAID 0(ストライピング)のように複数のディスクにデータを分散して同時に読み書きすることで高速化を図る仕組みはJBODにはない。JBODの読み書き速度は、基本的に個々のディスクの性能に依存する。一方で、JBODは容量効率の面でRAIDより優れている。RAIDでは冗長性を確保するために、ミラーリング用のコピーデータやパリティデータなどを保存する必要があり、その分だけ実際に利用できる容量が物理ディスクの合計容量よりも少なくなる。JBODはそうしたオーバーヘッドが一切ないため、物理ディスクの容量を100%データ保存に利用できる。さらに、RAIDは原則として同じ容量・性能のディスクで構成する必要があるが、JBODは異なる容量のディスクを混在させやすいという柔軟性も持つ。

冗長性がないという欠点があるにもかかわらず、JBODが広く利用されるのには明確な理由がある。最大のメリットは、そのシンプルさと低コスト性である。RAID機能を実現するための高価な専用コントローラーが不要、あるいは非常に安価なもので済むため、大容量のストレージを安価に拡張したい場合に最適な選択肢となる。具体的な用途としては、まずバックアップやアーカイブデータの保存先が挙げられる。これらのデータはアクセス頻度が低く、万一の場合には他の原本から復元できる可能性が高いため、冗長性よりもコストと容量が優先されることが多い。また、JBODはソフトウェアRAIDの物理基盤として非常に重要な役割を担う。近年では、Windowsの記憶域スペースやLinuxのmdadm、ZFSファイルシステムなど、OSやソフトウェアのレベルで高度なストレージ管理機能を提供する技術が普及している。これらのソフトウェアRAIDは、OS側でディスクを束ねて冗長性を持たせたり、パフォーマンスを向上させたりすることができる。このような構成を組む場合、ハードウェア側は余計な制御をせず、ディスクをありのままOSに見せるシンプルなJBODが最も適している。ハードウェアRAIDコントローラーが介在すると、かえってソフトウェア側での細かなディスク制御の妨げになることがあるため、あえてJBODが選ばれるのである。

総括すると、JBODは複数のディスクを冗長性や性能向上の仕組みなしに束ねるシンプルなストレージ構成技術である。ディスク故障に対する耐性がないという明確なデメリットを持つため、重要なデータを単体で保存するには適していない。しかし、その低コスト性、高い容量効率、構成の単純さから、バックアップ用途や、ソフトウェアRAIDと組み合わせることで柔軟かつ安価な大容量ストレージシステムを構築するための基盤として、現代のITインフラにおいて不可欠な存在となっている。システムエンジニアは、RAIDとの特性の違いを正しく理解し、目的や要件に応じてJBODを適切に選択・活用することが求められる。

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