LTSB(エルティーエスビー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LTSB(エルティーエスビー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

長期サポート版 (チョウキサポートバン)

英語表記

LTSB (エルティーエスビー)

用語解説

LTSBはLong-Term Servicing Branchの略称であり、Microsoftが提供するオペレーティングシステム、Windows 10の特定のリリースモデルを指す。その最も重要な特徴は、長期間にわたる安定したサポートを提供し、新機能を追加する大規模な「機能更新プログラム」が原則として提供されない点にある。この特性により、システムの安定性やアプリケーションの互換性が最優先される特定の業務環境、例えば工場の生産ライン制御、医療機器、金融機関のATM、POSレジといった、一度導入したら長期間同じ状態で稼働させ続けることが求められるシステムで採用される。なお、現在では後継の概念であるLTSC(Long-Term Servicing Channel)という名称が主に使用されているが、LTSBはこのLTSCの前身にあたるモデルとして理解されており、その基本的な思想は共通している。システムエンジニアは、顧客の要件に応じて適切なWindowsのサービスモデルを選定する必要があり、LTSBはその選択肢を理解する上で重要な概念となる。

LTSBがなぜ必要とされたのかを理解するためには、Windows 10の基本的なサービスモデルである「Windows as a Service(WaaS)」を知る必要がある。WaaSは、OSを製品として一度購入すれば終わりではなく、継続的にサービスとして機能強化や更新を提供していくという考え方である。このモデルに基づき、通常のWindows 10では年に1回から2回、新機能の追加やユーザーインターフェースの変更を含む大規模な機能更新プログラムが配信される。これにより、ユーザーは常に最新の機能とセキュリティを享受できるというメリットがある。しかし、この頻繁な更新は、すべての環境にとって有益とは限らない。前述のような特定用途の専用端末では、予期せぬOSの仕様変更が業務の停止に直結する重大なリスクをはらむ。既存の専用アプリケーションとの互換性が失われたり、操作方法の変更によってオペレーターが混乱したりすることを絶対に避けなければならない。このような、機能の追加よりも長期的な安定稼働が求められるミッションクリティカルな環境のために、特別なサービスモデルとしてLTSBが設計された。

LTSBの具体的な特徴は主に三つ挙げられる。第一に、機能更新プログラムが適用されない点である。LTSBとしてリリースされたバージョンは、そのサポート期間が終了するまで、OSの核となる機能セットが変更されることはない。これにより、システム管理者は、OSのアップデートが原因で既存のアプリケーションやデバイスドライバが動作しなくなるというリスクを大幅に低減できる。システムの動作が予測可能となり、長期にわたる安定運用が実現する。第二に、セキュリティは常に最新の状態に保たれる点である。機能更新は行われないが、セキュリティ上の脆弱性を修正したり、不具合を解消したりするための「品質更新プログラム」は、通常のWindows 10と同様に毎月提供される。これにより、外部からの脅威に対してシステムを保護しつつ、OSの機能的な一貫性を維持するという、安定性と安全性の両立が可能となる。第三に、非常に長いサポート期間が設定されている点である。LTSBは、リリースから10年間のサポートが提供されるのが基本である。これはメインストリームサポート5年と延長サポート5年で構成される。通常のWindows 10の各バージョンのサポート期間が18ヶ月から30ヶ月程度であることと比較すると、その長さは際立っている。この長期サポートにより、特定用途の専用端末などを一度導入すれば、頻繁なOSのアップグレードやそれに伴う検証作業を行うことなく、長期間にわたって安心して利用し続けることができる。

さらに、LTSBはシステムをよりシンプルで安定したものにするため、一般向けのWindows 10にプリインストールされている一部のアプリケーションが含まれていない。例えば、Microsoft Store、Cortana、Microsoft Edgeといった、頻繁に更新されるユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリケーションの多くが初期状態では搭載されていない。これにより、システムのフットプリント、つまり使用するディスク容量やメモリが小さくなり、攻撃対象となりうる領域(アタックサーフェス)も減少するため、セキュリティとパフォーマンスの向上に寄与する。ただし、LTSBはWindows 10 Enterpriseというエディションでのみ提供される特別なライセンス形態であり、ボリュームライセンス契約を結んでいる法人が主な対象となるため、一般の個人ユーザーが購入したり、市販のPCにプリインストールされたりすることはない。Microsoft自身も、LTSB/LTSCを一般的なオフィス業務用のPCで使用することは推奨していない。なぜなら、これらのPCでは、最新の生産性向上ツールやセキュリティ技術の恩恵を受けることが、業務効率の観点から有益であると考えられるためである。総括すると、LTSBは、機能の固定化と長期サポートを特徴とする、ミッションクリティカルなシステム向けのWindows 10サービスモデルである。