MTTF(エムティーティーエフ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

MTTF(エムティーティーエフ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

平均故障間隔 (ヘイキンコショウカンカク)

英語表記

Mean Time To Failure (ミーンタイムトゥフェイリャ)

用語解説

MTTFとは、"Mean Time To Failure" の略で、システムの信頼性を示す指標の一つである。日本語では「平均故障寿命」あるいは「平均故障時間」と訳されることが多い。これは、修理不能なシステムや部品が故障するまでの平均稼働時間を統計的に算出したものであり、特に一度故障したら修理せずに交換または廃棄されるような製品の信頼性を評価する際に用いられる。システムエンジニアを目指す者にとって、ITシステムを構成する様々なハードウェアや部品の信頼性を理解し、適切な選定や設計を行う上で、このMTTFの概念は非常に重要となる。

MTTFは、特定の製品群において、新品の状態から初めて故障するまでの平均的な時間を意味する。例えば、あるメーカーが製造した100個の同一の部品を同時に稼働させ、それぞれの部品が故障するまでの時間を記録したとする。これらの故障時間全てを合計し、部品の総数で割ることでMTTFが算出される。具体的には、「総稼働時間 ÷ 故障数」というシンプルな計算式で表現できる。この指標は、製品の設計品質や製造プロセスがどの程度の信頼性を持っているかを示す強力な手がかりとなり、製品寿命の予測や、長期的な運用における保守計画の策定に役立てられる。

MTTFが特に適用されるのは、使い捨てに近い特性を持つ部品やシステムである。例えば、コンピュータのCPU、メモリチップ、バッテリー、LED電球、あるいは特定のセンサーや宇宙探査機の部品などがこれに該当する。これらの部品は、一度故障すると修理が困難であるか、修理にかかるコストが新品に交換するコストを上回るため、一般的に交換される。そのため、これらの部品の信頼性を評価する際には、故障するまでの平均的な時間が直接的な寿命の指標となるMTTFが用いられる。

信頼性工学における重要な指標としてMTBF(Mean Time Between Failures:平均故障間隔)も存在するが、MTTFとMTBFは混同されやすい。両者は「平均稼働時間」を示す点で共通しているが、その適用対象に決定的な違いがある。MTBFは修理が可能なシステムに対して適用され、一度故障しても修理を行うことで再稼働し、その後再び故障するまでの平均稼働時間を示す。つまり、MTBFは「故障 → 修理 → 稼働 → 故障」というサイクルを前提としている。対してMTTFは、前述の通り修理を前提とせず、最初の故障でその製品の寿命が尽きるとみなす場合に用いられる。したがって、MTTFは新品から最初の故障までの期間を表し、MTBFは修理後の再稼働から次の故障までの期間、あるいはシステムの稼働時間全体を平均した故障間隔を示すと言える。この違いを理解することは、適切な信頼性指標を選択し、システム全体の信頼性を正しく評価するために不可欠である。例えば、サーバー本体は多くの場合修理が可能であるためMTBFで評価されるが、サーバー内部の特定のLSIチップやメモリモジュール単体はMTTFで評価されることが多い。

MTTFは、製品の信頼性保証期間の設定や、顧客に対する品質情報提供においても重要な役割を果たす。例えば、製品保証期間がMTTFよりも大幅に短い場合、それはメーカーが製品の信頼性に自信を持っていることの裏付けとなる。また、データセンターのストレージとして広く用いられるSSD(Solid State Drive)などでは、製品選定の重要な要素の一つとしてMTTF値が公表されており、この値が高いほど、より長期間安定して稼働することが期待される。

ただし、MTTFにはいくつかの留意点がある。第一に、MTTFは統計的な平均値であり、個々の製品の実際の寿命を保証するものではない。例えばMTTFが10万時間の製品があったとしても、それは必ずしも全ての製品が10万時間稼働することを意味せず、統計的にその平均が10万時間である、ということを示しているに過ぎない。中にはそれよりも早く故障するものもあれば、はるかに長く稼働するものもある。第二に、MTTFの測定には非常に長い時間とコストがかかる場合が多い。特に、信頼性の高い製品では、実際の故障データを得るまでに膨大な試験時間が必要となるため、加速寿命試験などの手法が用いられることもあるが、これは実際の運用環境と異なる条件での試験であるため、結果の解釈には注意が必要である。第三に、MTTFは通常、安定した運用期間における故障率を前提としている。製品の初期不良期間や、設計寿命を超えた摩耗故障期間など、故障率が変動する期間を考慮に入れる際には、別の統計モデルや追加の分析が必要となる。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、MTTFの理解は、単に用語を知るだけでなく、ITシステムの堅牢性や可用性を高めるための具体的な設計判断に直結する。例えば、部品選定の際にはMTTF値の高いものを選ぶことで、システム全体の安定稼働に寄与できる。また、システム障害の発生確率を見積もる際や、予防保守計画を立てる際にも、個々のコンポーネントのMTTFが間接的に影響を与えることを認識しておく必要がある。最終的に、ユーザーに提供するサービスのSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)を策定する際にも、基盤となるハードウェアの信頼性指標を総合的に考慮することが求められる。MTTFは、ITシステムの信頼性を深く理解し、より高品質なサービスを提供するための基礎知識として、今後ますますその重要性を増していくだろう。