MTBF(エムティービーエフ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

MTBF(エムティービーエフ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

平均故障間隔 (ヘイキンコショウカンカク)

英語表記

MTBF (エムティービーエフ)

用語解説

MTBF(Mean Time Between Failures)は、日本語では「平均故障間隔」と訳され、システムや機器が故障してから次に故障するまでの平均稼働時間を示す信頼性指標である。これは、あるシステムがどれくらいの期間、安定して稼働し続けることができるかを示す数値であり、システムエンジニアを目指す者にとって、システムの選定、設計、運用、保守計画を立てる上で非常に重要な概念となる。この指標を理解することは、将来、信頼性の高いシステムを構築し、安定稼働を維持するための基礎知識となるだろう。

MTBFの数値が高いほど、そのシステムや機器は故障しにくく、信頼性が高いと判断できる。逆にMTBFが低い場合は、比較的頻繁に故障が発生する可能性があり、運用上の手間やコストが増大するリスクがある。したがって、新しいシステムを導入する際や、既存システムの信頼性を評価する際には、このMTBFという指標が重要な判断材料の一つとなる。

MTBFは以下の計算式で求められる。

MTBF = (総稼働時間) / (故障回数)

具体例を挙げてみよう。あるデータセンターに設置された5台のサーバーが、それぞれ1000時間連続して稼働したと仮定する。この5台のサーバーが合計で5回の故障を起こした場合、総稼働時間は5台 × 1000時間 = 5000時間となる。この時のMTBFは、5000時間 / 5回 = 1000時間となる。つまり、このサーバー群は平均して1000時間ごとに1回の故障が発生する可能性がある、という解釈ができる。ここで言う「故障」の定義は非常に重要で、単なる機能停止だけでなく、性能低下や特定のサービスが利用不能になる状態なども含まれる場合があるため、事前にその定義を明確にしておく必要がある。

MTBFが高いシステムは、運用担当者にとって保守作業の頻度が少なくなり、運用コストの削減に繋がる。また、エンドユーザーにとってはサービスが中断される時間が少なくなり、ビジネスの継続性や顧客満足度の向上に直結する。特に、24時間365日稼働が求められるミッションクリティカルなシステムにおいては、MTBFの高さはシステムの生命線とも言える。

一方、MTBFが低いシステムは、頻繁な故障対応が必要となり、運用担当者の負担が増加する。部品交換やシステム復旧のためのダウンタイムが増え、その間はビジネス活動が停滞してしまうため、機会損失が発生する可能性が高まる。

MTBFと関連する信頼性指標もいくつか存在する。MTTR(Mean Time To Repair:平均修復時間)は、システムが故障してから修理が完了し、再び正常に稼働し始めるまでの平均時間を示す。MTBFが故障間の間隔を示すのに対し、MTTRは故障発生後の対応速度を示す指標であり、両者はシステムの可用性(稼働し続けられる能力)を評価する上でセットで考慮されることが多い。MTTRが短いほど、システムが停止している時間が短縮され、サービスの復旧が早まる。また、MTRR(Mean Time To Recovery:平均復旧時間)は、故障発生からシステムが完全に正常な状態に戻るまでの平均時間で、MTTRとほぼ同様の意味で用いられることもある。MTTF(Mean Time To Failure:平均故障寿命)という指標もあるが、これは修理不可能な部品やシステムが、使い始めてから故障するまでの平均時間を示すもので、MTBFが修理可能なシステムに適用されるのに対し、MTTFは使い捨ての部品などに用いられることが多い点で異なる。これらの指標を総合的に考慮することで、システムの真の信頼性や可用性を評価することが可能となる。

システムの稼働率(Availability)は、「MTBF / (MTBF + MTTR)」という式で表される。この式からもわかるように、高い稼働率を達成するためには、MTBFを高くして故障の発生頻度を減らすことと、MTTRを短くして故障からの復旧時間を短縮することの両方が重要となる。

システムエンジニアがMTBFを利用するシーンは多岐にわたる。まず、新しいシステムや機器を選定する際、複数の候補製品のMTBFを比較し、より信頼性の高い製品を選ぶ判断材料とする。次に、システムの保守計画を策定する際に、MTBFの数値を参考に予防保守のスケジュールを立てたり、故障が発生した場合に備えてスペア部品の在庫を適切に管理したりする。また、顧客との間で取り交わされるSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証契約)において、システムの稼働率を保証する際の根拠としてMTBFやMTTRが用いられることもある。さらに、システムの設計段階で、信頼性要件を満たすための目標値としてMTBFを設定し、それを達成するための設計を行う場合もある。

ただし、MTBFを扱う上での注意点もいくつか存在する。MTBFはあくまで「平均」値であり、特定のシステムや部品がその期間だけ故障しないことを保証するものではない。統計的な傾向を示すものであり、個々のシステムの挙動は異なる場合がある。また、MTBFの値は、メーカーが特定の条件下で測定したデータや、過去の実績データに基づいて算出されることが多いため、実際の運用環境や利用状況によっては、表示されているMTBFと異なる結果となる可能性がある。特に、システムの初期段階で発生しやすい初期故障(バスタブ曲線でいう初期故障期間)や、長期間使用したことによる摩耗故障の影響は、平均値だけでは捉えきれない場合がある。さらに、何をもって「故障」と定義するかによってMTBFの数値は大きく変動するため、異なるシステム間で比較する際には、その定義が統一されているかを確認する必要がある。温度、湿度、振動、電力供給の安定性といった運用環境も、実際のMTBFに大きな影響を与える要因となるため、メーカー公称値はあくまで参考値として捉えるべきである。個々の部品のMTBFが分かっても、それらを組み合わせた複雑なシステム全体のMTBFを正確に算出することは、現実的には非常に難しい場合が多い。これらの限界を理解した上で、MTBFを適切に活用することが、信頼性の高いシステムを運用する上で不可欠となる。

以上のように、MTBFはシステムや機器の信頼性を測る上で欠かせない指標であり、その意味、計算方法、関連指標、そして利用上の注意点を深く理解することは、システムエンジニアとして成功するために非常に役立つ。システム全体の健全性を総合的に判断するための重要な一歩となるだろう。

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